川崎病
小児看護学 / 小児循環器・呼吸器・その他
解説
今回は川崎病について解説します。川崎病とは、主に乳幼児に好発する原因不明の急性熱性疾患であり、全身の中小動脈に血管炎をきたす疾患です。最大の合併症は冠動脈瘤であり、後の虚血性心疾患のリスクとなるため、早期診断と急性期治療が極めて重要です。看護師国家試験では、診断基準となる主要症状、γ-グロブリン療法の管理、回復期所見、退院後の長期フォローアップが頻出となっています。
川崎病の病態と疫学
川崎病は1967年に川崎富作博士により報告された疾患で、全身の血管炎を主病態とします。好発年齢は4歳以下の乳幼児で、特に1歳前後にピークを示し、男児にやや多い傾向があります。原因は明らかになっていませんが、何らかの感染を契機に異常な免疫反応が起こると考えられており、季節性の流行や同胞発症の報告から感染症的要因の関与が示唆されています。病変の主座は全身の中小動脈で、なかでも冠動脈が侵されると冠動脈瘤を形成し、血栓性閉塞による心筋梗塞や突然死の原因となります。
主要症状と診断基準
川崎病の診断は臨床症状に基づき、以下の6つの主要症状から行われます。第一に5日以上続く発熱、第二に両側眼球結膜の充血、第三に口唇の発赤・亀裂やいちご舌といった口腔咽頭粘膜の変化、第四に大小不同の不定形発疹、第五に四肢末端の変化として急性期には手掌・足底の紅斑や手足の硬性浮腫、回復期には指先からの膜様落屑、第六に非化膿性の頸部リンパ節腫脹です。これら6症状のうち5つ以上を満たす場合、または4症状に加えて心エコーや心血管造影で冠動脈病変が確認された場合に川崎病と診断されます。
急性期の治療と看護
急性期治療の中心は、**γ-グロブリン大量療法(IVIG)**とアスピリン内服の併用です。発症後10日以内にIVIGを開始することで、冠動脈病変の発生率を約25%から3〜5%にまで低下させることができます。アスピリンは急性期には抗炎症作用を期待した中〜高用量で投与され、解熱後は抗血小板作用を目的とした低用量へ減量して継続します。IVIG不応例にはステロイド併用、インフリキシマブ、免疫抑制薬、血漿交換などが選択されます。
γ-グロブリンは人血液由来のタンパク製剤であり、投与中はアナフィラキシー、発熱、血圧変動、過剰な循環負荷による心不全、不整脈などのリスクがあります。投与開始時には心電図モニターを装着し、刺入部の観察を行い、開始から30分〜1時間は頻回にバイタルサインを確認します。蕁麻疹などの皮膚粘膜症状に加え、喘鳴などの呼吸器症状やチアノーゼ・血圧低下などの循環器症状が出現した場合はアナフィラキシーを疑い、ただちに投与を中止し、仰臥位で下肢を挙上し、アドレナリンの筋肉注射、酸素投与、輸液負荷などの処置を行います。
乳幼児への点滴管理
乳幼児の点滴管理では発達段階を考慮した援助が求められます。エリクソンの発達段階で乳幼児期は自律性を獲得する時期にあたり、言語による説明だけでは恐怖や不快感を軽減することは困難です。そのため、遊びや興味のある対象に注意を向けるディストラクションや、事前に処置を説明し心の準備を促すプレパレーションが有用です。刺入部はシーネで関節を固定し、ルートは体動に追従する長さを確保し、刺入部は包帯などで視界から外して触らせない工夫を行います。身体抑制は児童福祉の観点から倫理的に慎重に判断し、切迫性・非代替性・一時性の3要件を満たす場合のみ最小限とします。きょうだいの面会は分離不安や情緒の安定の観点から、感染対策を講じたうえで推奨されます。
回復期の所見と退院後のフォロー
発症後10〜14日頃の回復期には、指先の爪と皮膚の境界部から皮膚が膜のようにむける膜様落屑がみられます。これは急性期の血管炎が収束していく自然経過であり、特別な治療は不要で、清潔保持と観察が基本となります。冠動脈瘤は急性期に所見がなくても亜急性期から回復期にかけて新規に出現したり、変化したりすることがあり、心筋梗塞を起こすまで自覚症状に乏しいことが特徴です。そのため、退院後も発症後1か月、2か月、6か月、1年、5年といった節目に心エコーや心電図による定期的なフォローアップが必須となります。
まとめ
川崎病は乳幼児に好発する原因不明の血管炎症候群であり、5日以上の発熱、両側眼球結膜充血、口唇・口腔所見、不定形発疹、四肢末端の変化、頸部リンパ節腫脹の6主要症状から診断されます。最重要合併症である冠動脈瘤を予防するため、発症10日以内のγ-グロブリン大量療法とアスピリン併用が標準治療です。看護では投与中のアナフィラキシーや循環動態の変化を見逃さず、乳幼児の発達段階に応じたディストラクションを取り入れ、回復期の膜様落屑や退院後の長期心臓フォローまでを見据えた継続的な支援が求められます。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
川崎病の最も重要な合併症はであり、後の虚血性心疾患のリスクとなる。
- 2.
川崎病の主要症状のうち、口腔所見として典型的な舌の変化をという。
- 3.
川崎病の回復期に、指先の爪と皮膚の境界部から皮膚が膜のようにむける所見をという。
- 4.
川崎病急性期の標準治療は、アスピリンと(IVIG)の併用である。
- 5.
γ-グロブリン療法は発症後日以内に開始することで冠動脈病変の発生率を低下させる。
- 6.
γ-グロブリン投与中に蕁麻疹・喘鳴・チアノーゼなどが出現した場合はを疑い、ただちに投与を中止する。
- 7.
アナフィラキシー発症時には、原因薬剤を中止し、仰臥位で下肢を挙上し、を筋肉注射する。
- 8.
乳幼児の点滴管理では、遊びや興味のある対象に注意を向けるが有用である。
- 9.
川崎病の診断は、6主要症状のうち項目以上、または4項目に冠動脈病変を認める場合に確定する。
- 10.
退院後は冠動脈病変の評価のため、や心電図による定期的なフォローアップが必須である。
