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児童虐待統計の「心理的虐待急増」、その背景に何があるのか

看護師国家試験 第109回 午後 第59問 / 小児看護学 / 子どもと家族を取り巻く環境

国試問題にチャレンジ

109回 午後 第59問

平成 28 年度( 2016 年度)の福祉行政報告例における児童虐待で正しいのはどれか。

  1. 1.主たる虐待者は実父が最も多い。
  2. 2.性的虐待件数は身体的虐待件数より多い。
  3. 3.児童虐待相談件数は 5 年間横ばいである。
  4. 4.心理的虐待件数は 5 年前に比べて増加している。

対話形式の解説

博士 博士

今日は児童虐待統計の問題じゃ。平成28年度福祉行政報告例で正しいのはどれかね。

サクラ サクラ

うーん、児童虐待は増えていると聞きますが、具体的な数字は…

博士 博士

正解は4の「心理的虐待件数は5年前に比べて増加している」じゃ。実は5年で約3.7倍にも増えておる。

サクラ サクラ

3倍以上!どうしてそんなに増えたんですか?

博士 博士

大きな要因は「面前DV」の通告が進んだことじゃ。子どもの目の前で家族に暴力をふるう行為は子への心理的虐待にあたるとされ、警察から児童相談所への通告が急増した。

サクラ サクラ

面前DVが心理的虐待になるんですね。知りませんでした。

博士 博士

そう。子どもは直接暴力を受けなくても深刻な心理的ダメージを負う。この認識が広がり統計にも反映された。

サクラ サクラ

他の選択肢も確認させてください。1の主たる虐待者が実父というのは?

博士 博士

誤りじゃ。実母48.5%が最多で、実父38.9%は二番目。育児の中心にいる母親が加害者になる事例が多いのじゃ。ただし実父の割合は増加傾向じゃよ。

サクラ サクラ

2の性的虐待が身体的虐待より多い、は?

博士 博士

逆じゃ。身体的虐待31,925件に対し性的虐待1,622件。件数では最少じゃが、発見されにくく実数は統計以上と推測される深刻な問題じゃ。

サクラ サクラ

3の横ばいは?

博士 博士

全く逆で、児童虐待相談件数は統計開始以来増加し続けておる。平成28年度は前年比18.7%増、令和4年度には21万件を超えた。

サクラ サクラ

件数が増えている背景は何ですか?

博士 博士

実際の虐待が増えている面もあるが、社会の認識が高まり通告が増えた側面も大きい。どちらも事実で、支援体制の拡充が追いついていない現状じゃ。

サクラ サクラ

看護師にはどんな役割がありますか?

博士 博士

児童虐待防止法により「虐待を受けたと思われる児童を発見した者」は速やかに児相に通告する義務がある。医療現場では不自然な外傷、受診遅延、説明の矛盾、発達遅滞、健診未受診などが手がかりになる。

サクラ サクラ

通告って「確証がない」と戸惑いそうですが…

博士 博士

「思われる」で十分じゃ。確証は児相が調査して判断する。守秘義務より通告義務が優先されると明記されておる。

サクラ サクラ

小さなサインを見逃さないことが、子どもの命を守る第一歩なんですね。

博士 博士

その通り。統計を知ることは、目の前の子どもを守る感度を高めることにもつながるのじゃ。

POINT

平成28年度福祉行政報告例では児童相談所の虐待相談対応件数は122,575件、種別では心理的虐待63,186件が最多で、身体的虐待31,925件、ネグレクト25,842件、性的虐待1,622件と続きます。心理的虐待は5年前比約3.7倍に急増しており、面前DVが心理的虐待として警察から児相に通告されるようになったことが主因です。主な虐待者は実母が48.5%で最多、次いで実父38.9%。児童虐待件数は横ばいではなく増加の一途をたどっており、令和4年度には21万件を超えました。看護師は児童虐待防止法により「虐待を受けたと思われる児童」の通告義務を負い、不自然な外傷・受診遅延・養育者の説明矛盾など臨床現場のサインを逃さず関係機関と連携することが、子どもの命と発達を守る重要な役割となります。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:平成 28 年度( 2016 年度)の福祉行政報告例における児童虐待で正しいのはどれか。

解説:正解は4の「心理的虐待件数は5年前に比べて増加している」である。平成28年度福祉行政報告例によれば、全国の児童相談所における児童虐待相談対応件数は122,575件で前年度比18.7%増、種別は心理的虐待63,186件(構成比51.5%)、身体的虐待31,925件、ネグレクト25,842件、性的虐待1,622件となっている。5年前の平成23年度と比較すると心理的虐待は約3倍に急増しており、面前DV(子どもの前で家族に暴力)が警察から児相へ通告されるようになったことが大きな要因。主な虐待者は実母48.5%、実父38.9%で実母が最多、実父の割合は年々増加傾向にある。

選択肢考察

  1. × 1.  主たる虐待者は実父が最も多い。

    平成28年度データでは実母48.5%が最多、次いで実父38.9%。母親が主介護者・養育者となる家庭が多く育児ストレスの矛先が子に向かうことが背景にあるが、近年は実父の割合も徐々に増加している。

  2. × 2.  性的虐待件数は身体的虐待件数より多い。

    性的虐待1,622件に対し身体的虐待は31,925件で身体的虐待が大幅に多い。性的虐待は4種別の中で件数は最少だが、発見されにくく潜在化している点に注意が必要。

  3. × 3.  児童虐待相談件数は 5 年間横ばいである。

    相談対応件数は平成2年の統計開始以来一貫して増加し続けており、平成28年度は前年比18.7%増、5年前比では約2倍と急増している。横ばいではない。

  4. 4.  心理的虐待件数は 5 年前に比べて増加している。

    心理的虐待は平成23年度約17,000件から平成28年度63,186件へ約3.7倍に増加。面前DVが心理的虐待として警察から児相に通告されるようになったことが主因で、現在は構成比50%超で最多の虐待種別となっている。

児童虐待は1身体的虐待、2ネグレクト、3性的虐待、4心理的虐待の4種別に分類される。2019年時点でも相談件数は増加し続け、令和4年度には約21万9,000件に達している。通告者は警察からが最多で、心理的虐待の増加を牽引する。看護師は児童虐待防止法により「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに福祉事務所もしくは児童相談所へ通告しなければならない」義務を負う。医療現場での不自然な外傷、受診遅延、養育者の説明矛盾、発達遅滞、健診未受診なども虐待を疑うサインとなる。

児童虐待統計の経年変化を問う問題。心理的虐待が最多で急増中、主虐待者は実母、相談件数は増加傾向という三点を押さえる。