高齢妊婦の活動と下肢変化
母性看護学 / 妊娠合併症・異常妊娠
解説
今回は高齢妊婦の活動と下肢に生じる変化について解説します。
高齢妊娠とは
高齢妊娠とは、35歳以上の初産婦による妊娠を指し、高年初産ともよばれます。年齢が上がるにつれて、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、流早産、児の染色体異常などの合併症リスクが上昇することが知られています。一方で、適切な妊婦健診と周産期管理によって、安全な妊娠・出産を遂げることは十分に可能です。 看護学生がまず押さえておきたいのは、「高齢妊娠=終日安静にすべき」という考えは誤りであるという点です。過度な安静はかえって体重増加、深部静脈血栓症、気分の落ち込み、体力低下を招き、分娩や産褥の経過にも悪影響を及ぼします。合併症がない高齢妊婦に対しては、年齢のみを理由に活動を制限せず、適切な運動を勧めることが大切です。
妊娠中の運動と安定期
妊娠16週ごろになると胎盤が完成し、つわりも落ち着いてくるため、この時期は安定期の入り口とよばれます。安定期以降は、合併症がなければ中等度の有酸素運動を週150分程度行うことが推奨されています。運動には体重管理、耐糖能の改善、気分の安定、分娩に向けた体力維持といった効果があります。 安全に行える運動としては、ウォーキング、水中運動、マタニティヨガ、固定式自転車などがあげられます。逆に避けるべき運動は、転倒の危険が高いもの、相手と接触するスポーツ、長時間の仰臥位姿勢を伴うもの、潜水や高所など気圧変動を伴うものです。高齢妊婦であっても、合併症がなければこの基本方針は変わりません。
妊娠中の生理的変化
妊娠中は胎児への酸素・栄養供給を支えるために、循環動態が大きく変化します。なかでも特徴的なのが、循環血漿量が約40〜50%増加することです。赤血球量も増えますが、その増加は20〜30%程度にとどまるため、血液は相対的に希釈された状態になります。その結果、ヘモグロビン(Hb)とヘマトクリット(Ht)の値は生理的に低下します。 さらに、胎児の造血や胎盤形成のために鉄の需要が増加するため、鉄欠乏性貧血も合併しやすくなります。
妊娠性貧血の基準と看護
妊娠性貧血の診断基準は、Hb 11.0g/dL未満またはHt 33.0%未満です。この値は国試で頻繁に問われるため、必ず暗記してください。看護では、医師の指示による鉄剤の内服のほか、鉄分やタンパク質、ビタミンCを豊富に含む食事の指導を行います。
その他の妊娠中の基準値
妊娠高血圧症候群は、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上で診断されます。妊娠糖尿病は、75g経口ブドウ糖負荷試験で、空腹時92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のいずれかを満たす場合に診断されます。 妊娠中の体重増加の目安は、非妊時のBMIにより異なり、低体重では12〜15kg、普通体重では10〜13kg、肥満1度では7〜10kgとされています。
妊娠後期の下肢静脈瘤
妊娠後期にみられる代表的なマイナートラブルが下肢静脈瘤です。妊婦の約30〜40%に出現するとされ、特に高齢妊婦では血管壁の弾性低下も加わり起こりやすくなります。 発生の機序は、第一に増大した子宮が下大静脈や腸骨静脈を機械的に圧迫し、下肢からの静脈還流を妨げること、第二に循環血液量が非妊時の1.3〜1.5倍に増加していること、第三にエストロゲンやプロゲステロンの作用で静脈壁が弛緩することがあげられます。これに遺伝的素因が加わることもあります。 症状は、夕方になると下肢がだるく重く感じる、膝の裏や下腿に青く蛇行した血管が浮き出るといったものです。
看護とセルフケア
下肢静脈瘤への対応の基本は、静脈還流を促進することです。最も重要なのが弾性ストッキングの着用で、下肢を外部から段階的に圧迫することで静脈の還流を助けます。また、下大静脈の圧迫を避けるために左側臥位(シムス位)で休む、就寝時にクッションなどで下肢を挙上する、適度に歩いてふくらはぎの筋ポンプを働かせる、長時間の立位や同一姿勢を避けるといった指導を行います。下肢静脈瘤の多くは産後に自然軽減しますが、改善しない場合は血管外科での治療が検討されます。
まとめ
高齢妊娠は合併症のリスクが高まる一方、年齢のみを理由に活動を制限する必要はなく、安定期以降は中等度の有酸素運動が推奨されます。妊娠中は循環血漿量が40〜50%増加して血液希釈が起こり、Hb 11.0g/dL未満またはHt 33.0%未満で妊娠性貧血と診断されます。妊娠後期には子宮による静脈圧迫やホルモンの影響で下肢静脈瘤が生じやすく、弾性ストッキング、左側臥位、下肢挙上、適度な歩行といったセルフケアが有効です。これらの基準値と看護援助を結びつけて覚えることが、国試対策のポイントとなります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
初産婦のうち、分娩時の年齢が歳以上のものを高齢妊娠(高年初産)という。
- 2.
合併症のない妊婦に対しては、安定期以降に中等度の有酸素運動を週分程度行うことが推奨されている。
- 3.
妊娠中は循環血漿量が約%増加するのに対し、赤血球量の増加は20〜30%にとどまるため、生理的に血液が希釈される。
- 4.
妊娠性貧血は、ヘモグロビンg/dL未満またはヘマトクリット33.0%未満で診断される。
- 5.
妊娠性貧血の診断基準のうち、ヘマトクリット値は%未満である。
- 6.
妊娠後期に増大した子宮が下大静脈や腸骨静脈を圧迫し、下肢の静脈還流が妨げられることなどで生じるマイナートラブルをという。
- 7.
下肢静脈瘤の予防・対策として、下肢を外部から段階的に圧迫し静脈還流を促進する目的でを着用する。
- 8.
妊婦が休息する際には、下大静脈の圧迫を避けるために(シムス位)をとることが推奨される。
