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ASDの看護と支援

精神看護学 / 発達・知的障害・その他

解説

自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder; ASD)とは、社会的コミュニケーションの困難さと、限定的・反復的な行動様式を中核症状とする神経発達症です。今回はASDの基本的な特徴と、看護師として行う支援について解説します。

ASDとは

ASDは発達早期から認められる神経発達症の一つです。かつては自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害などとして個別に分類されていましたが、DSM-5以降は症状の重症度や特性が連続して存在する一つの**スペクトラム(連続体)**として再編されました。知的発達や言語発達の程度は人によって大きく異なり、軽度の場合には成人になってから職場での不適応をきっかけに診断されることもあります。

中核症状

DSM-5では、ASDの中核症状を2つの領域でとらえます。

社会的コミュニケーションと対人相互反応の持続的欠陥

他者の気持ちや意図を読み取ることが苦手で、視線・表情・身振りなどの非言語的コミュニケーションが困難です。場の空気を読むこと、相手と関係性を築き維持することにも難しさを抱えます。

限定的・反復的な行動様式

決まった手順ややり方を変えられない同一性への固執、興味の対象が極端に狭い限定された興味、手をひらひらさせるなどの常同行動がみられます。さらに、音・光・触感などへの感覚過敏や、痛みや温度を感じにくい感覚鈍麻を伴うこともあります。

環境変化と二次障害

同一性への固執があるため、異動・引越し・人事の入れ替わりなどの環境変化はASDの人にとって大きな負荷となります。その結果、睡眠障害・食欲不振・無断欠勤・抑うつといった二次的な適応障害として顕在化することが少なくありません。一見すると単なるうつ症状にみえても、背景にASD特性があるかを丁寧にアセスメントすることが重要です。

入院初期の情報収集

休養を目的に任意入院となる場合があります。入院初期に侵襲的な質問を重ねると本人の負担が増すため、まずは最近1か月の睡眠・食事・日中の過ごし方・入浴・服薬状況といった生活面の負担の少ない情報から収集します。生活リズムを把握することで、本人の困りごとや疲弊の度合いを具体的に理解できます。

視覚優位性と構造化

ASDの多くの人は聴覚情報処理よりも視覚情報処理が得意です(視覚優位性)。口頭のみの説明では情報が流れて不安を助長しやすいため、予定や指示は文字・イラスト・スケジュール表で視覚的に提示します。情報が形として残り続けることで安心感が得られます。

この考え方を体系化したのが構造化(structured teaching)です。時間の構造化(スケジュール表)、空間の構造化(場所と役割の明確化)、視覚的構造化(写真・絵カード・文字)に分けられ、代表的なプログラムにTEACCHがあります。

予定変更への対応

急な予定変更は混乱の原因になります。やむを得ず変更する場合は、変更内容を早めに書面で示し、心の準備の時間を確保します。

混乱時のセルフケア

本人が混乱したときに備えて、刺激を遮断し静かな場所で過ごすクールダウン(タイムアウト)を取り入れます。場所・時間・使うアイテム・連絡する人をあらかじめ書面化した行動プランにしておくと、いざというときに本人が自分で動けます。

職場復帰支援と合理的配慮

二次障害から休職に至った場合は、早期介入(early intervention)を重視したリワーク支援を行います。2024年4月から民間企業でも義務化された合理的配慮として、休憩スペースの確保、予定変更の事前通知、指示の視覚化などを職場と調整します。ジョブコーチ制度の活用も有効です。

就労支援サービス

障害者総合支援法に基づく就労支援には次の種類があります。就労移行支援は一般就労を目指す訓練で原則2年。就労継続支援A型は雇用契約があり期間制限なし、就労継続支援B型は雇用契約がなく工賃制で期間制限なしです。就職後の継続を支える就労定着支援もあります。連携機関として**ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター(ナカポツ)**などが挙げられます。

併存する発達障害

発達障害は併存しやすく、ASDとADHDを併せもつ人も少なくありません。一人ひとりの特性プロファイルに応じた支援が必要です。支援技法としてはSST(社会生活技能訓練)、認知行動療法、環境調整、就労支援などが用いられます。

相談対応の基本

看護師は本人の訴え(憂うつさ、つらさ)を本人の言葉で丁寧に聞き取り、共感的に整理します。困りごとが具体化して初めて、問題焦点型・情動焦点型のストレスコーピングや環境調整を一緒に検討できます。

まとめ

ASDは社会的コミュニケーションの困難と限定的・反復的行動を中核とする神経発達症で、環境変化により二次障害を生じやすい特性があります。看護では、視覚優位性をふまえた構造化、予定変更の事前提示、クールダウンの行動プラン、合理的配慮や就労支援サービスの活用など、本人の強みと特性に合わせた具体的な支援を行うことが大切です。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    自閉スペクトラム症はDSM-以降、自閉症やアスペルガー症候群などが一つの連続体として再編された神経発達症である。

  2. 2.

    ASDの中核症状の一つは、社会的コミュニケーションとの持続的欠陥である。

  3. 3.

    もう一つの中核症状は限定的・反復的な行動様式であり、同一性への固執や、感覚過敏などが含まれる。

  4. 4.

    環境変化は同一性への固執により負荷となり、睡眠障害や抑うつなどの二次的なとして顕在化しやすい。

  5. 5.

    ASDの人は聴覚情報処理より情報処理が得意であり、予定はスケジュール表など視覚的に提示する。

  6. 6.

    時間・空間・視覚的構造化を体系化した代表的なプログラムはである。

  7. 7.

    混乱時に刺激を遮断し静かな場所で過ごすセルフケアを(タイムアウト)という。

  8. 8.

    障害者総合支援法に基づき、一般就労を目指して原則2年間訓練を受けられる制度はである。

  9. 9.

    雇用契約を結ばずに工賃を得ながら作業を行うのは就労継続支援型である。

  10. 10.

    2024年4月から民間企業でも義務化された、障害特性に応じた配慮をという。

ASDの看護と支援」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。