デュシェンヌ型筋ジストロフィー
地域・在宅看護論 / 在宅難病・その他疾患
解説
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)とは、進行性の筋力低下と筋萎縮をきたす遺伝性筋疾患の代表であり、小児の筋ジストロフィーのなかで最も頻度が高い疾患です。今回はDMDの病態・経過・治療・看護について解説します。
病態と遺伝形式
DMDは、X染色体短腕(Xp21.2)にあるジストロフィン遺伝子の変異によって発症します。ジストロフィンは筋細胞膜の内側で細胞骨格と細胞外マトリックスをつなぎ、収縮時の力学的ストレスから筋線維を保護する蛋白です。DMDではこのジストロフィン蛋白がほぼ完全に欠損するため、筋細胞膜が脆弱化し、筋線維の壊死と再生が繰り返されたのち、線維化と脂肪置換が進行します。
遺伝形式はX連鎖劣性遺伝で、原則として男児に発症します。母親が保因者である場合、男児の1/2が発症し、女児の1/2が保因者になります。発症頻度は男児約3,500人に1人とされます。
臨床経過
乳児期には軽度の運動発達遅延がみられ、首のすわりや独歩の獲得がやや遅れます。3〜5歳頃から歩行のぎこちなさ、転倒しやすさ、走れない、階段を昇れないといった症状が顕在化します。
床から立ち上がる際に手で膝や大腿を支えて体を起こす特徴的な動作を登攀性起立(Gowers徴候)といい、近位筋筋力低下を示す重要な所見です。また、変性した筋線維が脂肪・結合組織に置き換わることで腓腹筋(ふくらはぎ)が太く見える仮性肥大もみられます。
10歳前後には歩行が困難となり車椅子生活へ移行します。思春期以降は呼吸筋・心筋障害が進行し、側弯も加わって呼吸機能はさらに低下します。20〜30歳代で呼吸不全や心不全により死亡するのが自然経過ですが、近年は人工呼吸器管理により生命予後は延長しています。
検査と治療
検査では血清クレアチンキナーゼ(CK)が著明に高値となり、発症早期には数千〜数万IU/Lに達します。筋電図では筋原性変化、筋生検ではジストロフィン染色の欠損、確定診断には遺伝子検査が用いられます。
根治療法はなく、ステロイド(プレドニゾロン)による進行抑制、リハビリテーションや装具による拘縮・側弯予防、夜間からの非侵襲的陽圧換気(NPPV)導入、嚥下障害が進めば胃瘻造設による経管栄養が行われます。近年はエクソンスキッピング療法などの核酸医薬も登場しています。
看護のポイント
進行性疾患であるため、医療・福祉・教育・地域が連携した長期的な多職種支援が不可欠です。呼吸機能低下に対しては排痰援助、カフアシスト、人工呼吸器管理を行い、栄養面では誤嚥性肺炎の予防と必要エネルギーの確保を図ります。
進行期には構音障害により発語が不明瞭となるため、残存機能を活用したAAC(拡大代替コミュニケーション)が重要です。視線入力装置や透明文字盤などがありますが、家族以外では意思の判別が難しい場合、「はい」「いいえ」で答えられる閉じた質問を用い、まばたきの回数で応答してもらう方法が確実です。
家族支援
常時介護を要するため、障害者総合支援法の重度訪問介護を活用すると、ヘルパーが長時間にわたり身体介護や見守りを行い、家族の介護負担を軽減できます。
また、親の関心が患児に集中することで、**きょうだい(シブリング)**が愛情不足や不安を感じ、しがみつき・退行・問題行動などのサインを示すことがあります。居宅介護や短期入所を利用して母親がきょうだいと関わる時間を確保することは、根本的なきょうだい支援につながります。
さらに、慢性疾患児を育てる母親は社会的孤立を抱えやすく、同じ立場の親同士が経験を共有する**家族会(ピアサポートグループ)**への参加を提案することで、情緒的支援・情報交換・相互エンパワメントが得られ、孤独感の軽減に有効です。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
Duchenne型筋ジストロフィーの遺伝形式はX連鎖遺伝であり、原則として児に発症する。
- 2.
DMDの原因は、Xp21.2に位置する遺伝子の変異により、同名の蛋白が欠損し筋細胞膜が脆弱化することである。
- 3.
床から立ち上がる際に手で膝や大腿を支えて体を起こす特徴的な動作を(Gowers徴候)という。
- 4.
腓腹筋が脂肪・結合組織に置換されて太く見える所見をという。
- 5.
DMDでは血清(クレアチンキナーゼ)が著明に高値となり、診断の重要な手がかりとなる。
- 6.
DMDの進行抑制を目的に用いられる薬剤は(プレドニゾロン)である。
- 7.
構音障害があり家族以外では意思の判別が難しい場合、質問を用いてまばたきの回数で「はい」「いいえ」を確認する。
- 8.
常時介護を要する重度障害者に対し、ヘルパーが長時間訪問して身体介護や見守りを行う障害者総合支援法のサービスをという。
- 9.
親の関心が患児に集中することで愛情不足や不安を示す同胞への支援を支援(シブリングサポート)という。
- 10.
同じ立場の親同士が経験を共有し情緒的支援を得る場を(ピアサポートグループ)という。
