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循環式浴槽とレジオネラ肺炎—エアロゾル感染のメカニズム

看護師国家試験 第112回 午後 第3問 / 必修問題 / 健康の定義と影響要因

国試問題にチャレンジ

112回 午後 第3問

循環式浴槽の水質汚染で発症するのはどれか。

  1. 1.コレラ(cholera)
  2. 2.A型肝炎(hepatitis A)
  3. 3.レジオネラ肺炎(legionella pneumonia)
  4. 4.後天性免疫不全症候群<AIDS>(acquired immunodeficiency syndrome)

対話形式の解説

博士 博士

今日は循環式浴槽と感染症の関係を学ぶぞ。温泉好き必見のテーマじゃ。

サクラ サクラ

お風呂で肺炎になることがあるんですか?

博士 博士

うむ、レジオネラ肺炎じゃ。循環式浴槽や温泉、加湿器、冷却塔などで増殖した菌を、エアロゾル(微細な水滴)として吸い込んで感染する。

サクラ サクラ

エアロゾルって、シャワーの湯気みたいなものですか?

博士 博士

まさにそれじゃ。ジャグジーやシャワーで生じる細かい霧状の水滴にレジオネラ属菌が混じっていると、吸い込んで肺に到達してしまうのじゃ。

サクラ サクラ

なぜお風呂で菌が増えるんですか?

博士 博士

レジオネラは土壌や淡水に広く存在し、20〜50℃特に36℃前後で増殖しやすい。お風呂の循環水はまさに最適温度で、配管内のバイオフィルムに菌が定着して増えていく。

サクラ サクラ

だから循環式は要注意なんですね。

博士 博士

そうじゃ。2002年には宮崎県の温泉施設で大規模集団感染が起き、7名が亡くなっておる。それ以後、水質管理が法的にも厳格化された。

サクラ サクラ

症状はどんな感じですか?

博士 博士

2〜10日の潜伏期を経て高熱、咳、呼吸困難に進む。通常の肺炎と違い、下痢や意識障害、比較的徐脈を伴うことがあるのが特徴じゃ。高齢者や免疫不全者で重症化しやすい。

サクラ サクラ

診断はどうするんですか?

博士 博士

尿中抗原検査が迅速で有用じゃ。血清型1型に限定されるが、外来でも検査可能。喀痰培養や遺伝子検査も併用する。

サクラ サクラ

治療はどうなりますか?

博士 博士

マクロライド系やニューキノロン系の抗菌薬を用いる。レジオネラは細胞内寄生菌でβラクタム系(ペニシリンなど)は効かないので、通常の市中肺炎治療では治らないのがポイントじゃ。

サクラ サクラ

他の選択肢のコレラやA型肝炎はなぜ違うんですか?

博士 博士

両方とも経口感染症じゃ。コレラ菌やA型肝炎ウイルスに汚染された水や食物を食べて感染する。風呂水を飲むことは通常ないからな。AIDSは性行為・血液・母子感染で、日常生活の入浴では感染しない。

サクラ サクラ

感染経路を整理すると違いがよく分かりますね。

博士 博士

その通り。感染症の問題は『病原体+感染経路+感染源』をセットで覚えるのが鉄則じゃ。看護師は家庭や施設での加湿器・浴槽管理指導でも役立つ知識じゃぞ。

POINT

循環式浴槽の水質汚染で発症する代表的な感染症はレジオネラ肺炎です。レジオネラ属菌は20〜50℃の淡水環境で増殖しやすく、循環式浴槽・温泉・加湿器・冷却塔などで生じたエアロゾルを吸入することで経気道感染します。高熱・咳・呼吸困難に加え消化器症状や意識障害を伴うことがあり、高齢者や免疫不全者で重症化しやすい4類感染症です。診断には尿中抗原検査が有用で、治療はマクロライド系やニューキノロン系抗菌薬、βラクタム系は無効です。予防は水温管理と塩素消毒、配管内バイオフィルム除去が柱で、看護師は在宅加湿器や介護施設浴槽の衛生管理指導でも重要な役割を担います。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:循環式浴槽の水質汚染で発症するのはどれか。

解説:正解は 3 のレジオネラ肺炎です。レジオネラ属菌(Legionella pneumophila)は土壌や淡水に広く分布するグラム陰性桿菌で、20〜50℃の水温、特に36℃前後で増殖が活発になります。循環式浴槽、温泉、加湿器、冷却塔、シャワーなどで発生したエアロゾル(微細な水滴)を吸入することで経気道感染し、肺炎を引き起こします。人から人への感染はしません。1996年の過去の厚生省通知や温泉法改正などを経て、循環水の塩素管理と定期的な配管洗浄が義務付けられています。

選択肢考察

  1. × 1.  コレラ(cholera)

    コレラはコレラ菌(Vibrio cholerae)による経口感染症で、汚染された飲食物から感染して激しい水様下痢を起こす。感染症法5類感染症。循環式浴槽とは関連しない。

  2. × 2.  A型肝炎(hepatitis A)

    A型肝炎ウイルスは糞口感染で伝播し、汚染された水や生カキなどから感染する。循環式浴槽が主な感染源となることはない。

  3. 3.  レジオネラ肺炎(legionella pneumonia)

    循環式浴槽や温泉、加湿器、噴水などで増殖したレジオネラ属菌がエアロゾルとして吸入され肺炎を発症する。高齢者や免疫不全者で重症化しやすく、感染症法4類感染症として全数届出対象である。

  4. × 4.  後天性免疫不全症候群<AIDS>(acquired immunodeficiency syndrome)

    HIV感染により免疫不全に至る疾患。感染経路は性行為、血液、母子感染であり、入浴や飲食では感染しない。

レジオネラ肺炎は高熱・咳・呼吸困難に加え、消化器症状や意識障害、比較的徐脈を伴うことがある点が特徴。潜伏期は2〜10日。診断には尿中抗原検査が簡便かつ迅速で、ポンティアック熱と呼ばれる軽症型も存在する。治療はニューキノロン系やマクロライド系抗菌薬を用い、βラクタム系は無効(細胞内寄生菌のため)。予防の基本は水温管理(50℃以上もしくは20℃以下)と塩素消毒、バイオフィルム除去である。国試では感染経路と感染源(エアロゾル、循環式浴槽)の組み合わせが鉄板で問われる。

循環式浴槽という感染源から、エアロゾル感染で肺炎を起こすレジオネラ症を選ばせる典型問題。感染経路(経口/血液/接触/飛沫/空気)の整理が鍵。