放射線療法の有害事象と看護
成人看護学 / がん・緩和・終末期
解説
今回は放射線療法の有害事象と看護について解説します。
放射線療法とは
放射線療法とは、高エネルギーの放射線をがん細胞に照射し、細胞のDNAを損傷させて増殖を抑える治療法です。手術・化学療法と並ぶがん治療の三本柱の一つであり、根治を目指す場合と症状緩和を目的とする場合があります。放射線はがん細胞だけでなく正常細胞にも作用するため、さまざまな有害事象(副作用)が生じます。看護では、有害事象の出現時期と部位を理解し、予防・早期発見・対応を行うことが重要です。
放射線の単位
放射線に関する単位は国試で頻出です。**Bq(ベクレル)**は放射性物質そのものが放射線を出す能力(放射能の量)を表す単位です。Gy(グレイ)は物質が吸収した放射線エネルギーの量、すなわち吸収線量を表し、1Gyは物質1kgあたり1Jのエネルギー吸収を意味します。**Sv(シーベルト)**は人体への生物学的影響を表す単位で、吸収線量Gyに放射線の種類による生物学的重み付け係数を掛けて算出されます。たとえばα線はβ線・γ線に比べて約20倍の生物学的影響を持つとされます。このほか、粒子1個のエネルギーを表す単位としてeV(電子ボルト)があります。Bqは出す側、Gyは吸収する側、Svは人体への影響と整理して覚えます。
有害事象の分類
放射線療法の有害事象は出現する時期によって分類されます。照射開始から治療終了後3か月以内に出現するものを急性反応、3か月以降に出現するものを晩期反応といいます。急性反応には放射線宿酔・皮膚炎・粘膜炎・骨髄抑制などがあり、晩期反応には線維化・二次がん・臓器機能低下などがあります。急性反応は可逆的なものが多いのに対し、晩期反応は不可逆的で治療が困難なものが多い点が特徴です。
放射線宿酔
放射線宿酔とは、照射開始後数時間から数日以内に出現する全身反応であり、悪心・嘔吐・食欲不振・全身倦怠感・頭痛などを呈します。二日酔いに似た症状であることからこの名がつきました。照射範囲が広いほど出現しやすく、上腹部照射・全脳照射・全身照射で頻度が高くなります。看護では、制吐薬の予防的投与、少量頻回の食事提供、十分な休息と水分摂取の確保、不安の軽減が重要です。
皮膚炎・粘膜炎・骨髄抑制
放射線皮膚炎は照射部位の発赤・乾燥・落屑などを生じ、進行すると湿性落屑となります。粘膜炎は口腔・咽頭・食道・直腸など照射範囲の粘膜に発赤・びらん・潰瘍を生じ、強い疼痛を伴います。骨髄抑制は造血機能の低下により白血球減少・貧血・血小板減少をきたし、感染や出血のリスクが高まります。
部位別の有害事象
頭頸部への照射
頭頸部領域の放射線治療では、急性期に口腔粘膜炎・口腔乾燥・味覚障害・嚥下痛・皮膚炎が出現します。晩期反応では放射線性う蝕(多発性う蝕)・顎骨壊死・開口障害・甲状腺機能低下・嚥下障害・誤嚥・皮膚線維化・二次がんなどが問題となります。 放射線性う蝕の機序は、耳下腺・顎下腺・舌下腺などの唾液腺が照射されることで唾液分泌が低下し、口腔内の自浄作用と緩衝能が失われることにあります。唾液には抗菌作用や歯の再石灰化を促す作用があるため、唾液分泌の低下は急速かつ広範なう蝕を引き起こします。予防として、治療開始前の歯科的評価、フッ化物塗布、唾液分泌促進薬の投与、含嗽の励行、低糖食、口腔保湿剤の使用が行われます。
全身放射線照射(TBI)
全身放射線照射(TBI)とは、同種造血幹細胞移植の前処置として行われる治療です。目的は二つあり、一つは患者の骨髄機能と免疫機能をリセットして移植細胞の生着を促す拒絶反応の防止、もう一つは残存する腫瘍細胞の根絶です。通常は大量化学療法と併用して行われます。注意点として、GVHD(移植片対宿主病)は移植後にドナー由来のリンパ球が患者組織を攻撃する合併症であり、前処置で予防するものではありません。TBIは全身照射のため放射線宿酔が高頻度に出現し、骨髄抑制も必発します。
看護のポイント
放射線療法を受ける患者への看護では、まず治療の目的・スケジュール・予測される有害事象について十分に説明し、不安を軽減します。皮膚ケアでは照射部位を清潔に保ち、摩擦・温熱・直射日光を避け、刺激の少ない弱酸性石鹸を用います。マーキングは消さないよう指導します。口腔ケアでは含嗽を頻回に行い、口腔保湿剤を使用し、歯科との連携を図ります。栄養支援では悪心や粘膜炎で摂取量が低下しやすいため、少量頻回・軟らかい食事・十分な水分を心がけます。骨髄抑制期には感染予防として手洗い・含嗽・面会制限・易出血予防を徹底します。患者が治療を完遂できるよう、症状緩和と心理的支援を継続的に行うことが看護の要となります。
まとめ
放射線療法の単位はBq・Gy・Svに整理し、Gyは吸収線量、Svは人体への影響と区別します。有害事象は出現時期で急性反応と晩期反応に分類され、放射線宿酔は照射開始直後に出現する全身反応で、上腹部・全脳・全身照射で頻度が高くなります。頭頸部照射では急性期の口腔粘膜炎と晩期の放射線性う蝕が重要で、唾液腺障害による唾液分泌低下が機序です。全身放射線照射は造血幹細胞移植の前処置として拒絶防止と腫瘍細胞根絶を目的に行われ、GVHD予防が目的ではない点に注意します。看護では皮膚ケア・口腔ケア・栄養支援・感染予防・心理的支援を組み合わせて治療完遂を支えます。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
物質が吸収した放射線エネルギーの量、すなわち吸収線量を表す単位はである。
- 2.
放射線の人体に対する生物学的影響を表す単位はである。
- 3.
放射性物質が放射線を出す能力(放射能の量)を表す単位はである。
- 4.
放射線療法の有害事象のうち、照射開始から治療終了後3か月以内に出現するものをという。
- 5.
照射開始後数時間から数日以内に出現し、悪心・嘔吐・全身倦怠感などを呈する全身反応をという。
- 6.
頭頸部放射線治療の晩期反応として、唾液腺障害による唾液分泌低下を背景に多発する歯のう蝕をという。
- 7.
同種造血幹細胞移植の前処置として行われ、拒絶反応の防止と残存腫瘍細胞の根絶を目的とする全身への放射線照射をという。
- 8.
頭頸部照射で唾液分泌が低下する原因は、耳下腺・顎下腺・舌下腺などのが照射範囲に含まれるためである。
