ボディメカニクスを体位変換に活かそう
看護師国家試験 第111回 午前 第38問 / 基礎看護学 / 日常生活援助技術
国試問題にチャレンジ
臥床患者の体位変換とボディメカニクスの原則との組合せで正しいのはどれか。
- 1.仰臥位から側臥位 ―――――― トルクの原理
- 2.仰臥位から長座位 ―――――― 摩擦力
- 3.ベッドの片側への水平移動 ―― 力のモーメント
- 4.ベッドの頭部への水平移動 ―― てこの第1種の原理
対話形式の解説
博士
今日は第111回看護師国家試験午前38問、ボディメカニクスと体位変換の組合せ問題じゃ。
アユム
ボディメカニクスって授業で習いましたが、トルクとかてことか、用語が混乱します。
博士
一つずつ整理していこう。ボディメカニクスは人体の骨格・関節・筋・神経の力学的関係を活用して、最小の力で安全に援助を行う技術じゃ。
アユム
選択肢の1、仰臥位から側臥位とトルクの原理はどうですか。
博士
これが正解じゃ。仰臥位から側臥位への体位変換では、患者の両膝を立てて両腕を胸の上で組み、身体を小さくまとめる。そして肩と腰を支点として回転させると、少ない力で側臥位にできる。これがトルクの原理じゃ。
アユム
なぜ身体を小さくまとめるんですか。
博士
回転半径が小さくなると、回転させるために必要な力(トルク)も小さくなるんじゃ。フィギュアスケートの選手がスピンする時、腕を縮めると回転が速くなるのと同じ原理じゃな。
アユム
なるほど、直感的にわかります。
博士
では他の選択肢も見ていこう。2の仰臥位から長座位と摩擦力の組合せは誤り。起き上がり動作はてこの原理、具体的には患者の肩を支点、骨盤を作用点、看護者の引く力を力点とするてこの第3種を使うぞ。
アユム
摩擦力は使わないんですね。
博士
むしろ摩擦はシーツと身体の間で抵抗となり、スライドボードやスライディングシートを使って摩擦を減らす工夫が必要じゃ。摩擦力は褥瘡リスクにもなるからな。
アユム
3のベッド片側への水平移動と力のモーメントは。
博士
水平移動では、患者を看護者の体に近づけることで力のモーメントを小さくする、というのは正しい考え方じゃ。しかし厳密にはこの組合せは不正確で、水平移動では摩擦力の軽減と看護者の重心移動を併用する。
アユム
4のベッド頭部への水平移動とてこの第1種は。
博士
これも誤り。てこの第1種は支点が力点と作用点の間にあるシーソー型で、くぎ抜きやハサミで使われる。頭部への水平移動には該当しない。
アユム
てこに種類があるんですね。
博士
うむ。第1種は支点が中央のシーソー型、第2種は作用点が中央の栓抜き型、第3種は力点が中央の箸型じゃ。身体動作では主に第3種が多く登場する。
アユム
ボディメカニクスの基本原則も教えてください。
博士
5つのポイントがあるぞ。支持基底面を広くする、重心を低く保つ、対象を自分に近づける、大きな筋群を使う、てこ・トルク・慣性を利用する。この5点セットは国試頻出じゃ。
アユム
腰痛予防にも大事ですね。
博士
そのとおり。腰を曲げず膝を使って低い姿勢で援助することが看護師自身の健康を守る基本じゃ。
POINT
仰臥位から側臥位への体位変換では、身体を小さくまとめ肩と腰を支点に回転させるトルクの原理を用います。起き上がりはてこの原理、水平移動では摩擦力を最小化する工夫が必要です。ボディメカニクス5原則を押さえて、患者にも看護師にも負担の少ない援助を心がけましょう。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:臥床患者の体位変換とボディメカニクスの原則との組合せで正しいのはどれか。
解説:正解は 1 です。ボディメカニクスは人体の骨格・関節・筋・神経の力学的関係を活用し、最小の力で安全に援助を行う技術です。仰臥位から側臥位への体位変換では、患者の両膝を立てて身体を小さくまとめ、肩と腰を支点として回転させるトルクの原理を活用します。トルクとは回転させる力で、身体を小さくまとめることで回転半径が小さくなり、少ない力で回転させることができます。
選択肢考察
-
○ 1. 仰臥位から側臥位 ―――――― トルクの原理
身体を小さくまとめて肩と腰を支点に回転させる体位変換は、回転力(トルク)を活用したトルクの原理の典型例です。
-
× 2. 仰臥位から長座位 ―――――― 摩擦力
仰臥位から長座位への起き上がりはてこの原理(てこの第3種)を利用します。摩擦力はむしろ体位変換の妨げとなる要素で、シーツ上の摩擦を減らす工夫が必要です。
-
× 3. ベッドの片側への水平移動 ―― 力のモーメント
水平移動では主に重心を看護者に近づけることで力のモーメントを小さくし摩擦力に抗する力を用います。組合せとしては不正確です。
-
× 4. ベッドの頭部への水平移動 ―― てこの第1種の原理
頭部への水平移動は水平方向の力移動で、てこの第1種(支点が力点と作用点の間)の原理は該当しません。てこはむしろ起き上がり動作などで活用されます。
ボディメカニクスの基本原則には、支持基底面を広くする、重心を低く保つ、対象を自分に近づける、大きな筋群を使う、てこ・トルク・慣性を利用するなどがあります。てこの第1種は支点が中央にあるシーソー型、第2種は重点が中央にある栓抜き型、第3種は力点が中央にある箸型で、身体動作ではそれぞれ異なる場面で使われます。腰痛予防のため、できるだけ腰を曲げず膝を使って低い姿勢で援助することが重要です。
体位変換時に用いる各ボディメカニクス原則の名称と具体的動作の組合せを正確に理解しているかを問う問題です。
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