急性糸球体腎炎
小児看護学 / 小児腎・内分泌・代謝系
解説
急性糸球体腎炎とは、糸球体に急性の炎症が起こり、血尿・浮腫・高血圧などの症状を引き起こす腎疾患の総称です。今回は、その代表である**溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)**について解説します。学童期に好発し、小児科や腎臓内科の看護で頻出するテーマであるため、原因・症状・検査・治療・看護をひとつずつ整理して理解していきましょう。
病態と原因
溶連菌感染後急性糸球体腎炎は、A群β溶血性連鎖球菌による上気道感染(咽頭炎・扁桃炎)や皮膚感染の1〜3週間後に発症する糸球体腎炎です。溶連菌そのものが腎臓を直接攻撃するのではなく、菌に対してつくられた抗体と菌の抗原が結合した「免疫複合体」が糸球体の毛細血管壁に沈着し、補体を活性化して炎症を起こします。これはアレルギー反応の分類でいうと**III型アレルギー(免疫複合体型)**にあたります。
好発年齢は学童期(おおむね5〜12歳)で、性別では男児にやや多く、季節としては溶連菌感染が流行する晩秋から冬に発症が増えます。
三主徴と臨床症状
本疾患の三主徴は、血尿・浮腫・高血圧です。血尿は紅茶色やコーラ色と表現される肉眼的血尿として現れることが多く、家族が「尿の色が変だ」と気づいて受診するきっかけになります。浮腫は朝の起床時に目立つ両眼瞼浮腫(まぶたのむくみ)から始まり、進行すると下肢や全身に及びます。高血圧は循環血漿量の増加(体液貯留)によって生じます。これら三主徴に加え、糸球体障害による蛋白尿や、糸球体濾過量低下による乏尿を伴うことがあります。
検査所見
血液検査では、溶連菌感染の証拠としてASO(抗ストレプトリジンO抗体)やASK(抗ストレプトキナーゼ抗体)が上昇します。免疫複合体により補体が消費されるため、補体C3が低下するのが特徴的所見です。C3低下は通常6〜8週で正常化します。尿検査では尿潜血と蛋白尿を認め、円柱が出現することもあります。腎機能を反映して血清クレアチニンや尿素窒素(BUN)が上昇する場合もあります。
治療
治療の基本は対症療法です。急性期は安静臥床とし、腎血流を保ちつつ心負荷を軽減します。食事療法として塩分制限と浮腫・乏尿時の水分制限を行い、腎機能低下が著しい場合には蛋白制限を追加します。高血圧に対しては降圧薬を用い、体液貯留を伴うためループ利尿薬や、血管拡張作用のあるカルシウム拮抗薬が選択されます。原因菌が残存している場合にはペニシリン系抗菌薬を投与します。
予後と合併症
小児の予後は良好で、90%以上が完治しますが、症状の改善や検査値の正常化までには数か月を要します。注意すべき重大合併症には高血圧脳症、急性心不全、肺水腫があります。高血圧脳症は急激な血圧上昇により脳血流の自動調節能が破綻し、脳浮腫を生じる病態で、頭痛・嘔気・嘔吐・視力障害・けいれん・意識障害を呈します。早期に降圧を図らないと重篤な後遺症を残すため、急性期の血圧管理がきわめて重要です。
なお小児の正常血圧の目安として、学童期では収縮期血圧が概ね120〜130mmHgを超えると高値とされ、8歳前後の児童で持続的に120mmHgを超える場合には高血圧として対応が必要になります。
急性期の看護
看護では1日3回以上の血圧測定を行い、急激な上昇を見逃さないことが重要です。高血圧脳症の徴候を早期に察知するため、意識レベル(JCS・GCS)、瞳孔所見、けいれんの有無を継続的に観察します。体液管理としてin/outバランス(飲水量・点滴量と尿量)と毎日の体重測定を行い、浮腫の増減を評価します。安静の保持、塩分・水分制限の遵守を子どもが理解できるよう、発達段階に応じた説明を心がけます。
学童期の心理社会的支援
長期入院となる学童には心理社会的支援が欠かせません。エリクソンの発達課題において学童期は勤勉性 対 劣等感の時期であり、学習や仲間との活動を通して達成感を得ることが課題です。安静が必要でも、ベッドサイドでできる学習や遊びを工夫し、可能であればプレイルームへの移動や**チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)**との連携を図ります。家族の不安にも寄り添い、退院後の生活指導まで含めた支援を行います。
まとめ
急性糸球体腎炎、特に溶連菌感染後急性糸球体腎炎は、A群β溶血性連鎖球菌による上気道感染の1〜3週間後に発症する免疫複合体型の腎炎です。血尿・浮腫・高血圧の三主徴、ASO上昇と補体C3低下という検査所見、安静と塩分制限を中心とした治療を押さえましょう。高血圧脳症などの重大合併症を予防するための血圧・意識レベルの観察と、学童期の発達課題に基づいた心理社会的支援が看護の要となります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
溶連菌感染後急性糸球体腎炎の原因菌はである。
- 2.
溶連菌感染後急性糸球体腎炎は、上気道感染から後に発症する。
- 3.
急性糸球体腎炎の三主徴は、血尿・・である。
- 4.
溶連菌感染後急性糸球体腎炎は、アレルギー反応の分類では(免疫複合体型)アレルギーに分類される。
- 5.
急性糸球体腎炎では、免疫複合体による消費のため血清補体が低下する。
- 6.
急性糸球体腎炎の急激な血圧上昇により脳血流自動調節能が破綻して脳浮腫を生じ、頭痛・嘔吐・けいれん・意識障害をきたす重大合併症をという。
- 7.
急性糸球体腎炎の急性期の治療では、腎血流の保持と心負荷軽減のためとし、塩分・水分制限を行う。
- 8.
エリクソンの発達課題において、学童期の課題は対劣等感である。
- 9.
溶連菌感染の既往を示す血清抗体として、(抗ストレプトリジンO抗体)の上昇が確認される。
