切迫早産とリトドリン管理
母性看護学 / 妊娠合併症・異常妊娠
解説
今回は切迫早産とリトドリン管理について解説します。
切迫早産とは
切迫早産とは、妊娠22週0日から36週6日までの間に、規則的な子宮収縮や子宮頸管の開大・展退、性器出血、破水などが認められ、早産に至る可能性が高い状態をいいます。妊娠22週から36週6日までに分娩が完了したものを早産といい、37週0日から41週6日までを正期産、42週0日以降を過期産、22週未満を流産と区別します。早産で出生した児は、肺の未熟性による呼吸窮迫症候群、低体温、低血糖、黄疸、哺乳不良、感染症などのリスクが高く、在胎週数が若いほど予後が悪化します。とくに34〜36週で出生する後期早産児であっても、呼吸障害や哺乳障害のリスクが残るため、可能なかぎり妊娠の継続を図ることが治療の目標となります。
切迫早産の代表的な所見は、規則的で頻回な子宮収縮(おおむね10分以内の周期)と、子宮口の開大・頸管長の短縮です。原因としては絨毛膜羊膜炎などの子宮内感染、頸管無力症、多胎妊娠、羊水過多、ストレスや過労、喫煙などが挙げられます。治療の基本は安静と子宮収縮抑制薬の投与であり、感染が背景にある場合は抗菌薬を併用します。
リトドリン塩酸塩の作用機序
リトドリン塩酸塩は、切迫早産に対して第一選択で用いられる子宮収縮抑制薬であり、β2アドレナリン受容体刺激薬に分類されます。子宮平滑筋にあるβ2受容体を刺激することで細胞内cAMPを増加させ、平滑筋を弛緩させて子宮収縮を抑制します。投与経路は経口と点滴静注があり、切迫早産で入院管理が必要な場合は持続点滴静注が選択されます。
β2刺激薬は子宮平滑筋に選択的に作用することを目的とした薬剤ですが、β1受容体への交差作用や全身のβ2受容体への作用により、母児ともに多彩な副作用を生じます。
主な副作用と観察項目
リトドリン投与時にもっとも頻度が高く、かつ最優先で観察すべき副作用は頻脈です。β1受容体への作用により母体の心拍数が上昇し、動悸、不整脈、ときに心房細動などを起こすことがあります。投与開始直後から脈拍数が増加しやすいため、看護師は点滴開始前にバイタルサインを測定し、開始後は脈拍数、リズム、動悸の有無を頻回に確認します。脈拍数が120/分を超える場合や不整脈が出現した場合は、医師への報告と投与量の調整が必要です。
そのほかの重要な副作用として、糖新生促進による高血糖、細胞内へのカリウム取り込み亢進による低カリウム血症、横紋筋融解症、肝機能障害、そして致死的となりうる肺水腫があります。肺水腫は多胎妊娠、大量輸液の併用、妊娠高血圧症候群合併例でとくにリスクが高く、呼吸困難、頻呼吸、SpO2低下、湿性ラ音、起座呼吸などの徴候を見逃さないことが重要です。胎児側では頻脈や血糖変動が問題となります。
看護のポイント
切迫早産の看護では、子宮収縮を増強させないために安静を保ち、トイレ歩行や食事姿勢などの活動範囲を医師の指示に沿って調整します。子宮収縮の頻度・持続時間・強さ、性器出血や破水の有無、児心音をモニタリングし、必要時はノンストレステスト(NST)で胎児心拍と子宮収縮を評価します。リトドリン投与中は脈拍・血圧・呼吸状態・血糖・電解質・水分出納を継続的に観察し、点滴ルートの管理と滴下数の正確な維持を行います。安静による下肢深部静脈血栓症、便秘、筋力低下、精神的ストレスへの援助も欠かせません。
妊娠後期の体位と仰臥位低血圧症候群
リトドリン治療中やNST実施時など、妊婦が長時間ベッド上で過ごす場面では、仰臥位低血圧症候群にも注意します。妊娠20週以降、とくに後期では増大した子宮が仰臥位で下大静脈を圧迫し、静脈還流が減少して心拍出量が低下します。母体には悪心、冷汗、顔面蒼白、頻脈、血圧低下が、胎児には心拍数低下が出現します。予防と対応として、NSTや安静時はファウラー位または左側臥位を基本とし、症状が出現した場合はただちに左側臥位に体位変換します。胎児心拍異常時の子宮内蘇生としては、体位変換、酸素投与、輸液の3点が基本となります。
まとめ
切迫早産は早産への進行を防ぐために子宮収縮抑制と安静を要する状態であり、第一選択薬としてβ2刺激薬であるリトドリン塩酸塩が用いられます。子宮平滑筋を弛緩させる一方で、β1作用による頻脈・不整脈、高血糖、低カリウム血症、肺水腫などの副作用を生じるため、投与開始直後から脈拍を中心としたバイタルサインの観察が最優先となります。あわせて妊娠後期では仰臥位低血圧症候群を防ぐため左側臥位を基本とすることもおさえておきましょう。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
妊娠22週0日から36週6日までに分娩が完了したものをという。
- 2.
切迫早産の治療で第一選択として用いられる子宮収縮抑制薬はである。
- 3.
リトドリン塩酸塩はアドレナリン受容体刺激薬で、子宮平滑筋を弛緩させる。
- 4.
リトドリン投与開始直後にもっとも優先して観察すべき項目はである。
- 5.
リトドリンの副作用として、糖新生促進によると、細胞内へのカリウム取り込み亢進による低カリウム血症がある。
- 6.
リトドリンの重篤な副作用で、多胎・大量輸液・妊娠高血圧症候群でリスクが高まるのはである。
- 7.
妊娠後期の仰臥位で増大子宮が下大静脈を圧迫し、血圧低下や胎児心拍低下をきたす病態をという。
- 8.
仰臥位低血圧症候群が疑われたときの最初の対応はへの体位変換である。
- 9.
胎児心拍異常時の子宮内蘇生として、体位変換、、輸液の3点が基本となる。
