前立腺癌の補助療法と終末期看護
成人看護学 / がん・緩和・終末期
解説
今回は前立腺癌の補助療法と終末期看護について解説します。
前立腺癌の基礎
前立腺癌とは、男性の膀胱の直下にあり尿道を取り巻く前立腺に発生する悪性腫瘍です。高齢男性に多く、加齢とともに罹患率が上昇します。初期は無症状のことが多く、進行すると残尿感・夜間頻尿・排尿困難など下部尿路症状が出現します。診断には腫瘍マーカーである**PSA(前立腺特異抗原)**が用いられ、直腸診、経直腸的超音波検査、MRI、前立腺生検によって確定診断されます。前立腺癌は骨に転移しやすい特徴があり、特に腰椎・骨盤・大腿骨など体幹に近い骨への転移が多くみられます。
根治療法と補助療法
限局性の前立腺癌に対する根治療法には、根治的前立腺全摘除術と放射線療法があります。手術後に再発リスクを下げる目的で行われるのが補助療法で、放射線療法と内分泌(ホルモン)療法が中心となります。
ホルモン療法
前立腺癌はアンドロゲン(男性ホルモン)の刺激で増殖するアンドロゲン依存性の癌であるため、アンドロゲンの作用を遮断する**内分泌療法(ホルモン療法)**が有効です。LH-RHアゴニストやアンドロゲン受容体拮抗薬が用いられ、ほてり・性機能障害・骨粗鬆症などの副作用が生じます。
放射線外部照射の原則
放射線療法のうち体外から放射線を当てる方法を外部照射といいます。照射では病巣にミリ単位で線量を集中させる必要があるため、毎回同一の体位を厳密に再現することが大原則です。位置精度を保つために、患者の体型に合わせた固定具(バキュームバッグ、シェル、クッション等)が個別に作成されます。照射中は医療者の被曝を避けるため患者は一人で治療室に入りますが、マイクやモニターで常に観察されています。治療姿勢の苦痛や閉所恐怖、装置の駆動音への不安に対しては、固定具の工夫や事前のオリエンテーション、音楽の使用などで対応します。
放射線皮膚炎のケア
外部照射では、皮膚の細胞分裂が抑制されることで照射部位に放射線皮膚炎が生じます。発赤・乾燥・瘙痒感から、進行すると水疱・びらん・潰瘍にまで至ります。皮膚は機械的刺激に極めて弱くなっているため、ナイロンタオルでこすらない、熱い湯に長く浸からない、絆創膏やテープを貼らない、香料入り軟膏を自己判断で使わないといった指導が必要です。入浴では弱酸性石鹸を泡立て優しく洗い、押さえるように拭くことが基本です。皮膚に描かれたマーキングは位置合わせに必須なので自己消去しないよう伝えます。
終末期看護と家族ケア
前立腺癌が骨転移をきたした進行期では、激しい骨痛・倦怠感・食欲不振が出現します。患者が積極的治療を望まず緩和ケアを選択した場合、症状緩和と本人・家族の生活の質を支える看護が中心となります。
予期悲嘆と家族支援
余命の告知を受けた家族には、患者の死を予測する時点から悲嘆反応が現れ、これを予期悲嘆といいます。キューブラー・ロスの死の受容過程では、否認・怒り・取引・抑うつ・受容の段階を行き来しながら進むとされ、告知直後の家族はしばしば否認や混乱のなかにあります。看護師の最も基本的な関わりは、感情を表出できる安全な場を保障し、評価や励まし、結論を急がせずに傾聴することです。あわせて家族の食事や睡眠といった身体的休息を確保し、必要に応じて医師・医療ソーシャルワーカー・公認心理師など多職種と連携します。
まとめ
前立腺癌はアンドロゲン依存性で骨転移を起こしやすく、PSAが診断・経過観察に用いられます。術後の補助療法では放射線外部照射と内分泌療法が中心で、外部照射では同一体位の再現性と放射線皮膚炎の予防が重要です。骨転移を伴う終末期では緩和ケアによる疼痛コントロールが優先され、予期悲嘆のなかにある家族へは傾聴と感情表出の場の保障が看護の第一選択となります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
前立腺癌の診断や経過観察に用いられる、前立腺特異抗原と呼ばれる腫瘍マーカーをという。
- 2.
前立腺癌はアンドロゲンの刺激で増殖するため、その作用を遮断する補助療法をという。
- 3.
前立腺癌が最も転移しやすい部位はであり、腰椎や骨盤、大腿骨などへの転移によって疼痛が出現する。
- 4.
放射線外部照射では病巣に正確に線量を集中させるため、毎回を再現することが大原則となる。
- 5.
放射線治療中の姿勢保持による苦痛に対しては、患者個々に合わせたを工夫することで位置精度を保ちつつ苦痛を軽減できる。
- 6.
放射線外部照射で照射部位の皮膚に生じる発赤・乾燥・水疱などの有害事象をという。
- 7.
放射線照射部位の皮膚ケアでは、ナイロンタオルでこすらず、弱酸性石鹸の泡で優しく洗い、押さえるように拭くなど、皮膚をことが基本である。
- 8.
患者の死を予測する時点から家族に生じる悲嘆反応をという。
- 9.
キューブラー・ロスが提唱した死の受容過程は、否認・怒り・取引・抑うつ・の5段階からなる。
- 10.
余命告知直後で動揺する家族への第一選択の看護介入は、感情表出の場を保障しすることである。
