がん患者の就労・社会支援
成人看護学 / がん・緩和・終末期
解説
今回はがん患者の就労・社会支援について解説します。
がん患者を取り巻く社会的課題
がんは長期にわたる治療を必要とする疾患であり、患者は身体的苦痛だけでなく、治療と仕事の両立、医療費による経済的負担、不安や抑うつなどの心理的問題を同時に抱えます。近年は外来化学療法や分子標的薬の発達により、働きながら治療を継続する患者が増えています。一方で、診断を契機に離職してしまう患者も多く、治療を続けるための社会的支援が看護の重要なテーマとなっています。今回は、その中心となるがん相談支援センターと、治療と仕事の両立支援の仕組みを学びます。
がん相談支援センター
設置の根拠と場所
がん相談支援センターとは、がん対策基本法および「がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針」に基づいて設置される、がんに関する公的な相談窓口です。設置場所は全国のがん診療連携拠点病院、小児がん拠点病院、地域がん診療病院であり、2023年時点で全国に450以上の施設があります。
業務内容
がん相談支援センターでは、がんに関する一般的な情報提供、地域の医療機関の情報、セカンドオピニオンを受けられる医師の紹介、療養上の相談、就労に関する相談、社会的・経済的・心理的支援など、幅広い相談に対応します。相談員は専門研修を受けた看護師や**医療ソーシャルワーカー(MSW)**が中心で、電話・対面・メールで相談を受け付けます。
三原則
がん相談支援センターには三つの大きな特徴があります。第一に無料で利用できること、第二に匿名でも相談できること、第三にその病院に通院していない患者や家族、一般市民も利用できることです。看護師は治療導入時に、必ずセンターの存在を患者へ紹介する役割を担います。
治療と仕事の両立支援
厚生労働省ガイドライン
働きながら治療を続けるための国の方針として、厚生労働省は「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を示しています。両立支援は労働者本人の申出を起点とし、主治医が治療内容や就業上の留意点に関する意見書を作成し、企業がそれをもとに就業上の措置を検討するという流れで進みます。
連携先と支援制度
医療側が連携する相手は、企業内の健康管理を担う産業医、産業保健師、衛生管理者などです。企業内では時短勤務、時差出勤、在宅勤務、休職・復職制度、有給休暇の柔軟運用といった制度が活用されます。さらに、医療機関・企業・支援機関には、患者と職場の間を調整する両立支援コーディネーターが配置されており、企業向けには治療と仕事の両立支援助成金もあります。
外来化学療法と勤務調整
大腸癌のFOLFOXやFOLFIRIなどの外来化学療法では、投与後数日に末梢神経障害、下痢、倦怠感などの副作用が時期を追って出現します。副作用の出方をあらかじめ予測し、症状の強い時期に在宅勤務や時短勤務を組み合わせる勤務調整を行うことで、治療継続と就労の両立が可能となります。
看護師の役割
看護師は、治療開始時にがん相談支援センターを紹介し、主治医・産業医・企業との橋渡しを行います。また、化学療法の副作用出現時期を踏まえた具体的な勤務調整の助言や、不安に対する心理的支援を通じて、患者が自分らしく働き続けられるよう支えます。
まとめ
がん患者の社会支援の柱は、がん対策基本法に基づき拠点病院に設置されるがん相談支援センターと、厚生労働省ガイドラインに基づく治療と仕事の両立支援です。センターは無料・匿名・他院患者可の三原則のもと、就労相談やセカンドオピニオン紹介を行います。両立支援では主治医と企業の産業医が連携し、時短勤務や在宅勤務などの就業上の措置を講じます。看護師は情報提供・橋渡し・副作用に応じた勤務調整の助言という役割を担うことを押さえておきましょう。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
全国のがん診療連携拠点病院などに設置され、がんに関する相談を受け付ける公的な窓口をという。
- 2.
がん相談支援センター設置の根拠となっている法律はである。
- 3.
がん相談支援センターは、無料・匿名で利用でき、さらにも利用することができる。
- 4.
がん相談支援センターでは、患者の希望に応じて他施設の医師によるを受けられる医療機関の紹介も行う。
- 5.
がん相談支援センターで相談員を担うのは、専門研修を受けた看護師やなどである。
- 6.
働きながらがん治療を継続するための国の指針として、厚生労働省は「事業場におけるのためのガイドライン」を示している。
- 7.
治療と仕事の両立支援において、企業側で労働者の健康管理を担い、主治医と連携して就業上の措置を検討する医師をという。
- 8.
医療機関・企業・支援機関に配置され、治療と仕事の両立に向けて患者と職場の調整を行う専門職をという。
- 9.
外来化学療法を受けるがん患者に対して看護師が行う就労支援として、副作用の出現時期を予測したの助言が重要である。
