StudyNurse

施設内感染症と褥瘡

老年看護学 / 高齢者の疾患・身体ケア

解説

施設内感染症とは、介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどの集団生活の場で発生・拡大する感染症のことをいいます。高齢者は免疫機能が低下しており、また失禁や移動制限など共通のリスク因子を抱えているため、感染症の流行と褥瘡の発生が同時に問題となることが少なくありません。今回は施設内で特に問題となるノロウイルス感染症と疥癬、そして失禁関連皮膚炎(IAD)を合併した褥瘡の管理、さらに高齢者に多い脱水について解説します。

ノロウイルス感染症と感染対策

ノロウイルスは冬期に流行する感染性胃腸炎の代表的な原因ウイルスで、わずか10〜100個程度のウイルス量で感染が成立します。感染経路は嘔吐物や糞便への接触感染、飛沫から生じるエアロゾル、汚染された食品(カキなどの二枚貝が代表的)、そして汚染された環境表面を介する経路です。発症すると水様性下痢と嘔吐が突然出現し、施設内では急速に集団発生へと拡大しやすい性質を持ちます。

感染拡大予防の基本は標準予防策接触予防策の徹底です。発症者はトイレ付きの個室へ移し、排泄介助や嘔吐物処理の際にはガウン、手袋、マスクを装着します。退室時にはガウン・手袋を適切な手順で外し、流水と石けんによる手洗いを行います。ノロウイルスに対してはアルコール消毒が無効である点が国家試験で頻出のポイントです。消毒には次亜塩素酸ナトリウムを用い、嘔吐物の処理には0.1%(1000ppm)、環境表面の清拭には0.02%(200ppm)の濃度を使い分けます。嘔吐物の処理ではペーパータオルで外側から内側へ拭き取り、密閉袋に廃棄します。食品からの感染を防ぐには85℃で90秒以上の加熱が有効です。

疥癬と隔離の必要性

疥癬はヒゼンダニの皮膚寄生によって生じる感染症で、通常疥癬と角化型疥癬(ノルウェー疥癬)に大別されます。通常疥癬は寄生するダニの数が少なく、標準予防策で対応可能で潜伏期は約1か月です。一方、角化型疥癬では厚い角質の中に100万匹以上のダニが含まれ、剥がれ落ちた鱗屑からも感染するため、施設では爆発的な集団発生を起こします。したがって角化型疥癬と診断された場合は個室隔離と接触予防策が必要となります。

治療にはイベルメクチンの内服やフェノトリン、クロタミトンなどの外用薬を用います。患者の入浴は他の利用者への感染を防ぐため最後に行い、寝具や衣類は50℃以上で10分以上の熱処理や乾燥機を用いた処理を行うか、ビニール袋に密閉して約1週間保管します。

高齢者の脱水

高齢者は口渇を訴えにくく、皮膚のツルゴール低下も判定しにくいため、脱水が見落とされやすい特徴があります。脱水は喪失する水分と電解質のバランスにより三型に分類されます。高張性脱水は水分喪失が優位で口渇と高ナトリウム血症をきたします。低張性脱水はナトリウム喪失が優位で、口渇に乏しく意識障害が前景に立つことが特徴で、下痢や嘔吐が続いた後に多くみられます。等張性脱水は水分と電解質を等しく失った状態です。下痢や嘔吐の後に集中力低下、頻脈、見当識障害を呈し口渇が乏しい場合は、低ナトリウム血症を伴う低張性脱水を強く疑います。評価には尿量、皮膚・粘膜の乾燥、BUN/Cr比、血清ナトリウム値を用い、経口補水液(ORS)、生理食塩水、リンゲル液などで補正します。

褥瘡とIAD(失禁関連皮膚炎)

褥瘡は持続的な圧迫により皮膚と皮下組織が阻血障害を受けて生じる損傷で、深達度によりステージ分類されます。ステージⅠは消退しない発赤、ステージⅡは表皮・真皮までの損傷で水疱やびらんを呈し、ステージⅢは皮下組織までの全層欠損、ステージⅣは筋や骨にまで及ぶ組織欠損です。このほか深部損傷褥瘡(DTI)では紫色または紅色の変色を認め、壊死で深さが判定できないものは判定不能に分類されます。

下痢や尿失禁が続くと、便由来の消化酵素や水分が皮膚のバリア機能を破壊し、**IAD(失禁関連皮膚炎)**を生じます。仙骨部などに発赤やびらんを呈し、褥瘡と合併すると治癒が著しく遅延します。下痢が続く状態でステージⅠの褥瘡を認めた場合は、撥水性クリーム(酸化亜鉛含有クリームやシリコーン系皮膚保護剤)の塗布が最優先のスキンケアとなり、皮膚を便や尿から保護します。

まとめ

施設内感染症の予防では、ノロウイルスに対するアルコール無効と次亜塩素酸ナトリウムによる消毒、角化型疥癬での個室隔離など、病原体ごとの正しい対策を選択することが重要です。あわせて高齢者では口渇を訴えにくい低張性脱水に注意し、下痢や失禁が続く状況では撥水性クリームによるスキンケアでIAD合併を防ぐ視点が求められます。栄養管理、体位変換、スキンケアが褥瘡予防の三本柱であることも、国家試験で繰り返し問われる重要事項です。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    ノロウイルスの感染力は強く、わずか個程度のウイルスで感染が成立します。

  2. 2.

    ノロウイルスには消毒が無効であるため、消毒にはを用います。

  3. 3.

    ノロウイルス患者の嘔吐物処理には%(1000ppm)、環境表面の清拭には%(200ppm)の次亜塩素酸ナトリウムを使用します。

  4. 4.

    食品によるノロウイルス感染の予防には℃で秒以上の加熱が有効です。

  5. 5.

    厚い角質中に100万匹以上のダニを認め、個室隔離が必要となるのは疥癬(ノルウェー疥癬)です。

  6. 6.

    下痢や嘔吐後に口渇が乏しく見当識障害が前景となる脱水は脱水(低ナトリウム血症)です。

  7. 7.

    褥瘡のステージ分類で、消退しない発赤のみを呈する段階は、水疱やびらんなど真皮までの損傷を呈する段階はです。

  8. 8.

    便や尿による化学的刺激と湿潤で生じる皮膚炎を(失禁関連皮膚炎)といい、予防にはクリーム(酸化亜鉛含有クリームなど)の塗布が有効です。

  9. 9.

    褥瘡予防の三大柱はです。

施設内感染症と褥瘡」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。