身体拘束中の看護
精神看護学 / 精神科入院・法制度・拘束
解説
身体拘束とは、患者の身体の動きを物理的に制限する医療行為のことです。今回は身体拘束中の看護について解説します。
身体拘束の法的位置づけと三要件
精神科病院における身体拘束は、精神保健福祉法第37条に基づく行動制限の一つであり、精神保健指定医の診察と指示がなければ実施できません。実施にあたっては、(1)切迫性(自傷他害の危険が著しく高い)、(2)非代替性(拘束以外に代わる方法がない)、(3)一時性(必要最小限の時間にとどめる)という三要件をすべて満たす必要があります。拘束は患者の人権を制限する例外的措置であり、解除に向けた評価を継続的に行うことが求められます。
拘束には、ベルトや抑制帯などで身体を直接固定する身体的拘束(フィジカルロック)、過剰な向精神薬で動きを抑える薬物による拘束(ドラッグロック)、言葉で行動を制止するスピーチロックの三種類があります。
身体拘束中に起こりやすい合併症
身体拘束で最も警戒すべき致死的合併症は肺血栓塞栓症です。四肢の運動が長時間制限されると、下肢の深部静脈で血流がうっ滞し深部静脈血栓症が形成されます。この血栓が遊離して肺動脈を閉塞すると、突然の呼吸困難、胸痛、低酸素血症、ショックを来し、心停止に至ることもあります。特に拘束解除直後の体動時に発症しやすいため注意が必要です。
そのほか、関節拘縮、褥瘡、誤嚥性肺炎、せん妄、脱水、筋力低下なども生じやすい合併症です。
拘束中の看護の実際
合併症予防のために、定期的な体位変換、四肢の関節可動域訓練、弾性ストッキングや間欠的空気圧迫装置(フットポンプ)の装着、十分な水分補給、Dダイマーなど凝固系の評価を行います。皮膚の観察、循環状態の確認、バイタルサインのモニタリングも欠かせません。そして何よりも、最短期間で解除できるよう日々アセスメントを行うことが看護の基本です。
攻撃性の高い患者への対応
拘束を回避するためには、興奮した患者を落ち着かせるディエスカレーションと呼ばれる沈静化技法が重要です。看護師は動作をゆっくり少なくし、低く落ち着いた声で穏やかに接します。腕2本分程度の安全距離を保ち、刺激の少ない環境を整え、開かれた質問で感情を言語化させることが基本となります。暴力のおそれがある場合は一人で対応せず、複数人で応援を要請します。
まとめ
身体拘束は精神保健指定医の指示のもと、切迫性・非代替性・一時性の三要件を満たす場合にのみ行われる例外的措置です。看護師は深部静脈血栓症から肺血栓塞栓症への移行を防ぐため、運動・循環管理を徹底し、最短での解除を目指す視点を忘れずに関わることが大切です。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
精神科病院における身体拘束は、第37条に基づき、の指示で実施される。
- 2.
身体拘束を行うための三要件は、切迫性・・である。
- 3.
身体拘束中に最も警戒すべき致死的合併症はであり、その原因となるのは下肢のである。
- 4.
深部静脈血栓症の予防として、弾性ストッキングや(フットポンプ)の使用、十分な水分補給を行う。
- 5.
言葉で患者の行動を制止する拘束をといい、過剰な向精神薬による拘束をという。
- 6.
攻撃性が高まった患者を言葉や態度で沈静化させる技法をという。
- 7.
攻撃性の高い患者に接する際は、動作を少なくし、威圧感を与えない穏やかな態度で接する。
