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孤独を打ち明けた統合失調症のAさん 看護師が真っ先につなぐべき相手は誰か

看護師国家試験 第115午後69

国試問題にチャレンジ

115午後69

Aさん(40歳、男性)は数年前に統合失調症と診断された。最近、仕事を辞めて、訪問看護を利用しながら1人で暮らしている。訪問看護師に「病気になってから孤独だ。これからどのように生きていけば良いか、同じような体験をしている人と話してみたい」と打ち明けた。 Aさんの支援を行う上で連携する者として優先度が高いのはどれか。

  1. 1.公認心理師
  2. 2.成年後見人
  3. 3.ピアサポーター
  4. 4.就労継続支援事業所の管理者

対話形式の解説

博士博士
今日は115回午後69問、統合失調症のAさんの支援に連携する者を選ぶ問題じゃ。状況設定をしっかり押さえてほしいぞ。
サクラサクラ
40歳の男性で、数年前に統合失調症と診断され、最近仕事を辞めて、訪問看護を利用しながら一人暮らし。「孤独だ」「これからどう生きていけばいいか、同じような体験の人と話したい」と語ったんですよね。
博士博士
そう。ここで大事なのは、本人が何を求めているかを言葉どおりに受け止めることじゃ。看護の世界では本人の「ストレングス」と「希望」に着目するアプローチが重視されておる。
サクラサクラ
ストレングスモデルですね。弱みや問題ではなく、本人の強み・能力・関心・希望に焦点を当てる考え方。
博士博士
その通り。そのうえで選択肢を見てみよう。1番は公認心理師、2番は成年後見人、3番はピアサポーター、4番は就労継続支援事業所の管理者じゃ。
サクラサクラ
Aさんは「同じような体験をしている人と話してみたい」と言っているので…ピアサポーターでしょうか?
博士博士
正解!ピアサポーターは自身も精神疾患などの当事者経験を持ち、回復の体験を語りながら対等な関係で支える人じゃ。専門職と患者という縦の関係ではなく、横の関係性で支えるのが特徴じゃよ。
サクラサクラ
同じ病気を経験した人だからこそ「自分だけじゃないんだ」と感じられたり、回復した姿がそのまま希望になったりするんですね。
博士博士
うむ。これは精神保健領域で広がっている「リカバリーモデル」の中核じゃ。症状をゼロにすることではなく、本人が自分らしく生きるプロセスを支えるという考え方じゃな。
サクラサクラ
ほかの選択肢はなぜ優先度が低いんですか?公認心理師さんも支援してくれそうですが。
博士博士
公認心理師は心理アセスメントや心理療法を担う国家資格の専門職で、もちろん有用じゃ。じゃが本人が求めているのは「同じ体験を持つ人との対話」で、専門職との面接ではないんじゃ。
サクラサクラ
成年後見人は…判断能力が落ちて財産管理が難しい人のための制度ですよね。Aさんは1人暮らしを続けられていて、そうした困りごとは書かれていません。
博士博士
その通り。成年後見人は権利擁護のための制度で、今回のAさんの孤独感への対応にはならんのう。就労継続支援事業所はどうじゃ?
サクラサクラ
A型は雇用契約あり、B型は雇用契約なしで働く場を提供する障害福祉サービスでしたよね。Aさんは仕事を辞めたばかりで、今は「働きたい」ではなく「同じ体験の人と話したい」段階だから優先度は低いと。
博士博士
その読み取り、見事じゃ。状況設定問題では「本人の今の言葉」を取りこぼさないことが何より大切なんじゃよ。
サクラサクラ
ピアサポート活動って、実際にはどんな場で行われているんですか?
博士博士
当事者会、家族会、セルフヘルプグループといった自助グループのほか、地域活動支援センターや精神科デイケア、訪問支援の現場などじゃ。2021年度には障害福祉サービスに「ピアサポート体制加算」が新設され、制度的にも後押しが進んでおる。
サクラサクラ
看護師としても、自分が抱え込むのではなく、こうした地域資源につなぐ視点が大切なんですね。
博士博士
まさにそれが地域包括ケアシステムの考え方じゃ。本人の希望を中心に、訪問看護師・精神科医・ピアサポーター・相談支援専門員などが多職種で支えるんじゃよ。

