経産婦の分娩と産褥乳房ケア
母性看護学 / 分娩期・分娩経過
解説
今回は経産婦の分娩経過と産褥期の乳房ケアについて解説します。経産婦とは1回以上の分娩を経験した女性のことを指し、初産婦と比べて分娩所要時間が短く、産褥期の子宮復古も比較的進行しやすい傾向があります。しかし、産褥期には乳房トラブルや尿意減弱など特有のケアが必要な場面が多く、国試でも頻出のテーマとなっています。
分娩の基礎用語
分娩を理解するうえで、まず妊娠週数による分類を整理する必要があります。妊娠22週未満での妊娠終了は流産、妊娠22週0日から36週6日までは早産、妊娠37週0日から41週6日までは正期産、妊娠42週0日以降は過期産と分類されます。正期産の範囲を正確に覚えることが国試対策の第一歩です。
破水の分類
破水とは胎児を包んでいる卵膜が破れて羊水が流出する現象です。陣痛発来前に起こるものを前期破水、陣痛開始後で子宮口全開大前に起こるものを早期破水、子宮口全開大時に起こるものを適時破水、児娩出後に起こるものを遅滞破水と呼びます。羊水混濁の有無は胎児機能不全の指標となるため、破水時には必ず観察します。
分娩所要時間と出血量
分娩所要時間は陣痛開始から胎盤娩出までの時間で計測します。初産婦では平均12〜15時間、経産婦では6〜8時間程度とされ、経産婦のほうが短いのが特徴です。分娩時出血量は分娩終了後2時間までを合算して判定し、500mLを超えると分娩時異常出血とされます。
産褥期の子宮復古
産褥期とは分娩終了後から妊娠前の状態に戻るまでの約6〜8週間を指します。子宮復古とは妊娠で増大した子宮が元の大きさに戻る過程のことで、分娩直後の子宮底は臍高、分娩12時間後で臍上1横指、産褥1日で臍下1〜2横指と日々下降していきます。
子宮復古を促す3要素
子宮復古を促進するために重要な3要素として、膀胱の空虚化、早期離床、早期授乳が挙げられます。膀胱が充満すると子宮が上方や側方に偏位し収縮が妨げられるため、子宮復古不全や弛緩出血の原因となります。早期離床は血流を改善し悪露の排出を促し、早期授乳ではオキシトシン分泌による子宮収縮が期待できます。
産褥早期の尿意減弱
産褥早期には尿意を感じにくくなる現象がよくみられます。これは分娩時の児頭による膀胱・尿道・骨盤底神経の圧迫や、会陰縫合部の痛みによる排尿の抑制が原因です。膀胱の過伸展は尿閉や尿路感染、子宮復古不全を招くため、尿意がなくても3〜4時間ごとに定期的にトイレへ誘導し排尿を促すことが重要です。排尿後には必ず子宮底の位置と硬度を再確認します。会陰部痛がある場合は円座の使用や温水での外陰部洗浄で痛みを軽減します。
産褥期の乳房ケア
乳房の形態はHoffman分類でⅠ型(扁平型)、Ⅱa型(お椀型)、Ⅱb型(下垂型)、Ⅲ型(下垂著明型)に分けられ、Ⅱa型は授乳に最も適した形とされています。産褥3日ごろから乳汁分泌が本格化し、乳房の緊満がみられます。授乳トラブルの観察では、乳頭の損傷、乳房の硬結、発赤、熱感、疼痛などを評価します。
副乳の理解とケア
副乳とは、腋窩から鼠径部に至るミルクラインと呼ばれる発生学的な乳腺遺残部に生じる乳腺組織のことです。人口の1〜5%に認められ、最も多くみられるのは腋窩です。妊娠・授乳期以外は無症状であることが多いのですが、プロラクチンの影響で乳腺組織が発達して腫脹や疼痛を呈することがあります。副乳には通常乳管の開口がなく乳汁の排出経路がないため、マッサージや授乳刺激を加えるとうっ積が悪化します。対応としては冷罨法による腫脹・疼痛の緩和が標準で、着圧の少ない下着の使用や鎮痛薬の併用を行います。通常は断乳後に自然軽快します。
まとめ
経産婦の分娩経過では、正期産の範囲(37週0日〜41週6日)、破水の分類、経産婦は分娩所要時間が短いことが重要です。産褥期には子宮復古を促す3要素(膀胱の空虚化・早期離床・早期授乳)を意識し、尿意減弱に対しては定期的なトイレ誘導が基本ケアとなります。乳房ケアではHoffman分類による乳房形態の理解と、副乳に対しては授乳刺激を避けて冷罨法で対応することがポイントです。これらの基礎知識を押さえれば、産褥期の看護に関する国試問題に確実に対応できるようになります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
妊娠37週0日から41週6日までの間に分娩に至った場合をという。
- 2.
陣痛発来前に卵膜が破れて羊水が流出する破水をという。
- 3.
子宮復古を促進する3要素は、早期離床、早期授乳、およびである。
- 4.
産褥早期は児頭による膀胱や骨盤底神経への圧迫により尿意が減弱しやすいため、尿意がなくても3〜4時間ごとにを行う。
- 5.
腋窩から鼠径部に至る発生学的乳腺遺残部の線をと呼び、この線上に副乳が生じる。
- 6.
副乳は乳管の開口がなく乳汁の排出経路がないため、腫脹・疼痛に対しては授乳刺激ではなくで対応する。
- 7.
乳房の形態分類でお椀型と呼ばれ授乳に最も適した形は、Hoffman分類のである。
- 8.
分娩所要時間は陣痛開始から胎盤娩出までの時間で計測され、経産婦では平均時間程度である。
