緩和ケア移行期の調整
成人看護学 / がん・緩和・終末期
解説
緩和ケアとは、生命を脅かす疾患に伴う問題に直面する患者と家族のQOLを改善するアプローチであり、WHOが定義しています。今回は緩和ケアへ移行する時期に必要となる調整について解説します。
緩和ケアの基本理念
緩和ケアは終末期に限定されるものではなく、がんと診断された早期から治療と並行して導入することが推奨されています。これをEarly Palliative Careといい、2010年のTemelらの研究以降、生命予後やQOLの改善に寄与することが示されています。
苦痛の捉え方として重要なのが、シシリー・ソンダースが提唱した**トータルペイン(全人的苦痛)**の概念です。これは身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルな苦痛の4側面を包括的にとらえる考え方で、緩和ケアの基盤となります。
移行期の意思決定支援と多職種連携
移行期には患者・家族の意向を確認するアドバンス・ケア・プランニング(ACP)が重要です。療養場所の選択、延命処置の希望などを繰り返し話し合います。
在宅移行に際しては退院支援カンファレンスを開催し、多職種で情報を共有します。参加する主な職種は、主治医・訪問診療医、病棟看護師・訪問看護師、医療用麻薬や高カロリー輸液を管理する薬剤師、社会資源の調整窓口となる医療ソーシャルワーカー(MSW)、介護保険サービスを調整するケアマネジャー、理学療法士、栄養士などです。
介護保険制度の活用
介護保険の第1号被保険者は65歳以上、第2号被保険者は40〜64歳で特定疾病に該当する者です。末期がんは特定疾病に含まれるため、40〜64歳でも介護保険サービスが利用できます。40歳未満は介護保険の対象外となるため、障害福祉サービスなどの活用を検討します。
在宅移行に必要な体制
在宅療養を支える柱は、訪問看護、訪問診療、薬局の在宅対応です。急変に備えた24時間連絡体制を整え、家族の介護負担を軽減するためのレスパイト入院も準備します。
緩和ケア病棟転棟時の情報収集
緩和ケア病棟へ転棟する際に最も優先される情報は、癌性疼痛の管理状況です。使用中の鎮痛薬の種類・用量・投与経路、レスキュー薬の使用頻度、NRSやFace Scaleによる疼痛評価、効果と副作用を把握します。特に骨転移痛は体動時痛と安静時痛が強く、オピオイドに加え、NSAIDsやステロイド、ビスホスホネート、デノスマブなどの鎮痛補助薬、放射線治療の継続が必要となります。
がん疼痛管理の原則はWHO三段階除痛ラダーで、定期投与によるベース薬と突出痛に対するレスキュー薬を組み合わせます。投与経路の確保が困難な場合は持続皮下注射やPCAポンプも活用されます。
まとめ
緩和ケア移行期の調整では、トータルペインの視点で患者と家族を支え、多職種連携と社会資源の活用により療養生活の継続を図ります。疼痛管理を中心とした症状緩和の情報を確実に引き継ぐことが、シームレスなケアの実現につながります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
緩和ケアの定義はWHOによるもので、生命を脅かす疾患に伴う問題に直面する患者と家族のを改善するアプローチである。
- 2.
シシリー・ソンダースが提唱した、身体的・精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛を包括的にとらえる概念を(全人的苦痛)という。
- 3.
介護保険の第2号被保険者は〜64歳で特定疾病に該当する者であり、もその対象に含まれる。
- 4.
在宅移行を検討する際、社会資源の活用や各機関との調整窓口を担う職種は(MSW)である。
- 5.
がん疼痛管理の基本指針として、定期投与のベース薬とレスキュー薬を組み合わせるWHOのが用いられる。
- 6.
緩和ケア病棟へ転棟する際に最も優先して情報収集すべき内容はの管理状況であり、鎮痛薬の種類・用量・投与経路や薬の使用頻度などを確認する。
- 7.
骨転移痛に対しては、オピオイドに加え、NSAIDsやステロイド、ビスホスホネート、などの鎮痛補助薬や放射線治療が用いられる。
- 8.
がんと診断された早期から治療と並行して緩和ケアを導入する考え方をという。
