ひとり暮らしの認知症高齢者を支える「一包化」という工夫
看護師国家試験 第114回 午前 第45問 / 地域・在宅看護論 / 症状・疾患・治療に応じた看護
国試問題にチャレンジ
Aさん(78歳、女性)は認知症(dementia)があり、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅰである。1人で暮らしており、かかりつけの医師から処方された複数の内服薬を1日3回服用している。嚥下障害はない。Aさんは「薬がたくさんあって、余る薬もあるのよ」と訪問看護師に話した。 このときの服薬管理で適切なのはどれか。
- 1.内服薬を一包化する。
- 2.薬剤の形状を変更する。
- 3.訪問看護師の訪問時に内服する。
- 4.複数の内服薬を1つの箱にまとめて保管する。
対話形式の解説
博士
今回は在宅看護の事例問題じゃ。Aさんは78歳、自立度Ⅰの認知症で独居、1日3回複数の薬を服用しておる。本人が「薬が余る」と訴えたら、まず何を疑う?
サクラ
飲み忘れか、飲み間違いですか?
博士
その通り。複数の薬を服薬時点ごとに仕分けする作業が負担になっておる可能性が高い。さて、どんな支援が考えられる?
サクラ
訪問看護師が毎回行って飲ませてあげる…じゃダメですか?
博士
気持ちはわかるが、1日3回毎日訪問するのは制度上も人員的にも無理じゃ。訪問看護は通常週数回、1回30〜90分が標準じゃからな。
サクラ
じゃあ薬の形を変えるとか?
博士
Aさんは嚥下障害がない。形状変更は飲み込み困難な人への対応で、認知症高齢者では「いつもの薬と違う」と混乱して逆効果になることもある。
サクラ
じゃあ箱にまとめて保管するのは?
博士
場所を決めるのは大事じゃが、複数のシートを箱に入れただけでは「今この時間に何を何錠飲むか」を判断する負担は変わらん。
サクラ
残るは一包化ですね。これは何ですか?
博士
朝・昼・夜・寝る前など服用時点ごとに、同時に飲む薬を1つの袋にまとめて調剤してもらう方法じゃ。袋には日付や服用時点を印字できる。
サクラ
それなら「朝の袋を開けて飲むだけ」でいいんですね。
博士
そうじゃ。自立度Ⅰの残存能力を活かしつつ、判断負担を最小化できる。医師の指示で薬剤師が対応してくれて、保険適用にもなる。
サクラ
さらに支援するならどんな方法がありますか?
博士
壁掛けの服薬カレンダーやお薬ボックスを併用すると、飲んだか飲んでないかが視覚的に分かる。訪問薬剤師による居宅療養管理指導を導入すれば、月数回の訪問で残薬チェックや服薬指導を受けられる。
サクラ
ポリファーマシーって聞いたことがあります。
博士
高齢者で6剤以上を併用すると有害事象や転倒のリスクが上がるという問題じゃ。Aさんの場合、医師に処方の見直しを依頼して薬剤数自体を減らすことも検討すべきじゃ。
サクラ
ケアマネジャーへの情報共有も大切ですね。
博士
その通り。看護師は気付いた残薬や生活状況を多職種に伝え、チームで支える視点が欠かせん。
POINT
認知症高齢者で独居かつ自立度Ⅰという比較的軽度のAさんに対しては、本人の残存能力を活かしながら服薬ミスを減らす支援が求められます。一包化は服用時点ごとに同時服用薬を1袋にまとめる方法で、薬の仕分け作業を不要にし、飲み忘れや重複服用を効果的に防ぎます。訪問看護師が毎回服薬に立ち会うことは現実的でなく、形状変更や箱への保管も根本的な解決にはなりません。さらに服薬カレンダー、訪問薬剤師による居宅療養管理指導、ポリファーマシー対策としての処方見直しなど、多職種連携によって在宅高齢者の安全な服薬を支える視点が、看護師には求められます。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:Aさん(78歳、女性)は認知症(dementia)があり、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅰである。1人で暮らしており、かかりつけの医師から処方された複数の内服薬を1日3回服用している。嚥下障害はない。Aさんは「薬がたくさんあって、余る薬もあるのよ」と訪問看護師に話した。 このときの服薬管理で適切なのはどれか。
解説:正解は 1 です。Aさんは認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅰ、つまり「何らかの認知症はあるが日常生活はほぼ自立」という比較的軽度の状態で、独居生活が可能なレベルにあります。一方で「薬が多くて余る」という訴えは、複数の薬剤を服薬時点ごとに仕分けする作業が負担となっていることを示唆します。内服薬を一包化(同じ服用時点の薬を1袋にまとめて調剤)すれば、1日3回各服用時点で1袋を取り出して服用するだけで済み、飲み忘れや飲み間違いが大幅に減ります。薬剤師に相談すれば医師の指示のもと一包化が可能で、自立度を維持しながら服薬アドヒアランスを向上させる現実的な支援となります。
選択肢考察
-
○ 1. 内服薬を一包化する。
複数の薬を服用時点ごとに1袋にまとめることで、薬の取り出しや仕分けの負担が減り、飲み忘れや重複服用を防げる。Aさんの認知機能と訴えに最も適した支援。
-
× 2. 薬剤の形状を変更する。
形状変更は嚥下障害がある場合の対応である。Aさんに嚥下障害はなく、形状を変えることは医師・薬剤師の判断を要し、また色や形で薬を識別している場合はかえって混乱を招く。
-
× 3. 訪問看護師の訪問時に内服する。
訪問看護は週数回、1回30〜90分が標準で、1日3回の服薬すべてに立ち会うことは現実的に不可能。Aさんの自立度Ⅰという残存能力も活かせない方法である。
-
× 4. 複数の内服薬を1つの箱にまとめて保管する。
複数のヒート(PTPシート)を1つの箱にまとめても、毎回どの薬を何錠飲むかの判断が必要であり、飲み間違いや過量服用のリスクは解消されない。
服薬支援のステップは①一包化、②服薬カレンダー(壁掛けやお薬ボックス)、③家族や訪問薬剤師による声かけ・確認、④服薬モニタリングとケアマネジャーへの情報共有、と段階的に強化していく。一包化には薬剤師による調剤手数料が発生するが、医師が必要性を認めれば保険適用となる。多剤併用(ポリファーマシー)の高齢者では、まず処方の見直しを医師に依頼し、6剤以上の薬剤を整理することも転倒・有害事象予防の観点で重要である。在宅患者訪問薬剤管理指導や居宅療養管理指導の活用も覚えておきたい。
認知症高齢者で独居・自立度Ⅰの軽度認知障害者に対する服薬管理支援として、残存能力を活かしつつ服薬ミスを減らす最適な方法を選択できるかを問う問題。
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