ノロウイルス・ウイルス性胃腸炎
小児看護学 / 小児消化器疾患・先天性消化器奇形
解説
今回はノロウイルス・ウイルス性胃腸炎について解説します。
ウイルス性胃腸炎とは、ウイルスを病原体とする急性胃腸炎の総称で、嘔吐、下痢、腹痛、発熱を主症状とする疾患です。冬季に流行のピークを迎え、保育所、学校、医療施設、高齢者施設などで集団感染を起こしやすいため、看護師には正確な病態理解と確実な感染対策の実施が求められます。小児では脱水の進行が速く、早期評価と適切な水分補給が重要です。
原因ウイルスと臨床的特徴
ウイルス性胃腸炎の原因として最も頻度が高いのはノロウイルスとロタウイルスです。ノロウイルスは年齢を問わず発症し、冬季に流行し、嘔吐が優位な症状として現れます。潜伏期は12〜48時間と短く、突然の嘔吐で発症することが多いのが特徴です。少量のウイルス量でも発症し、感染力が極めて強い点が臨床上問題となります。ロタウイルスは主に乳幼児にみられ、冬から春にかけて流行し、白色水様便と高度の脱水を起こしやすい点で注意が必要です。その他、アデノウイルスやサポウイルスも原因となります。
感染経路は接触感染と糞口感染が中心で、便や吐物中に大量のウイルスが排出されます。汚染された食品(生牡蠣など二枚貝)や手指を介した経口摂取、吐物の飛沫からの感染も知られています。
脱水の評価と治療
小児は体重あたりの水分量が多く、新生児で約80%、幼児で約70%を占め、不感蒸泄も多いため、嘔吐・下痢により急速に脱水へ進行します。脱水の程度は体重減少率によって分類され、軽度は3〜5%、中等度は6〜9%、重度は10%以上とされます。
評価項目としては、体重変化、皮膚ツルゴール、口腔粘膜の湿潤度、流涙の有無、尿量、大泉門の陥凹(乳児)、眼窩陥凹、毛細血管再充満時間(CRT)、脈拍、血圧、意識レベルを総合的に確認します。中等度脱水では、皮膚ツルゴール低下、頻脈、口腔内乾燥、流涙減少、尿量減少などがみられます。
治療の第一選択はWHOが推奨する**経口補水療法(ORS)**で、少量頻回に与えることで腸管からの水分・電解質吸収を促します。嘔吐が強い場合や中等度以上の脱水では輸液療法が選択されます。回復期にはバナナ、米、リンゴ、トーストなど消化に優しい食品から段階的に再開します。
感染対策
ノロウイルスは非エンベロープウイルスでアルコール消毒に抵抗性を示すため、手指衛生は石けんと流水による物理的洗浄が基本です。消毒には次亜塩素酸ナトリウムが有効で、糞便や吐物が付着した場所は1000ppm(0.1%)、環境清拭は200ppm(0.02%)を用います。家庭用塩素系漂白剤(約5%)を50倍に薄めると1000ppm、250倍で200ppmに調整できます。熱処理では85〜90℃で90秒以上の加熱が必要です。
吐物や便の処理時は使い捨て手袋、マスク、ガウン、ゴーグルを着用し、処理後は十分な換気と手洗いを行います。汚染された衣類や下着は病室内で次亜塩素酸ナトリウムに浸してから密閉搬送し、おむつや汚染物は二重ビニール袋で密閉して廃棄します。標準予防策に加えて接触感染予防策を徹底し、可能であれば個室隔離とします。
小児入院時の心理ケア
小児は発達段階に応じた心理的反応を示します。前操作期にある幼児期から学童期前半では自己中心性やアニミズム的思考から「病気は自分が悪いことをした罰」と受け止めることがあり、看護師は感情を受容したうえで本人のせいではないと明確に伝える必要があります。痛みの評価には年齢に応じてフェイススケール、NRS、FLACCスケール、CHEOPSなどを使い分けます。
入院中は馴染みのおもちゃや絵本の持ち込み、保護者の付き添い、遊びを通した気分転換、処置の予告と説明、頑張りを認める関わりが情緒の安定につながります。持ち込み物品は洗浄消毒可能なものを選びます。
まとめ
ウイルス性胃腸炎ではノロウイルスとロタウイルスが代表的な原因であり、嘔吐・下痢による脱水の早期評価と経口補水療法を基本とした水分管理が重要です。ノロウイルスはアルコールに抵抗性があるため次亜塩素酸ナトリウムによる消毒と石けんと流水による手洗いが感染対策の中心となります。小児では発達段階を踏まえた心理的支援を併せて行うことで、安全で安心できる療養環境を提供することができます。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
ノロウイルスやロタウイルスによる胃腸炎の主な感染経路は接触感染とである。
- 2.
小児の脱水は体重減少率で分類され、6〜9%は脱水とされる。
- 3.
ウイルス性胃腸炎の脱水治療における第一選択はWHOが推奨する(ORS)である。
- 4.
ノロウイルスはウイルスであるためアルコール消毒に抵抗性を示す。
- 5.
ノロウイルスの環境消毒にはが用いられ、吐物や便の付着部位には1000ppmで使用する。
- 6.
ノロウイルスを熱処理で不活化するには85〜90℃で秒以上の加熱が必要である。
- 7.
ノロウイルス対策では手指衛生としてによる物理的洗浄が基本となる。
- 8.
ピアジェの認知発達理論で幼児期から学童期前半にあたり、自己中心性を特徴とする時期をという。
- 9.
末梢循環の評価指標で、爪床を圧迫して解除後に色調が戻るまでの時間を(CRT)という。
- 10.
2か月から7歳の小児の疼痛評価に用いられ、顔・脚・活動・啼泣・慰めやすさを評価するスケールをスケールという。
