愛着と分離不安
小児看護学 / 小児の心理発達・権利・社会
解説
愛着とは、乳児が特定の養育者との間に築く情緒的な結びつきのことであり、その後の心身の発達や対人関係の基盤となる重要な現象です。今回は愛着と分離不安について解説します。
愛着(アタッチメント)の概念
愛着(アタッチメント)は、英国の精神科医**ボウルビィ(Bowlby)**によって提唱された概念で、乳児が危険や不安を感じたときに特定の人物に近づき、安心を得ようとする生得的な傾向を指します。愛着は単なる愛情ではなく、子どもの生存を保障し、健全な情緒発達・社会性発達を支える基盤となるものです。エリクソンの発達段階では、乳児期の課題は「基本的信頼 対 不信」であり、養育者との安定した愛着形成がこの信頼感の獲得につながります。
乳児期の社会性発達の流れ
乳児の社会性は段階的に発達します。生後3か月頃には、相手を特定せず誰に対しても笑いかける社会的微笑がみられます。生後6〜8か月頃になると、見慣れない人を警戒する人見知りや、養育者から離れると泣く分離不安、養育者を追いかける後追いが出現します。これらは一見困った行動に見えますが、特定の養育者への愛着が形成された証であり、健康な発達のサインです。1歳前後には養育者を心の拠り所とする安全基地行動がみられ、1歳半頃にピアジェのいう対象の永続性が確立すると、養育者の姿が見えなくても存在を理解できるようになり、分離不安は徐々に軽減していきます。
ボウルビィの愛着発達4段階
ボウルビィは愛着の発達を4段階で示しました。第1段階は前愛着段階(0〜2か月)で、誰に対しても同じように反応します。第2段階は愛着形成段階(2〜6か月)で、養育者と他者を区別し始めます。第3段階は明確なアタッチメント段階(6か月〜2歳)で、特定の養育者を強く求め、人見知りや分離不安、後追いが顕著に現れます。第4段階は目標修正的協調関係段階(2歳以降)で、養育者の意図や感情を理解し、協調した関係を築けるようになります。
エインスワースの愛着パターン分類
エインスワース(Ainsworth)はストレンジ・シチュエーション法という実験的観察法を用い、1歳児の愛着の質を4つに分類しました。安定型は養育者を安全基地として活発に探索し、再会時にすぐ安心します。回避型は分離・再会に無関心な様子を示します。**アンビバレント型(抵抗型)**は分離時に激しく泣き、再会時も慰めにくい両価的な反応を示します。無秩序・無方向型は一貫性のない反応を示し、被虐待児に多くみられます。
関連理論とホスピタリズム
マーラーは乳幼児の心理発達を自閉期・共生期・分離個体化期として説明しました。一方、スピッツのホスピタリズムは、施設収容などで母性的養育が剥奪されると、身体的・情緒的・知的発達に遅延が生じることを指摘した概念です。これらは愛着形成の重要性を裏づけています。
看護への応用
乳幼児の入院は母子分離を強いる場面となり、分離不安を強く引き起こします。看護では、年齢に応じたプレパレーションを行い、可能な限り家族の付き添いを促し、自宅で使っているリネンや玩具を持ち込んで安心感を保つ工夫が求められます。
まとめ
愛着は乳児の心身の発達の基盤であり、人見知りや分離不安は健全な愛着形成を示す重要なサインです。発達段階と愛着パターンを理解し、入院などの場面では子どもの不安を最小限にする看護援助が必要です。
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- 1.
乳児が特定の養育者との間に築く情緒的な結びつきをといい、これは英国の精神科医によって提唱されました。
- 2.
生後3か月頃には誰に対しても笑いかけるがみられ、生後6〜8か月頃にはや分離不安、後追いが出現します。
- 3.
エリクソンの発達段階において、乳児期の心理社会的課題は「 対 不信」です。また、ピアジェが提唱した、対象が見えなくても存在し続けることを理解する概念をといいます。
- 4.
エインスワースは法を用いて、愛着の質を安定型、回避型、、無秩序・無方向型の4つに分類しました。
- 5.
分離不安のピークは歳前後にみられ、養育者を心の拠り所として探索行動を行う場としての役割をといいます。
- 6.
施設収容などにより母性的養育が剥奪された結果、心身の発達に遅延が生じる現象を、スピッツはと呼びました。
- 7.
ボウルビィの愛着発達4段階のうち、特定の養育者を強く求め、人見知りや分離不安が顕著にみられる6か月〜2歳の段階を段階といいます。
- 8.
乳幼児の入院時には、年齢に応じた説明であるを行い、可能な限りを促すことで分離不安の軽減を図ります。
