分娩第1期極期と弛緩出血
母性看護学 / 分娩期・分娩経過
解説
今回は分娩第1期極期と弛緩出血について解説します。分娩とは、胎児および付属物(胎盤・卵膜・臍帯・羊水)が母体外へ娩出される一連の過程をいい、その経過と産後の出血管理は看護師国家試験で頻出のテーマです。
分娩の経過区分
分娩は経過に応じて三つの期に分けられます。分娩第1期は陣痛周期が10分以内となった時点から子宮口が全開大(10cm)するまでの期間で、開口期とも呼ばれます。分娩第2期は子宮口全開大から児娩出までで、娩出期にあたります。分娩第3期は児娩出から胎盤娩出までで、後産期とも呼びます。これら全体にかかる時間を分娩所要時間といい、正常範囲は初産婦で30時間以内、経産婦で15時間以内です。これを超える場合は遷延分娩と判断します。
分娩第1期極期(極限期)
分娩第1期は潜伏期・活動期・極期に細分されます。極期は子宮口8〜10cm開大の時期で、英語ではtransition phase(移行期)と呼ばれます。陣痛の周期が短く強度も最大となり、産痛が最も激しくなる時期です。産婦は不安や恐怖から自制を失いやすく、悪心や震えなどの症状も出現します。
努責の禁止と呼吸法
この時期で看護上もっとも重要なのは、子宮口が全開大する前に努責(いきみ)をかけてはならないということです。早期に努責を行うと、子宮頸管裂傷や産道損傷の原因となり、また呼吸を止めて全身に力を入れることで母体の酸素消費が増大し、胎児への酸素供給が低下します。さらに産道の緊張が高まって分娩進行を妨げます。
そのため看護師は産婦が努責を逃せるよう呼吸法を指導します。具体的には「ヒーヒーフー」といった短く浅い呼吸や、ゆっくりとした腹式呼吸を促し、息を止めないように声をかけます。
非薬物的ケア
産痛の緩和には、付き添いや声かけ、タッチング、腰部マッサージ、冷罨法などの非薬物的ケアが有効です。産婦が安心して陣痛に対処できるよう環境を整えることが大切です。
弛緩出血
弛緩出血とは、児および胎盤娩出後に子宮筋の収縮が不良となり出血が持続する病態で、分娩後出血の最多原因です。胎盤剥離面の血管は本来、子宮筋の収縮によって機械的に圧迫され止血されますが、子宮筋の収縮不良があると止血が得られず大量出血に至ります。
所見と異常出血の基準
弛緩出血の典型所見は、胎盤娩出後の出血量増加と、触診で子宮底が臍高で軟らかいことです。本来、児娩出直後の子宮底は臍下数横指の高さで硬く触れます。分娩時出血量の異常基準は、経腟分娩で500mL、帝王切開で1,000mLを超える場合とされています。出血は急速に進行することがあるため、産後2時間は特に注意深く観察することが求められます。
危険因子
弛緩出血を起こしやすい因子としては、多胎妊娠、巨大児、分娩の遷延、弛緩出血の既往、羊水過多などがあり、いずれも子宮筋が過度に伸展されるか疲労する状況です。
段階的対応
弛緩出血に対する処置は段階的に行います。まず最優先の一次対応として子宮底(輪状)マッサージを行い、機械的刺激で子宮収縮を促します。効果が乏しければオキシトシンなどの子宮収縮薬を投与し、さらに双手圧迫、バルーンタンポナーデ、子宮動脈塞栓術へと進めます。
まとめ
分娩第1期極期は子宮口8〜10cm開大の時期で、努責を禁じて呼吸法で逃すことが看護の要点です。弛緩出血は分娩後出血の最多原因で、子宮底が臍高で軟らかく、経腟分娩で500mLを超える出血があれば異常と判断します。発見時はまず子宮底マッサージを行うことを押さえておきましょう。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
分娩第1期は陣痛周期が10分以内となった時点から子宮口がするまでの期間である。
- 2.
分娩所要時間の正常範囲は初産婦で時間以内、経産婦で時間以内であり、これを超えるとと判断する。
- 3.
分娩第1期極期は子宮口cm開大の時期であり、全開大前のためは禁忌である。
- 4.
分娩第1期極期では、努責を逃すために(短く浅い呼吸やゆっくりとした腹式呼吸)を指導する。
- 5.
分娩後出血の最多原因はであり、子宮筋の収縮不良によって出血が持続する。
- 6.
弛緩出血では、胎盤娩出後に出血量が増加し、子宮底がで所見が認められる。
- 7.
分娩時出血量の異常基準は、経腟分娩でmL、帝王切開でmLを超える場合である。
- 8.
弛緩出血に対する最優先の一次対応はであり、効果が乏しい場合はなどの子宮収縮薬を投与する。
- 9.
分娩後、特に弛緩出血に注意して観察すべき時間は産後時間である。
