胆嚢摘出術後の看護
成人看護学 / 肝・胆・膵
解説
胆嚢摘出術後の看護とは、胆石症や胆嚢炎などに対して胆嚢を摘出した患者に対し、術後の合併症を予防し、生理的変化に適応できるよう支援する一連のケアを指します。今回は胆嚢摘出術後の看護について解説します。
胆嚢と胆道の解剖と胆汁の役割
胆嚢は肝臓の下面に付着する洋ナシ形の小さな袋状臓器です。肝臓で産生された胆汁は、肝管から総肝管を経て一部が胆嚢に流入し、ここで貯留・濃縮されます。食事を摂取すると、特に脂肪が十二指腸に達した刺激でコレシストキニンが分泌され、胆嚢が収縮します。濃縮された胆汁は胆嚢管から総胆管へ流れ、Vater乳頭(大十二指腸乳頭)を経て十二指腸に放出されます。胆汁は脂肪を乳化して膵リパーゼによる消化を助け、脂溶性ビタミンの吸収にも関与します。
胆石症と胆嚢炎の病態
胆石症はコレステロールやビリルビンを主成分とする結石が胆嚢や胆管内に形成された状態で、食後の右季肋部痛、悪心、嘔吐などを呈します。リスク因子として中年女性、肥満、多産、高脂肪食などが挙げられます。結石が胆嚢頸部や胆嚢管に嵌頓すると胆嚢内圧が上昇し、感染を伴うと急性胆嚢炎を発症します。Murphy徴候、発熱、白血球増多、CRP上昇などがみられ、根治療法として胆嚢摘出術が選択されます。
胆嚢摘出術の術式
胆嚢摘出術は腹腔鏡下胆嚢摘出術(Lap-C)が標準術式です。臍部などに小切開を加えてポートを挿入し、腹腔内に二酸化炭素を注入して気腹を行い、視野を確保したうえで胆嚢を摘出します。低侵襲で創部が小さく、術後疼痛が軽く早期離床・早期退院が可能です。胆嚢炎が重症化した症例や癒着が高度な症例では開腹術へ移行することもあります。
術中・術後の生理的変化
気腹法は腹腔内圧を上昇させるため、横隔膜が頭側へ挙上し肺の機能的残気量が低下します。全身麻酔の筋弛緩と仰臥位も加わり、背側下肺野で無気肺が発生しやすくなります。さらに腹膜から吸収されたCO₂により高炭酸ガス血症を呈しやすく、麻酔科医は分時換気量を増やして対応します。術後は腹腔内に残存したCO₂が横隔神経を刺激し、肩痛(放散痛)を生じることがあります。
術後の観察ポイント
術後は意識レベル、血圧、脈拍、呼吸、SpO₂、体温などのバイタルサインを継続的に観察します。創部は発赤・腫脹・熱感・疼痛・滲出液の有無を確認します。腹腔ドレーンを留置している場合は排液の量と性状を観察し、淡血性から漿液性に移行するのが正常な経過です。黄褐色〜緑色の胆汁様排液がみられた場合は胆汁漏を疑います。肝機能(AST、ALT、ALP、γ-GTP、ビリルビン)や炎症反応の推移も重要な指標です。
主な術後合併症
代表的な合併症には胆汁漏、出血、胆管損傷、術後イレウス、感染、深部静脈血栓症、皮下気腫などがあります。胆汁漏は胆嚢管断端や肝床、副肝管からの胆汁漏出によって起こり、胆汁性腹膜炎を引き起こすため、ドレナージによる保存的治療を要し、数週間にわたる絶食とドレーン管理が必要となることがあります。総胆管損傷は重篤であり、再建術やステント留置を要する場合があります。Tチューブを留置した場合は自己抜去防止、屈曲・閉塞の確認、排液量と性状の観察が必要です。
離床と呼吸器合併症の予防
無気肺や肺炎などの呼吸器合併症を予防するため、早期離床、深呼吸、咳嗽、インセンティブ・スパイロメトリーを促します。下肢の運動と弾性ストッキングの装着により深部静脈血栓症を予防します。
術後の食事指導
胆嚢を摘出すると胆汁を貯留・濃縮する機能が失われ、肝臓から少量ずつ持続的に胆汁が十二指腸へ流入するようになります。そのため一度に脂肪の多い食事を摂取すると消化吸収が追いつかず、下痢や脂肪便を起こしやすくなります。退院指導では、揚げ物・脂身肉・バターなどを控え、消化のよい食品を少量頻回に摂取するよう説明します。術後3〜6か月で胆管が代償的に拡張し脂質耐性が回復するため、症状をみながら段階的に通常食へ戻していきます。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
胆嚢は肝臓で産生された胆汁を一時的に貯留・する臓器である。
- 2.
胆嚢から排出された胆汁は総胆管を経てから十二指腸に流入する。
- 3.
食事摂取時に胆嚢を収縮させ胆汁を排出させるホルモンはである。
- 4.
腹腔鏡下胆嚢摘出術では腹腔内にを注入する気腹法が用いられる。
- 5.
気腹法と全身麻酔の併用で横隔膜が挙上し、背側下肺野にが生じやすい。
- 6.
残存したCO₂が横隔神経を刺激することで術後にが生じることがある。
- 7.
胆嚢摘出術後にドレーンから黄褐色〜緑色の排液がみられた場合はを疑う。
- 8.
胆嚢摘出後は脂肪の消化吸収が不安定となるため、退院後の食事ではの摂取を控えるよう指導する。
- 9.
術後の呼吸器合併症予防のために早期と深呼吸を促す。
