独居高齢者の抑うつと退院
老年看護学 / 高齢者の精神・心理・看取り
解説
独居高齢者の抑うつとは、一人暮らしの高齢者が配偶者との死別や社会的孤立、慢性疾患などを契機に発症するうつ状態のことをいいます。今回は独居高齢者の抑うつのアセスメントから退院支援までを解説します。
高齢者のうつ病の特徴
高齢者のうつ病は、若年者と異なり気分の落ち込みよりも、食欲不振、不眠、倦怠感などの身体症状が前面に出やすいことが特徴です。また、記憶力低下や集中力低下といった仮性認知症の症状を呈することがあり、認知症との鑑別が重要となります。リスク因子としては、配偶者との死別、社会的孤立、慢性疾患、ADL低下などが挙げられます。脱水や栄養障害を併発して受診に至るケースも少なくありません。
認知機能と抑うつのアセスメント
高齢者の精神機能を評価する際には、まず認知機能のスクリーニングを行います。**MMSE(Mini-Mental State Examination)**は記憶、見当識、注意、言語、図形描写など11項目からなる30点満点の検査で、23点以下で認知症が疑われ、27点以上で認知機能正常と判定されます。長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)も同様に30点満点で、20点以下で認知症が疑われます。
認知機能が保たれている場合、次に抑うつ状態の評価を行います。高齢者の抑うつ評価には**GDS15(老年期うつ病評価尺度短縮版)**が用いられます。GDS15は15項目を「はい・いいえ」の二択で回答する簡便な自己評価尺度で、5点以上で軽度、10点以上で重度のうつが疑われます。
機能性尿失禁への援助
抑うつや臥床傾向により活動性が低下した高齢者では、尿失禁がみられることがあります。尿意があり歩行も可能であるにもかかわらず、トイレまでの移動や衣服の着脱に時間がかかり間に合わずに失禁してしまう状態を機能性尿失禁といいます。この場合、安易にオムツやカテーテルを使用するのではなく、トイレに近い病室への変更、前開きやゴムウエストなど着脱しやすい衣服の選択、排尿パターンに合わせた誘導などの環境整備を行い、自尊心を尊重しつつ排泄の自立を維持することが原則です。
退院支援とコミュニケーション
独居高齢者の退院支援では、身体的回復だけでなく、独居・孤立・経済状況・地域資源など心理社会的側面の評価が不可欠です。患者が退院後の生活に不安を表出した際には、安易な励ましや問題解決を急がず、まず傾聴と共感により感情表出を促し、不安の具体的内容を引き出すことが最も重要です。その上で、地域包括支援センター、訪問看護、配食サービス、デイケアなどの社会資源の導入や、家族との連携を検討していきます。
まとめ
独居高齢者の抑うつでは、配偶者死別や社会的孤立がリスク因子となり、身体症状が前面に出やすい点に注意が必要です。認知機能はMMSE、抑うつはGDS15で評価します。機能性尿失禁には環境整備による自立支援を行い、退院前の不安には傾聴と共感を基本としたかかわりが求められます。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
高齢者用の抑うつ評価尺度で、15項目を「はい・いいえ」で回答する自己評価尺度をという。
- 2.
認知機能のスクリーニング検査であるMMSEは30点満点で、点以下で認知症が疑われる。
- 3.
高齢者のうつ病では、記憶力低下や集中力低下など認知症に似た症状を呈することがあり、これをという。
- 4.
尿意があり歩行も可能であるが、移動や着脱動作の遅れにより失禁してしまう状態をという。
- 5.
GDS15では点以上で軽度のうつが疑われる。
- 6.
退院前に不安を表出した患者への最初のかかわりとして、感情表出を促すと共感が重要である。
- 7.
長谷川式簡易知能評価スケール〈HDS-R〉では点以下で認知症が疑われる。
