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熱中症の応急処置と予防

小児看護学 / 小児看護技術・救急・トリアージ

解説

今回は熱中症の応急処置と予防について解説します。

熱中症とは

熱中症とは、高温多湿の環境下で体温調節機構が破綻し、体内に熱がこもることで生じる障害の総称です。発汗による水分・電解質の喪失と、深部体温の上昇が同時に進行することで、循環不全や臓器障害を引き起こします。気温だけでなく湿度や輻射熱、身体活動量などが複合的に関与し、屋内でも発症する点に注意が必要です。

重症度分類

熱中症は症状の重さによってⅠ度からⅢ度の3段階に分類されます。

Ⅰ度(熱失神・熱けいれん)

軽症で、めまい、立ちくらみ、一過性の意識消失、こむら返り、大量発汗がみられます。涼しい場所での休息と水分・塩分補給で改善することが多く、現場での応急処置で対応可能です。

Ⅱ度(熱疲労)

中等症で、頭痛、嘔吐、倦怠感、集中力低下を呈します。経口での水分摂取が困難な場合もあり、原則として医療機関の受診が必要です。

Ⅲ度(熱射病)

最重症で、意識障害、けいれん、肝障害・腎障害などの臓器障害を伴います。緊急搬送の対象であり、深部体温を30分以内に39℃以下まで下げることが救命の要点です。

応急処置(FIRE)

応急処置は頭文字を取ってFIREと覚えます。Fluid(水分・塩分補給)、Icing(全身冷却)、Rest(休息)、Emergency(重症時の医療機関搬送)の4要素です。まず涼しい場所へ移動させ、衣服を緩めて熱の放散を促します。 冷却で特に重要なのが、太い動脈が皮下を走行する頸部・腋窩・鼠径部を氷嚢などで冷やす方法です。これらの部位を冷却すると効率的に全身の体温を下げられます。さらに全身に水をかけて扇風機で送風する蒸散冷却も有効です。水分補給には電解質を含む経口補水液(OS-1)が適しますが、嘔吐や意識障害がある場合は誤嚥のおそれがあるため、経口摂取は避け静脈内輸液を行います。

熱中症と脱水

熱中症では汗から水分が大量に失われる一方で、電解質の喪失はそれを下回るため、高張性脱水を呈します。検査所見としては血清ナトリウムの上昇(高ナトリウム血症、Na>145mEq/L)、ヘモグロビンやヘマトクリットの上昇を伴う血液濃縮、尿比重の上昇がみられます。身体所見では、皮膚をつまむとゆっくり戻るツルゴール低下、口唇・粘膜の乾燥、頻脈、血圧低下が特徴的です。

輸液療法

初期治療では生理食塩液や乳酸リンゲル液などの等張電解質液で循環を立て直します。その後、高ナトリウム血症を補正する際は低張液でゆっくり補正することが原則です。急速に補正すると脳細胞内へ水が移動し脳浮腫を起こすリスクがあるためです。

予防

予防の柱は環境、服装、水分・塩分補給、体調管理、休憩の5つです。

環境管理

環境評価には暑さ指数(WBGT)が用いられます。WBGTが28℃以上で厳重警戒、31℃以上では運動を原則中止するのが目安です。

服装と水分・塩分補給

通気性・吸湿性に優れた素材を選び、屋外では帽子を着用します。水分補給は口渇を感じる前から定期的に行うことが重要です。口渇感はすでに脱水が進行しているサインだからです。発汗量が多い場面では0.1〜0.2%の食塩を含む飲料を1時間あたり500〜1000mLを目安に補給します。小児には経口補水液も有効です。

体調管理と休憩

睡眠不足、朝食抜き、体調不良はリスクを高めます。活動中は定期的に休憩を取り、無理を避けます。

高リスク群

体温調節機能が低下している高齢者、調節機能が未熟で地面に近く輻射熱を受けやすい小児、屋外作業者や運動選手、心疾患・腎疾患などの慢性疾患患者は、特に注意して観察と予防を行う必要があります。

まとめ

熱中症は高温環境下での体温調節破綻によって生じ、Ⅰ度からⅢ度に分類されます。応急処置の基本はFIRE(水分・冷却・休息・搬送)であり、冷却部位は頸部・腋窩・鼠径部が重要です。脱水は高張性で高ナトリウム血症と血液濃縮を伴い、輸液は等張液で循環を立て直したのち低張液でゆっくり補正します。予防ではWBGTを指標とした環境管理と、口渇前からの水分・塩分補給が要となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    熱中症の重症度分類において、意識障害やけいれん、肝・腎障害などの臓器障害を伴う最重症の病態をという。

  2. 2.

    熱射病では深部体温を30分以内に℃以下まで下げることが推奨される。

  3. 3.

    熱中症の応急処置の基本は頭文字FIREで表され、Fluid・・Rest・Emergencyの4要素からなる。

  4. 4.

    熱中症の冷却で効率的に全身体温を下げるため、太い血管が皮下を走行する頸部・腋窩・を冷却する。

  5. 5.

    熱中症では汗からの水分喪失が電解質喪失を上回るため、脱水を呈し、血清ナトリウム値は上昇する。

  6. 6.

    熱中症の身体所見として、皮膚をつまむとゆっくり戻る現象をといい、脱水の徴候である。

  7. 7.

    高ナトリウム血症を急速に補正すると脳細胞内への水の移動によりを起こす危険があるため、低張液でゆっくり補正する。

  8. 8.

    熱中症予防の環境評価指標である暑さ指数をといい、28℃以上で厳重警戒、31℃以上で運動原則中止が目安となる。

  9. 9.

    熱中症の水分補給では、すでに脱水進行のサインであるを感じる前から定期的に行うことが重要である。

  10. 10.

    発汗が多い状況では0.1〜0.2%のを含む飲料を1時間に500〜1000mL補給することが推奨される。

熱中症の応急処置と予防」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。