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RSウイルス急性細気管支炎

小児看護学 / 小児循環器・呼吸器・その他

解説

今回はRSウイルスによる急性細気管支炎について解説します。乳児の冬季呼吸器感染症の代表であり、看護師国家試験では症状の見極め、酸素療法、脱水評価、家庭でのケア指導まで幅広く問われます。

RSウイルスと細気管支炎の基礎

RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、エンベロープを持つRNAウイルスで、毎年秋から冬にかけて流行する代表的な呼吸器ウイルスです。2歳までにほぼ100%の小児が初感染するといわれるほど感染力が強く、飛沫感染と接触感染の両方で広がります。年長児や成人ではただの感冒で済むことが多い一方、生後6か月未満の乳児、早産児、低出生体重児、先天性心疾患や慢性肺疾患をもつ児では重症化しやすいことが特徴です。 細気管支とは、気管支がさらに枝分かれした内径2mm以下の細い気道のことです。乳児ではもともとこの細気管支の径が小さいため、ウイルス感染による粘膜の浮腫や分泌物の貯留、上皮細胞の壊死が起こると、わずかな腫れでも内腔が容易に閉塞してしまいます。これが急性細気管支炎の本質的な病態であり、呼気時に空気が出にくくなることで肺の過膨張と換気血流不均衡が生じ、低酸素血症を招きます。

臨床症状と重症度の判断

発症初期は鼻汁、咳嗽、軽度の発熱といった上気道炎症状から始まり、2〜3日経過すると下気道に病変が広がって喘鳴(ぜん鳴)、多呼吸、陥没呼吸、鼻翼呼吸、呻吟(しんぎん)などの呼吸窮迫症状が現れます。聴診では呼気の延長、笛声音(ウィーズ)、水泡音(コースクラックル)を聴取することが多くなります。 重症化のサインとして看護師が必ず把握すべきなのは、SpO2低下(おおむね92%未満)、多呼吸(乳児で60回/分以上)、頻脈、口唇や顔色の不良(チアノーゼ)、哺乳量の著明な低下、無呼吸発作です。乳児では呼吸予備能が小さく、これらの徴候は急速に進行して呼吸不全に至るため、入院適応の重要な目安となります。動脈血液ガス分析では低酸素血症が先行し、進行するとPaCO2の上昇も見られます。

治療と看護のポイント

酸素療法と気道管理

RSウイルス感染症には有効な抗ウイルス薬は通常使用しません。治療の中心は対症療法であり、呼吸状態の安定化と脱水の補正が二本柱となります。低酸素血症がある場合は、経鼻カニューラ、フェイスマスク、酸素テント、ハイフローネーザルカニューラ(HFNC)などで酸素投与を行います。SpO2 90%前後で口唇色や顔色が不良な乳児では、まず酸素吸入器の準備が最優先となります。 気道分泌物の管理も重要で、乳児は鼻呼吸が主であるため鼻閉が哺乳困難の直接の原因になります。哺乳前の鼻腔吸引は気道を確保するだけでなく哺乳量の維持にもつながる基本的なケアです。去痰薬の吸入と口腔・鼻腔の吸引を組み合わせ、痰の喀出を促します。聴診で特定の肺区域の呼吸音が減弱している場合は、その区域に痰が貯留していると推定し、体位ドレナージを行います。基本原則は「貯留部位を高く、排出口(中枢気道)を低く」で、たとえば右上葉に痰がある場合は右肺を上にする左側臥位を選択します。

脱水の評価と輸液管理

細気管支炎の乳児は、発熱と多呼吸による不感蒸泄の増加、哺乳量の低下、嘔吐などが重なって容易に脱水を起こします。看護師は皮膚ツルゴール(弾性)の低下、口腔粘膜の乾燥、大泉門の陥凹、流涙の消失、毛細血管再充満時間の延長、活気の低下、そして尿量の減少を総合的に評価します。なかでも尿量は循環血液量と腎還流を反映する鋭敏な指標であり、最終排尿時刻の確認や、おむつの重さ・湿り具合の観察が最優先となります。乳児の正常尿量はおおむね2mL/kg/時で、1mL/kg/時を下回ると乏尿と判断します。経口摂取が困難な場合は点滴による輸液を行い、IN/OUTバランスを把握しながら脱水を補正します。

家庭でのケアときょうだい児への配慮

軽症で外来管理となる場合の家庭ケア指導では、頻回少量の水分補給、加湿、頭部挙上姿勢、そして哺乳前の鼻吸引が要点です。さらに、陥没呼吸、鼻翼呼吸、呻吟、SpO2低下、哺乳量と尿量の減少などの重症化サインを保護者に伝え、出現時は速やかに受診するよう指導します。 乳児が入院することで上のきょうだいに退行現象(赤ちゃん返り、かんしゃく、夜尿、指しゃぶりなど)が見られることがあります。これは母親との分離や環境変化に伴うストレス反応であり、退院後に親子で触れ合う特別な時間を意識的に確保し、甘えを受け止めることが対応の基本です。

まとめ

RSウイルスによる急性細気管支炎は、乳児で重症化しやすい代表的な下気道感染症です。病態の中心は細気管支の浮腫と分泌物貯留による気道閉塞で、低酸素血症と脱水が二大合併症となります。看護の優先順位は、まず酸素療法による低酸素血症の是正、次いで尿量を含む脱水評価と輸液管理、さらに鼻腔吸引と体位ドレナージによる気道クリアランスの維持です。家庭ケアでは鼻吸引と重症化サインの観察を保護者に指導し、入院に伴うきょうだい児の退行現象にも目を向けることが、患児と家族を包括的に支える看護として求められます。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    乳児で重症化しやすい冬季流行性の呼吸器ウイルスで、2歳までにほぼ全員が初感染するのはである。

  2. 2.

    内径2mm以下の細い気道に炎症が及び、粘膜浮腫と分泌物貯留により呼気時の気道閉塞をきたす乳児の代表的下気道感染症をという。

  3. 3.

    RSウイルス感染症の治療は対症療法が中心で、特異的なは通常使用しない。

  4. 4.

    SpO2 88%、口唇色不良の乳児に対して最優先で準備すべき物品はである。

  5. 5.

    点滴中の乳児で皮膚弾性の低下と活気不良がみられた場合、呼吸状態と併せて観察する優先度の高い項目はである。

  6. 6.

    聴診で右上葉の呼吸音が減弱している乳児では、貯留部位を高くする原則に基づきをとって体位ドレナージを行う。

  7. 7.

    鼻呼吸が主である乳児では鼻閉が哺乳困難の直接原因となるため、家庭ケアでは哺乳前にを行うよう指導する。

  8. 8.

    経口摂取不良の乳児で脱水評価に最も直結する情報として、最終の把握が最優先となる。

  9. 9.

    妹の入院に伴い3歳児にかんしゃくや赤ちゃん返りなどがみられる現象をといい、退院後は親子で触れ合う特別な時間を確保することが基本対応となる。

RSウイルス急性細気管支炎」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。