StudyNurse

片麻痺のAさんが安全に入浴するには?健側ルールとバスボード活用

看護師国家試験 第112回 午前 第71問 / 地域・在宅看護論 / 症状・疾患・治療に応じた看護

国試問題にチャレンジ

112回 午前 第71問

Aさん(70歳、男性、要介護1)は脳梗塞(cerebral infarction)の後遺症で左不全麻痺がある。家屋内は杖を使用して移動が可能である。Aさんから「入浴が不安なので安全な方法を教えてほしい」と訪問看護師に相談があった。 Aさんへの助言で適切なのはどれか。

  1. 1.手すりは左手で持つ。
  2. 2.左足から浴槽に入る。
  3. 3.浴室内を杖で移動する。
  4. 4.浴槽から出るときは入浴台<バスボード>を使う。

対話形式の解説

博士 博士

今回は在宅で暮らす70歳のAさん、左不全麻痺のある方の入浴指導の問題じゃ。まず押さえたいのは「健側と患側のどちらを先に動かすか」という基本原則じゃよ。

サクラ サクラ

片麻痺の方の動作って、健側から動かすんでしたっけ?患側から動かすんでしたっけ?いつも混乱します…。

博士 博士

覚え方は「脱健着患、動作は健側から」じゃ。服を脱ぐときは健側から、着るときは患側から。移動や浴槽の出入りなどの動作は健側から始めるのがルールじゃ。

サクラ サクラ

なるほど!Aさんは左麻痺だから、右が健側ですね。じゃあ手すりは右手、浴槽に入るときも右足から、ということですか?

博士 博士

その通りじゃ。健側の右手で手すりを握れば、万一バランスを崩しても体重を支えられる。浴槽に入るときも右足から入れれば、湯温の確認もできるし、浴槽内で踏ん張り足として機能する。

サクラ サクラ

でも浴室って滑りますよね。杖で移動したほうが安定しそうな気もしますが…。

博士 博士

そこが盲点じゃ。浴室の床は水と石けんで極めて滑りやすく、杖先のゴムがグリップしにくい。むしろ杖をつくことでバランスを崩す危険が増すのじゃ。浴室内は壁に固定された手すりを使うのが鉄則じゃよ。

サクラ サクラ

なるほど…。じゃあ正解の選択肢4のバスボードって何ですか?聞いたことはあるんですが、実物は見たことがなくて。

博士 博士

バスボードは浴槽の縁に橋のように渡して使う板状の椅子じゃ。いったんそこに腰かけてから、片脚ずつ浴槽に入れていく。つまり立位でまたぐ動作を、座位で横に脚を動かす動作に置き換えられるんじゃ。

サクラ サクラ

それなら片足立ちになる瞬間がないから、転倒リスクがぐっと下がりますね!

博士 博士

うむ、介護保険制度でも「特定福祉用具販売」の対象じゃから、年間10万円までの枠内で1割〜3割負担で購入できる。シャワーチェアや浴槽内いすも同様じゃ。

サクラ サクラ

福祉用具って介護保険でカバーされるんですね。手すりの取り付けなんかはどうなりますか?

博士 博士

手すり設置、段差解消、滑り止め床材への変更などは「住宅改修費」の対象で、20万円までの枠で支給される。訪問看護師は医療的なケアだけでなく、こうした制度や環境調整の提案も重要な役割じゃ。

サクラ サクラ

ケアマネジャーや理学療法士、福祉用具専門相談員とも連携していくんですね。多職種協働の視点が大事だと実感しました。

博士 博士

その通り。在宅看護では「生活の場に医療を届ける」という発想で、ADLと安全を両立させる工夫が求められるのじゃ。

POINT

片麻痺患者への入浴指導では、健側優位の動作原則と福祉用具・住環境整備の知識が不可欠です。手すりは健側の手で握り、浴槽への進入は健側の足から、浴室内の移動は杖ではなく固定された手すりを用いるのが基本です。バスボードは浴槽縁に架けて座位で出入りできる福祉用具で、片麻痺患者の立位でのまたぎ動作に伴う転倒リスクを大幅に減らせるため、今回のAさんには最も適切な助言となります。介護保険では特定福祉用具販売や住宅改修費として住まいの整備が制度的に支援されており、訪問看護師は身体ケアだけでなく、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員と連携した生活支援の視点を持つことが求められます。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:Aさん(70歳、男性、要介護1)は脳梗塞(cerebral infarction)の後遺症で左不全麻痺がある。家屋内は杖を使用して移動が可能である。Aさんから「入浴が不安なので安全な方法を教えてほしい」と訪問看護師に相談があった。 Aさんへの助言で適切なのはどれか。

解説:正解は 4 です。片麻痺のある高齢者にとって、浴槽の出入りは最も転倒リスクが高い動作の一つです。入浴台(バスボード)は浴槽の縁に渡して腰かけられる福祉用具で、いったん座った姿勢から健側の足、次に患側の足を順に動かして浴槽に出入りできるため、立位でまたぐ動作を避けられます。Aさんは左不全麻痺があり、濡れた浴室で片足立ちになる瞬間をなくすことが安全確保の要となるため、バスボードの使用が最も適切な助言となります。

選択肢考察

  1. × 1.  手すりは左手で持つ。

    Aさんの麻痺側は左上肢であり、力が入りにくく握力も低下している可能性が高い。手すりは健側である右手でしっかりと握り、体重を支える側として用いるのが原則である。

  2. × 2.  左足から浴槽に入る。

    片麻痺患者が浴槽をまたぐときは、健側の右足から先に入れる。健側で湯温や浴槽底の状態を確認し、踏ん張り足として体重を支えることで、患側を安全に引き入れることができる。患側から入れると支持が不安定となり転倒の危険が増す。

  3. × 3.  浴室内を杖で移動する。

    浴室の床は水や石けんで極めて滑りやすく、ゴム製の杖先でもグリップが効きにくい。杖は濡れた床では危険なため、浴室内では壁や床面に固定された手すりを用いて移動するよう指導する。

  4. 4.  浴槽から出るときは入浴台<バスボード>を使う。

    バスボードは浴槽の縁に架け渡して使用する座面付きの福祉用具である。浴槽の出入りを立位のまたぎ動作から座位での横移動に置き換えられるため、片麻痺のあるAさんでも安全に出入りが可能となる。介護保険の特定福祉用具販売の対象品目でもある。

片麻痺の基本原則として、移動・衣服の着脱・浴槽の出入りは「脱健着患」「健側から動作を始める」が鉄則である。浴室環境では滑り止めマット、シャワーチェア、L字型手すり、バスボード、浴槽内いすなどを組み合わせることで自立と安全の両立が図れる。介護保険では手すり・段差解消・滑り止め床材などが住宅改修費の対象、バスボードやシャワーチェアは特定福祉用具販売の対象となる。

左不全麻痺のある在宅高齢者への入浴指導で、片麻痺患者の動作原則と福祉用具の適正使用を理解しているかを問う問題。