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悪性リンパ腫と化学療法

成人看護学 / 血液・免疫・膠原病

解説

今回は悪性リンパ腫と化学療法について解説します。悪性リンパ腫はリンパ球が腫瘍化する血液腫瘍であり、頸部リンパ節腫脹を契機に発見されることが多く、化学療法を中心に治療が進められます。看護師は治療効果と並行して、上大静脈症候群や腫瘍崩壊症候群といった病態特有の合併症、そしてCHOP療法に伴う副作用の出現時期を理解し、観察と支援を行うことが求められます。

悪性リンパ腫の基礎

悪性リンパ腫とは、リンパ節やリンパ組織を構成するリンパ球が腫瘍化して無秩序に増殖する血液腫瘍の総称です。組織学的にホジキンリンパ腫非ホジキンリンパ腫に大別され、日本人ではそのほとんどが非ホジキンリンパ腫で、さらにB細胞性とT/NK細胞性に分類されます。代表的なびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は非ホジキンリンパ腫の中で最も頻度が高いタイプです。

主な症状

初発症状として最も多いのは無痛性のリンパ節腫脹で、特に頸部・腋窩・鼠径部などの表在リンパ節に出現します。腫瘤は弾性硬で可動性があり、痛みを伴わないのが特徴です。またB症状と呼ばれる全身症状(38℃以上の発熱、寝汗、6か月以内に10%以上の体重減少)は予後不良因子として重要で、病期分類にも組み込まれています。縦隔や腹腔内など深部リンパ節が腫大すると、周囲臓器の圧迫症状によって発見されることもあります。

上大静脈症候群

縦隔リンパ節が腫大すると、頭部・頸部・上肢からの静脈血を右心房へ還流する上大静脈が外側から圧迫され、還流障害をきたします。これを上大静脈症候群といい、悪性リンパ腫と肺癌(特に小細胞癌)が代表的な原因疾患です。

観察される症状

上肢・顔面・頸部の浮腫、顔面紅潮、頸静脈怒張、咳嗽、呼吸困難、頭痛などが出現します。両上肢を頭上に挙げると顔面紅潮や呼吸困難が増強するPemberton徴候も観察ポイントです。一方、下肢の浮腫や心不全徴候を伴う全身性浮腫、低アルブミン血症を背景とする浮腫とは区別する必要があります。手や腕のむくみを患者が訴えた際には、縦隔病変による還流障害を念頭において観察することが重要です。緊急性が高い場合には化学療法・放射線療法・ステント留置などの対応が行われます。

CHOP療法とR-CHOP療法

非ホジキンリンパ腫の標準治療として広く用いられるのがCHOP療法です。これはシクロホスファミド(C)、ドキソルビシン(H:ヒドロキシダウノルビシン)、ビンクリスチン(O:オンコビン)、プレドニゾロン(P)の4剤を組み合わせる多剤併用化学療法で、3週間を1サイクルとして6〜8コース行うのが一般的です。CD20陽性のB細胞リンパ腫では抗CD20抗体であるリツキシマブを併用するR-CHOP療法が第一選択となります。

各薬剤の特徴

シクロホスファミドはアルキル化薬で出血性膀胱炎に注意します。ドキソルビシンはアントラサイクリン系で総投与量に依存する心毒性が問題となります。ビンクリスチンは微小管阻害薬で末梢神経障害や便秘を起こしやすく、プレドニゾロンは副腎皮質ステロイドとして抗腫瘍効果と制吐作用を発揮します。リツキシマブは初回投与時にインフュージョンリアクション(発熱・悪寒・血圧変動・気管支痙攣など)を起こすことがあるため、投与速度の調整と慎重な観察が必要です。

化学療法の副作用と出現時期

CHOP療法の副作用は時系列で出現するため、看護師はその時期を理解して観察と説明を行います。

初日〜数日以内

投与直後から24時間以内に出現するのが急性悪心・嘔吐で、5-HT3受容体拮抗薬やデキサメタゾン、NK1受容体拮抗薬(アプレピタント)を用いて予防します。また、初回治療開始から12〜72時間以内に注意すべき重大な合併症が腫瘍崩壊症候群です。腫瘍量が多いリンパ腫では、化学療法によって腫瘍細胞が一気に崩壊し、細胞内成分が血中に放出されることで高カリウム血症、高リン血症、高尿酸血症、低カルシウム血症、急性腎障害をきたします。予防として十分な輸液(2〜3L/日)、尿量確保、アロプリノールやラスブリカーゼによる尿酸コントロールが行われます。

