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嚥下と口腔の健康

人体の構造・機能 / 消化器・代謝・内分泌

解説

嚥下とは、口腔内に取り込んだ食塊を咽頭・食道を経て胃に送り込む一連の運動のことです。今回は嚥下のメカニズムと口腔の健康について解説します。

嚥下の3相と5期

嚥下運動は古典的に口腔期・咽頭期・食道期の3相に分けられます。摂食までを含めて考える場合には、これに先行期(食物の認知)と準備期(咀嚼・食塊形成)を加えた5期モデルで表現されます。口腔期は舌で食塊を咽頭へ送り込む随意運動の段階です。咽頭期は食塊が咽頭に達した瞬間に生じる不随意の嚥下反射の時期で、軟口蓋が挙上して鼻咽腔を閉鎖し、舌骨と喉頭が前上方へ挙上、喉頭蓋が後屈して喉頭口を閉鎖し、声門も閉じて気道を防御します。同時に呼吸が一時停止し、食道入口部が開大して食塊が食道へ送られます。食道期は食道の蠕動運動により食塊が胃まで運ばれる段階です。

嚥下に関わる神経と解剖

嚥下中枢は延髄にあり、関連する脳神経は三叉神経(Ⅴ)、顔面神経(Ⅶ)、舌咽神経(Ⅸ)、迷走神経(Ⅹ)、舌下神経(Ⅻ)です。甲状腺は喉頭前方の甲状軟骨直下に位置するため、嚥下反射に伴う喉頭挙上に合わせて上下動します。これが甲状腺触診の際に「水を飲んでください」と指示する根拠になります。

誤嚥とそのリスク

咽頭期で喉頭閉鎖が不十分になると食塊や唾液が気道に流入し、誤嚥が生じます。脳血管障害後、パーキンソン病、加齢などが誤嚥のリスク因子で、誤嚥性肺炎の原因となります。評価には反復唾液嚥下テスト(RSST)、改訂水飲みテスト、嚥下造影検査(VF)、**嚥下内視鏡検査(VE)などが用いられます。看護援助としては、30度ギャッチアップ+頸部前屈位で誤嚥を防ぎ、食形態をとろみ食やゼリー食に調整します。嚥下訓練には口腔運動・アイスマッサージ・ブローイングなどの間接訓練と、実際に食物を用いる直接訓練があり、医師の指示のもと言語聴覚士(ST)**が中心となって、歯科医師・歯科衛生士・管理栄養士・看護師とチームで関わります。

歯周病と全身への影響

口腔の健康は嚥下機能と全身状態を支える基盤です。歯周病は歯肉炎と歯周炎の総称で、原因はプラーク(歯垢)中の細菌です。歯肉炎は炎症が歯肉に限局し仮性ポケットを形成しますが、歯周炎では炎症が歯槽骨や歯根膜にまで及び、歯槽骨が破壊されて真性ポケットが形成されます。自覚症状に乏しいまま進行することから「静かなる疾患」と呼ばれ、日本人成人の過半数が罹患しています。歯周病は糖尿病と双方向性の関連があり、歯周治療によりHbA1cが改善することが知られています。さらに誤嚥性肺炎、動脈硬化、早産・低出生体重児、関節リウマチとの関連も報告されています。予防にはブラッシング、デンタルフロス、歯間ブラシによるセルフケアと、定期的な歯科検診およびスケーリングが重要です。

まとめ

嚥下は口腔期・咽頭期・食道期からなり、咽頭期では延髄を中枢とする嚥下反射により喉頭蓋が反転して気道が閉鎖されます。誤嚥予防には体位調整と食形態の工夫、言語聴覚士を中心とした多職種連携が欠かせません。また、歯周病に代表される口腔疾患は誤嚥性肺炎や糖尿病など全身疾患と密接に関わるため、口腔ケアは看護の重要な役割であることを押さえておきましょう。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    嚥下運動の3相は口腔期、、食道期である。

  2. 2.

    嚥下中枢はに存在する。

  3. 3.

    咽頭期ではが後屈して喉頭口を閉鎖し、誤嚥を防ぐ。

  4. 4.

    嚥下反射に伴って甲状軟骨直下にあるは上下動する。

  5. 5.

    嚥下訓練を中心的に担う専門職は(ST)である。

  6. 6.

    誤嚥予防のための食事時の体位は、約度のギャッチアップに頸部前屈位を組み合わせる。

  7. 7.

    歯周病は歯肉炎との総称で、後者では歯槽骨破壊により真性ポケットが形成される。

  8. 8.

    歯周病はと双方向性の関連があり、歯周治療によりHbA1cが改善することが知られている。

  9. 9.

    嚥下機能の精査には嚥下造影検査(VF)と嚥下検査(VE)が用いられる。

嚥下と口腔の健康」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。