肥厚性幽門狭窄症
小児看護学 / 小児消化器疾患・先天性消化器奇形
解説
肥厚性幽門狭窄症とは、胃の出口である幽門部の筋層(特に輪状筋)が肥厚し、胃内容物の十二指腸への通過が障害される疾患です。今回は本疾患の病態、症状、検査、治療、看護について解説します。
病態と疫学
幽門筋が肥厚することで幽門管が狭窄・延長し、胃から十二指腸へのミルクの通過が妨げられます。胃内に貯留したミルクが圧出されることで、強い嘔吐が出現します。
好発は生後2〜8週の乳児で、男児に多く、第1子に多い傾向があります。原因は明らかになっていませんが、遺伝的素因や環境因子の関与が指摘されています。
症状
本疾患の三徴は、噴水状の非胆汁性嘔吐、体重増加不良、上腹部のオリーブ様腫瘤の触知です。
嘔吐は哺乳直後に勢いよく噴水のように出現するのが特徴で、閉塞部位が幽門部であるため胆汁は混入せず、吐物は白色のミルク様となります。嘔吐を繰り返すことで十分な栄養がとれず体重増加不良をきたし、進行すると脱水・大泉門陥凹・皮膚ツルゴール低下がみられます。腹部の触診では、心窩部右側にオリーブ大の腫瘤を触知します。
電解質・酸塩基平衡異常
嘔吐により胃液中の塩酸(HCl)が大量に失われるため、血液は低クロール性代謝性アルカローシスを呈します。同時に低カリウム血症や低ナトリウム血症をきたすこともあります。血液ガスではpHの上昇、血清Cl値の低下が典型所見です。
診断
診断には腹部超音波検査が第一選択となります。幽門筋層の厚さが4mm以上、幽門管の長さが16mm以上で診断されます。上部消化管造影では狭窄部位がひも状に細く描出される所見がみられます。
治療
治療はまず脱水と電解質異常の補正が最優先となります。血清Cl値が正常化するまでは手術を行いません。
保存療法では硫酸アトロピンの内服または静注が用いられます。抗コリン薬としてムスカリン受容体を遮断し、肥厚した幽門筋の緊張を緩めることでミルクの通過を改善します。授乳の15〜30分前に投与し、奏効率は7〜8割です。副作用として皮膚紅潮、体温上昇、頻脈、口渇などがあり、過量では痙攣をきたすこともあるため、母親に事前に説明します。
保存療法が無効な場合は手術療法として**Ramstedt手術(粘膜外幽門筋切開術)**が行われます。肥厚した幽門筋の漿膜筋層のみを縦切開し、粘膜は温存するため消化管吻合は不要です。近年は腹腔鏡下手術も普及しています。合併症には粘膜穿孔、創部感染、術後嘔吐があります。
看護
術前看護では、絶飲食とし経鼻胃管を自然開放にして胃内を減圧します。これにより貯留物の自然排出を促し、嘔吐や麻酔導入時の逆流誤嚥を予防します。持続点滴で脱水と電解質異常の補正を行います。
術後看護では、腹腔鏡下手術の場合、翌日から少量ずつ哺乳を再開し段階的に増量します。授乳前後には必ず**排気(げっぷ)**を行います。乳児は哺乳時に空気を一緒に飲み込みやすく、胃内に貯留したガスが嘔吐や腹部膨満の原因となるためです。授乳後は右側臥位または上体挙上で30分程度維持し、胃内容物の十二指腸への移行を促します。
まとめ
肥厚性幽門狭窄症は、生後2〜8週の男児に好発する幽門筋肥厚による通過障害です。噴水状非胆汁性嘔吐、体重増加不良、オリーブ様腫瘤の三徴を呈し、低クロール性代謝性アルカローシスをきたします。診断は腹部超音波検査で行い、治療は硫酸アトロピンによる保存療法かRamstedt手術が選択されます。看護では脱水・電解質異常の補正、経鼻胃管の自然開放による減圧、術後の排気と段階的哺乳再開が重要となります。
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- 1.
肥厚性幽門狭窄症は、胃の出口である部の筋層が肥厚し、胃内容物の通過が障害される疾患である。好発時期は生後週で、児に多く第1子に多い。
- 2.
本疾患の三徴は、噴水状の嘔吐、、上腹部の様腫瘤の触知である。閉塞部位が幽門部であるため吐物は色を呈する。
- 3.
嘔吐により胃液中の(HCl)が大量に失われるため、血液は低性を呈する。血液ガスではpHはする。
- 4.
診断には腹部検査が第一選択であり、幽門筋層の厚さがmm以上、幽門管の長さがmm以上で診断される。
- 5.
保存療法ではが用いられ、抗コリン薬として受容体を遮断し、肥厚した幽門筋の緊張を緩める。授乳の分前に投与し、副作用として皮膚紅潮、体温上昇、、口渇などがある。
- 6.
保存療法が無効な場合の手術療法は手術(粘膜外幽門筋切開術)であり、肥厚した幽門筋ののみを縦切開し、は温存するため消化管吻合は不要である。
- 7.
術前は脱水と異常の補正が最優先であり、血清値が正常化するまで手術は待機する。経鼻胃管はにして胃内を減圧し、嘔吐や麻酔導入時のを予防する。
- 8.
術後看護では授乳前後にを行う。乳児は哺乳時にを一緒に飲み込みやすく、胃内ガスが嘔吐や腹部膨満の原因となるためである。授乳後はまたは上体挙上で30分程度維持する。
