梅毒の病態と診断
健康支援と社会保障制度 / 感染症対策と予防
解説
今回は梅毒の病態と診断について解説します。梅毒は近年国内で患者数が急増しており、特に若年女性での増加が顕著なため、看護師国家試験でも頻出のテーマとなっています。病原体・感染経路・病期分類・血清診断・治療の流れを正しく理解しておく必要があります。
梅毒とは
梅毒とは、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)というスピロヘータ科の細菌を病原体とする全身性の性感染症です。ウイルスではなく細菌による感染症である点が国試で繰り返し問われています。主な感染経路は性的接触による粘膜・皮膚からの感染ですが、妊婦が感染している場合は胎盤を通じて胎児に伝わる経胎盤感染を起こし、先天梅毒の原因となります。輸血や注射針の共用による血液感染も起こり得ます。
感染症法上、梅毒は5類感染症に分類されており、診断した医師は7日以内に保健所へ全数届出を行う義務があります。届出基準を覚えておくことが国試対策上も重要です。
梅毒の臨床経過と病期分類
梅毒は感染後の時間経過に沿って症状が変化することが特徴で、第1期から第4期までの段階に分けられます。各病期で出現する所見は国試の頻出ポイントです。
第1期梅毒
感染後およそ3週間ほどで、トレポネーマが侵入した部位(外陰部・口腔・肛門など)に硬性下疳と呼ばれる無痛性の硬いしこりや潰瘍が出現します。同時に、所属リンパ節(鼠径部など)に無痛性のリンパ節腫脹を伴うのが特徴です。痛みを伴わないため患者が受診せず、自然に軽快してしまうため見逃されやすい段階です。
第2期梅毒
感染後およそ3か月で、菌が血流に乗って全身に広がり、皮膚や粘膜にさまざまな発疹が出現します。代表的なのがバラ疹(薔薇疹)で、淡紅色の小さな発疹が体幹を中心に手掌・足底を含めて全身に分布します。バラ疹は痛みやかゆみを伴わない点が大きな特徴で、他の発疹性疾患との鑑別に重要です。また、肛門周囲や陰部などの湿潤部位には扁平コンジローマと呼ばれる感染力の強い扁平な隆起性病変が現れます。
潜伏梅毒と晩期梅毒
第2期の症状もやがて消退し、無症候のまま経過する潜伏梅毒の時期に入ります。治療されないまま数年から数十年が経過すると、第3期で皮膚・粘膜・骨などにゴム腫と呼ばれる肉芽腫性病変が現れ、さらに第4期では大動脈炎などの心血管梅毒や、進行麻痺・脊髄癆などの神経梅毒へ進展します。現代では抗菌薬の普及により晩期梅毒の症例は減少していますが、未治療例では今でも問題となります。
梅毒の検査・診断
梅毒の確定診断には血清反応による抗体検査が用いられ、性質の異なる2種類の検査を組み合わせるのが原則です。
非特異的検査(脂質抗原検査)
RPR法やVDRL法は、カルジオリピンという脂質を抗原として用いる非特異的検査です。感染早期から陽性となり、抗体価が治療効果や活動性の指標となるため、治療経過のモニタリングに用いられます。しかし抗原が脂質であるため、妊娠・膠原病(SLEなど)・急性感染症・高齢などで梅毒に罹患していなくても陽性となる生物学的偽陽性を生じることがあります。妊婦健診のスクリーニングで偽陽性となる可能性があるという点は国試頻出です。
特異的検査(トレポネーマ抗原検査)
TPHA法やFTA-ABS法は、梅毒トレポネーマそのものを抗原として用いる特異的検査で、生物学的偽陽性が起こりにくく、診断確定に用いられます。一度陽性になると治療後も長く陽性が続くため、治療効果判定には適しません。
非特異的検査と特異的検査をクロスして評価することで、感染の有無・活動性・治癒過程を判断します。
治療と看護のポイント
梅毒の第一選択薬はペニシリンで、ベンジルペニシリンの筋肉内注射や経口アモキシシリンが用いられます。ペニシリンアレルギーがある場合はテトラサイクリン系などが代替薬となります。
治療開始から数時間以内に、菌体崩壊によって発熱・悪寒・頭痛・筋肉痛などをきたすJarisch-Herxheimer反応が出現することがあります。これは治療によって菌が一度に壊れることで起こる一過性の反応であり、治療を中止する必要はありませんが、患者が驚かないよう事前に十分説明しておくことが看護のポイントです。
また、妊娠初期に梅毒スクリーニング検査が法定的に行われており、妊婦が梅毒陽性と判明した場合は速やかにペニシリン治療を行うことで、先天梅毒の発症を予防できます。
まとめ
梅毒はトレポネーマというスピロヘータ細菌による5類感染症で、診断後7日以内に届け出が必要です。第1期では硬性下疳と無痛性リンパ節腫脹、第2期では手掌・足底を含む全身のバラ疹と扁平コンジローマが特徴的で、進行すればゴム腫や神経梅毒・心血管梅毒へ至ります。診断ではカルジオリピンを抗原とするRPR・VDRL(非特異的検査)と、トレポネーマを抗原とするTPHA・FTA-ABS(特異的検査)を組み合わせます。RPRでは妊娠や膠原病で生物学的偽陽性が出ること、治療はペニシリンが第一選択でJarisch-Herxheimer反応に注意することが、国試対策の重要ポイントとなります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
梅毒の病原体は、スピロヘータ科の細菌であるであり、ウイルスではなく細菌による感染症である。
- 2.
梅毒は感染症法上類感染症に分類され、診断した医師は7日以内に保健所へ全数届出を行う義務がある。
- 3.
第1期梅毒では、感染部位に無痛性の硬いしこりであると、無痛性のリンパ節腫脹が出現する。
- 4.
第2期梅毒で出現し、手掌・足底を含めて全身に分布する淡紅色の発疹をといい、痛みや痒みを伴わない。
- 5.
晩期梅毒の第3期では皮膚や骨などにと呼ばれる肉芽腫性病変が現れ、第4期では神経梅毒や心血管梅毒へ進展する。
- 6.
梅毒血清反応のうち、カルジオリピンを抗原とする非特異的検査には法やVDRL法があり、治療効果の判定に用いられる。
- 7.
RPRやVDRLなどの非特異的検査では、妊娠・膠原病・急性感染症などで梅毒に罹患していなくても陽性となるが生じることがある。
- 8.
梅毒トレポネーマそのものを抗原とする特異的検査には、TPHA法と法があり、診断確定に用いられる。
- 9.
梅毒の治療における第一選択薬はであり、ベンジルペニシリンの筋肉内注射や経口アモキシシリンが用いられる。
- 10.
梅毒治療開始数時間以内に、菌体崩壊によって発熱・悪寒・頭痛などをきたす一過性の反応をという。