POINT

統合失調症の当事者が訴える「同じ体験をした人と話したい」というニーズに対し、本人の言葉と希望を起点に最適な連携先を選ぶ問題。リカバリー志向とピアサポートの理解が鍵となる。

解答・解説

正解は3です

問題文:Aさん(40歳、男性)は数年前に統合失調症と診断された。最近、仕事を辞めて、訪問看護を利用しながら1人で暮らしている。訪問看護師に「病気になってから孤独だ。これからどのように生きていけば良いか、同じような体験をしている人と話してみたい」と打ち明けた。 Aさんの支援を行う上で連携する者として優先度が高いのはどれか。

解説:正解は 3 のピアサポーターです。Aさんは「同じような体験をしている人と話してみたい」と明確に語っており、本人の言葉そのものが支援者選定の最大の手がかりになります。ピアサポーター(peer supporter)とは、精神疾患や障害などの当事者経験を持ち、自らの回復過程を活かして同じ立場の人を支援する人のことです。専門職とは異なる「対等な関係性(horizontal relationship)」のもとで関わることが特徴で、当事者にしか語れない実感を通して「自分だけではない」という普遍性、孤独感の軽減、そして将来の自分の姿を重ねられるロールモデルとしての希望をもたらします。これはリカバリーモデルにおいて極めて重要な要素であり、近年は障害者総合支援法に基づくピアサポート活動の制度化も進んでいます。Aさんのように退職後に孤立感を抱える統合失調症の当事者にとって、ピアサポーターとの出会いは「これからの生き方」を模索する大きな手がかりとなり、本人のニーズに最も合致する連携先といえます。

選択肢考察

  1. ×1.  公認心理師

    公認心理師は2017年に施行された公認心理師法に基づく心理職の国家資格で、心理アセスメントや心理的支援を担う専門職である。心理的な不調や心理療法のニーズがあれば連携対象になり得るが、Aさんが求めているのは「同じ体験をした人との対話」であり、専門職と患者という関係性ではない。本人の希望に直接応える支援者として優先度は高くない。

  2. ×2.  成年後見人

    成年後見人は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分となった人の財産管理や身上監護を担う制度である。Aさんは1人暮らしを継続できており、判断能力の低下や権利侵害をうかがわせる情報は示されていない。現時点で成年後見制度の利用を検討する必然性はなく、本人の訴える孤独感への対応にもならない。

  3. 3.  ピアサポーター

    ピアサポーターは、自身も精神疾患などの経験を持つ当事者として、回復の体験を分かち合いながら対等な立場で支える存在である。「同じような体験をしている人と話してみたい」というAさんの言葉に最も直接的に応えられ、孤独感の軽減、希望の回復、ロールモデルの提示といったリカバリー志向の支援が期待できる。本人の語りを起点に連携先を選ぶという観点から、優先度が最も高い。

  4. ×4.  就労継続支援事業所の管理者

    就労継続支援事業所は、一般企業での就労が困難な障害のある人に働く場を提供する障害福祉サービスで、雇用契約を結ぶA型と結ばないB型がある。Aさんは仕事を辞めた段階で、現在の主訴は孤独感と生き方の模索であり、まず「働く」ことを目指している段階ではない。将来的に必要となる可能性はあるが、現時点での優先度は高くない。

精神保健領域では近年、医療モデルから「リカバリーモデル」への転換が進んでおり、症状の消失ではなく本人が自分らしい生活と希望を取り戻すプロセスが重視されている。その中核を担うのがピアサポート活動で、当事者会・家族会・自助グループ(セルフヘルプグループ)といった場や、地域活動支援センター、精神科デイケアなどでも幅広く展開されている。2021年度の障害福祉サービス報酬改定では「ピアサポート体制加算」が新設され、ピアサポーターの雇用と養成研修の修了を要件として評価される仕組みも整った。看護師は本人のストレングス(強み)と希望に焦点を当て、地域包括ケアシステムの枠組みの中で多職種・多機関と連携していく姿勢が求められる。

統合失調症の当事者が訴える「同じ体験をした人と話したい」というニーズに対し、本人の言葉と希望を起点に最適な連携先を選ぶ問題。リカバリー志向とピアサポートの理解が鍵となる。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。