食品衛生と食中毒予防
健康支援と社会保障制度 / 感染症対策と予防
解説
食品衛生とは、食品が原因となる健康被害を防ぎ、安全な飲食を確保するための取り組みのことです。今回は食品衛生と食中毒予防について解説します。
食中毒の分類
食中毒とは、食品に含まれる病原微生物や有害物質を摂取することによって起こる健康被害のことをいいます。原因によって大きく細菌性食中毒、ウイルス性食中毒、自然毒食中毒、化学性食中毒、寄生虫性食中毒に分類されます。
細菌性食中毒はさらに、菌が体内で増殖して発症する感染型と、食品中で菌が産生した毒素を摂取して発症する毒素型に分けられます。感染型の代表はサルモネラ属菌、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌O157などです。毒素型の代表は黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌(嘔吐型)です。ウイルス性食中毒ではノロウイルスが冬季の集団食中毒の最大原因となっています。
自然毒には、フグのテトロドトキシン、毒キノコのアマトキシン、貝毒などがあります。
加熱で不活化できるもの・できないもの
食中毒予防の三原則は「つけない・増やさない・やっつける」です。このうち「やっつける」、すなわち加熱による殺菌が有効なのは、サルモネラ属菌・カンピロバクター・腸管出血性大腸菌O157などの生きた病原体に対してであり、原則として中心温度75℃以上で1分以上の加熱が推奨されます。ただしノロウイルスは耐熱性が比較的高く、85〜90℃で90秒以上の加熱が推奨されています。
一方で、加熱しても無効なものがあります。黄色ブドウ球菌が産生するエンテロトキシンは耐熱性が高く、通常の調理温度では失活しません。同様に、フグ毒(テトロドトキシン)や毒キノコの毒素などの自然毒も加熱では分解されません。したがってこれらの予防は、原因食品を摂取しないこと、調理者の手指衛生(化膿巣がある場合は調理を避ける)などが基本となります。
食品衛生に関する法律
食品安全行政は、リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションの3要素から構成されます。
食品衛生法
食品衛生法は、飲食に起因する衛生上の危害発生を防止し、国民の健康保護を図ることを目的とした法律です。食品・添加物・器具・容器包装の規格基準、販売・製造・輸入の規制、残留農薬のポジティブリスト制度、営業許可、食品表示の一部などを定めており、食品安全行政におけるリスク管理側の中核法規にあたります。所管は厚生労働省(一部消費者庁)です。2018年の改正によりHACCP(危害分析重要管理点方式)に沿った衛生管理が原則として全食品事業者に義務化されました。
食品安全基本法と食品安全委員会
食品安全基本法は、BSE(牛海綿状脳症)問題を契機として2003年に制定された法律です。この法律に基づいて内閣府に食品安全委員会が設置されました。食品安全委員会の役割は、科学的知見に基づいて中立公正に**リスク評価(食品健康影響評価)**を行うことです。実際のリスク管理(規制や監視)は厚生労働省・農林水産省・消費者庁が担当し、評価機関と管理機関を分離することで客観性を確保しています。
まとめ
食中毒は原因によって感染型・毒素型・ウイルス性・自然毒などに分類され、サルモネラなどの感染型は中心温度75℃以上1分以上の加熱で死滅しますが、黄色ブドウ球菌の毒素やフグ毒・毒キノコなどの自然毒は加熱しても無効である点が重要です。また食品衛生行政では、食品衛生法がリスク管理の中核を担い、食品安全基本法に基づき設置された食品安全委員会がリスク評価を担うという役割分担を理解しておきましょう。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
食中毒予防の三原則は「つけない・・やっつける」である。
- 2.
サルモネラ属菌などの感染型細菌性食中毒の予防には、中心温度℃以上で分以上の加熱が有効である。
- 3.
ノロウイルスを加熱で不活化するには、℃で秒以上の加熱が推奨される。
- 4.
黄色ブドウ球菌が産生する毒素であるは耐熱性が高く、通常の加熱では失活しない。
- 5.
フグの毒はと呼ばれ、加熱では分解されない自然毒である。
- 6.
飲食に起因する衛生上の危害発生防止を目的とし、食品の規格基準や営業許可などを定めている法律はである。
- 7.
2003年に制定され、食品安全委員会の設置根拠となっている法律はである。
- 8.
食品の健康影響評価(リスク評価)を中立公正に行う機関として内閣府に設置されているのはである。
- 9.
2018年の食品衛生法改正により、原則として全食品事業者に義務化された衛生管理手法はである。