5〜14日目

治療後5〜10日ごろから口内炎が出現し、続いて7〜14日目には骨髄抑制による好中球減少・血小板減少が顕著になります。好中球減少時期は易感染状態となり発熱性好中球減少症のリスクがあるため、口腔ケア、手洗い、面会制限など感染予防の徹底が欠かせません。

2〜3週目以降

投与2〜3週目以降には脱毛が出現します。脱毛は治療終了後に再生しますが、ボディイメージへの影響が大きいためウィッグや帽子の準備、心理的支援が必要です。ビンクリスチンによる末梢神経障害は数週間後から出現し、しびれ・歩行障害・便秘として現れます。ドキソルビシンの心毒性は累積投与量に依存し、心エコーや心電図でのモニタリングが行われます。

化学療法誘発性悪心・嘔吐への対応

化学療法に伴う悪心・嘔吐(CINV)は発現時期で分類されます。投与後24時間以内の急性、24時間以降数日続く遅発性、そして治療を思い出すだけで誘発される予期性があり、加えて突出性・難治性も区別されます。予期性は条件付けによる心理的反応であり、前回治療で強い嘔吐を経験した患者ほどリスクが高くなります。 予期性を防ぐには、初回・前回の急性および遅発性悪心・嘔吐を確実に抑えることが最も重要であり、次回治療では治療開始前から制吐薬を予防的に投与します。リラクセーション法や抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)の併用も有効です。患者が「思い出すだけで気持ち悪くなる」と訴える場合は、すでに予期性が成立しかけているサインと捉え、次回の治療前から積極的に介入することが看護のポイントとなります。

まとめ

悪性リンパ腫はリンパ球由来の血液腫瘍で、無痛性のリンパ節腫脹を主症状とし、非ホジキンリンパ腫が大半を占めます。縦隔リンパ節腫大による上大静脈症候群では上肢・顔面・頸部の浮腫や呼吸困難に注意します。標準治療のCHOP療法(CD20陽性B細胞性ではR-CHOP療法)では、初日〜72時間以内の腫瘍崩壊症候群、5〜10日目の口内炎、7〜14日目の骨髄抑制、2〜3週目以降の脱毛と、副作用が時系列で出現します。悪心・嘔吐は急性・遅発性・予期性に分類され、前回の症状を踏まえて次回治療前から予防的に制吐薬を投与することが、患者の苦痛軽減と治療継続のために不可欠です。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    悪性リンパ腫はリンパ節やリンパ組織のリンパ球が腫瘍化する血液腫瘍で、ホジキンリンパ腫とに大別され、日本人ではそのほとんどが後者である。

  2. 2.

    縦隔リンパ節腫大により上大静脈が圧迫され、上肢・顔面・頸部の浮腫や頸静脈怒張、呼吸困難をきたす病態をという。

  3. 3.

    非ホジキンリンパ腫の標準的化学療法であるCHOP療法は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、、プレドニゾロンの4剤を組み合わせる多剤併用療法である。

  4. 4.

    CD20陽性のB細胞リンパ腫に対する第一選択治療では、CHOP療法に抗CD20抗体であるを併用するR-CHOP療法が用いられる。

  5. 5.

    腫瘍量の多い悪性リンパ腫で初回化学療法開始後12〜72時間以内に、腫瘍細胞の急激な崩壊により高カリウム血症・高尿酸血症・急性腎障害などをきたす合併症をという。

  6. 6.

    CHOP療法の副作用のうち、治療後7〜14日目に好中球減少や血小板減少として顕著になるのはである。

  7. 7.

    化学療法による悪心・嘔吐のうち、前回治療を思い出すだけで条件反射的に誘発されるものを悪心・嘔吐という。

  8. 8.

    前回の化学療法で強い悪心・嘔吐を経験した患者では予期性悪心・嘔吐のリスクが高いため、次回の治療では治療からの制吐薬の予防的投与が最も適切な対応となる。

  9. 9.

    CHOP療法に含まれるアントラサイクリン系薬剤であるドキソルビシンでは、累積投与量に依存するが問題となるため、心エコーや心電図でのモニタリングが行われる。

悪性リンパ腫と化学療法」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。