乳幼児の熱傷と事故予防
小児看護学 / 新生児・乳児期ケア
解説
乳幼児の熱傷とは、皮膚や粘膜が熱湯・蒸気・炎・高温物質などによって損傷を受けた状態をいいます。乳幼児は皮膚が薄く水分含有量が多いため、成人と同程度の熱源でも深く広範囲に傷害が及びやすく、家庭内で頻発する代表的な事故の一つです。本稿では、熱傷の深度分類と初期処置、面積評価、小児における処置時の家族支援、そして1歳児の発達特徴に基づく家庭内事故予防について解説します。
熱傷の深度分類
熱傷は損傷が及ぶ皮膚の深さによって四段階に分類されます。Ⅰ度熱傷は表皮にとどまる損傷で、発赤と灼熱感のみを認め、水疱は形成されず瘢痕も残しません。浅達性Ⅱ度熱傷は真皮浅層までの損傷で、水疱を形成し、水疱底は紅色を呈し、知覚神経が温存されているため強い疼痛を伴います。適切な処置により瘢痕を残さず治癒することが多いとされます。深達性Ⅱ度熱傷は真皮深層に及び、水疱底は白色化し、知覚神経の障害により疼痛は鈍麻します。治癒には時間を要し、瘢痕を残しやすいのが特徴です。Ⅲ度熱傷は皮下組織まで達する全層損傷で、皮膚は白色や黒色・羊皮紙様となり、神経終末も破壊されるため無痛となります。自然治癒は困難で、植皮術の適応となります。
受傷直後の処置と面積評価
受傷直後は、ただちに流水で15〜20分間冷却することが最も重要です。冷却により熱の深部への伝播を防ぎ、疼痛を緩和し、組織障害の進行を抑制できます。衣服の上から熱湯を浴びた場合は無理に脱がさず、衣服の上から流水をかけます。水疱は感染防御の役割を果たすため破かず、清潔なガーゼで保護して医療機関を受診します。
受傷面積の評価は、成人では9の法則が用いられますが、乳幼児は頭部の体表面積比率が大きく四肢の比率が小さいため、9の法則をそのまま適用することは不適切です。小児では年齢ごとに体表面積比を補正したLund-Browderの法則を用いて評価します。
小児の処置における家族支援
小児の侵襲的処置では、児の不安と恐怖を軽減する家族支援が不可欠です。基本となるのは、発達段階に応じた事前説明であるプレパレーション、処置中の親の同席、声かけと適切な固定、処置後にがんばりをほめる関わりです。親が同席することで児は安心感を得られ、処置後のトラウマ軽減にもつながります。母親が処置場面に立ち会うことに不安を訴えた場合でも、看護師は同席を否定せず、母親がそばにいることそのものが児にとって最大の支えであり「母親にしかできない役割」であることを伝え、母親が役割を果たせるよう支援します。
1歳児の発達特徴と家庭内事故予防
1歳児はつかまり立ちから歩行を獲得し、手で物をつかみ口に運ぶ行動が活発になる時期です。視野や判断力は未熟で、危険を予測できません。この時期に多い事故は熱傷・転落・誤飲・溺水であり、家庭内事故予防の指導では、保護者が1歳児の発達と行動の特徴を理解し、その視点で家の中の危険を予測して環境を整えられるよう支援することが優先されます。
具体的には、引っ張られて熱い飲食物が落下するためテーブルクロスを使用しない、熱い飲食物や調理器具を子どもの手の届く位置に置かない、コンロガードを設置する、浴室には鍵をかけ残し湯をしないなどの対策があります。誤飲予防では、直径39mm・長さ51mm未満の物は気道に入る可能性があるため手の届く範囲に置きません。
まとめ
乳幼児の熱傷では深度と面積を正しく評価し、受傷直後の流水冷却と水疱の保護が予後を左右します。面積評価には小児の体型を反映したLund-Browderの法則を用います。処置時には親の同席を含むプレパレーションで児の安心を支え、退院後は1歳児の発達特徴をふまえた環境整備で再発と他事故の予防を図ることが看護の要点です。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
熱傷の深度分類のうち、表皮にとどまり発赤と灼熱感のみを認めるのはである。
- 2.
真皮浅層までの損傷で水疱を形成し、水疱底が紅色で強い疼痛を伴うのはである。
- 3.
皮下組織まで達し、皮膚が白色や黒色となり無痛で植皮術の適応となるのはである。
- 4.
熱傷の受傷直後は、ただちにで15〜20分間冷却する。
- 5.
熱傷で生じた水疱は感染防御の役割があるため、に清潔なガーゼで保護する。
- 6.
小児の熱傷面積評価には、年齢ごとに体表面積比を補正したを用いる。
- 7.
小児の侵襲的処置において、発達段階に応じた事前説明を行うことをという。
- 8.
1歳児に多い家庭内事故は、熱傷・転落・誤飲・である。
- 9.
誤飲予防の目安として、直径39mm・長さ未満の物は子どもの手の届く範囲に置かない。
