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災害後の小児心理ケア

小児看護学 / 小児の心理発達・権利・社会

解説

今回は災害後の小児心理ケアについて解説します。 地震や水害などの自然災害は、子どもにとって命の危険を感じる強烈なストレス体験です。子どもは自分の感情を言葉でうまく説明できないため、行動や身体症状として反応が現れます。看護師は心理反応を正しく理解し、年齢に応じた関わりと家族支援を行うことが求められます。

災害後に現れる小児の心理反応

災害体験は子どもの心に強い恐怖と無力感を残します。代表的な反応として、赤ちゃん返りと呼ばれる退行、夜泣き、悪夢、分離不安、食欲低下、腹痛や頭痛などの身体症状、災害場面を再現する遊び、活気の喪失などがあります。乳幼児では指しゃぶりや片時も親から離れられない行動が出やすく、学童期では集中力低下、思春期ではいらだちや抑うつとして現れます。これらは異常な出来事に対する正常な反応であり、多くは時間とともに軽快します。

急性ストレス障害とPTSD

災害のような生命を脅かす出来事の後に出現するストレス反応は、持続期間によって分類されます。出来事から3日以上1か月未満続く場合を急性ストレス障害(ASD:Acute Stress Disorder)といい、症状が1か月以上持続して日常生活に支障をきたす場合を心的外傷後ストレス障害(PTSD:Post Traumatic Stress Disorder)といいます。主な症状は、災害場面が突然よみがえる侵入症状(フラッシュバック)、関連する場所や話題を避ける回避、感情の麻痺や否定的気分、不眠やイライラなどの覚醒亢進です。幼児では言葉での訴えが少ない代わりに、退行や再現遊び、夜驚として現れる点が特徴です。

ポストトラウマティック・プレイ

子どもが災害体験を遊びの中で繰り返し再現する行動をポストトラウマティック・プレイ(外傷後の再現遊び)といいます。一見不謹慎に見えても、恐怖や不安を自分なりに処理しようとする自然な自己治癒的行動です。無理にやめさせず、「もう避難できたから安心だね」と安心感を言葉で伝えながら見守ることが基本的な対応です。ただし、苦痛が強く明らかに悪化している場合は専門家への相談が必要です。

看護の基本原則

災害時の子ども支援の国際的指針としてサイコロジカル・ファーストエイド(PFA:Psychological First Aid)があります。基本は「見る・聴く・つなぐ」であり、安全の確保、安心できる大人の存在、規則正しい生活リズム、必要な支援資源へのつなぎを重視します。災害体験を無理に語らせる心理的デブリーフィングは、かえって症状を悪化させる恐れがあるため推奨されていません。

遊びを通じた支援

子どもにとって遊びは発達の糧であると同時に、言葉にならない感情を表現する手段です。避難所では刺激が乏しく遊び場も限られるため、活気を失う子どもが少なくありません。同世代の子どもと安全に遊べるキッズスペースを設けることで、自然な感情表出と気分転換が促され、保護者の休息時間の確保にもつながります。

家族・保護者への支援

災害後の子どものケアでは、親が安定すれば子どもも安定するという原則が重要です。両親自身も被災者であり、心身ともに余裕を失いやすいため、看護師は保護者の労をねぎらい、具体的で実行しやすい関わり方を助言します。短時間でも意識的に抱っこや手をつなぐといったスキンシップの時間を作ること、就寝前の添い寝や絵本の読み聞かせなどが、子どもの安心感と愛着の再確認を促します。

専門機関への連携

ストレス反応が1か月以上持続し生活機能に支障をきたす場合や、自傷・激しい不眠・解離症状などがみられる場合はPTSDを疑い、児童精神科や災害派遣精神医療チーム(DPAT:Disaster Psychiatric Assistance Team)への紹介を検討します。

まとめ

災害後の小児には退行・再現遊び・分離不安・身体症状などの心理反応が現れますが、多くは異常な体験に対する正常な反応です。発症から1か月未満を急性ストレス障害、1か月以上持続するものをPTSDと区別します。看護の基本はサイコロジカル・ファーストエイドの「見る・聴く・つなぐ」であり、安全と安心の確保、規則正しい生活、遊びを通した感情表出、家族とのスキンシップを支援することが中心となります。再現遊びは無理に止めず安心の言葉をかけて見守り、症状が遷延する場合は専門機関へつなぐ判断が重要です。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    災害など命に関わる強烈なストレス体験の後、3日以上1か月未満続くストレス反応をという。

  2. 2.

    外傷的出来事の後、症状が1か月以上持続し日常生活に支障をきたす状態をという。

  3. 3.

    災害後の幼児に多くみられる、指しゃぶりやおもらしなど発達段階が逆戻りしたような反応をという。

  4. 4.

    子どもが災害体験を遊びの中で繰り返し再現する自己治癒的行動をという。

  5. 5.

    災害時の子ども支援の国際的指針で、「見る・聴く・つなぐ」を基本とする心理的応急処置をという。

  6. 6.

    避難所で活気を失った幼児に対し、感情表出と気分転換を促すために最も有効な看護介入は、同世代の子どもと過ごせるの場を提供することである。

  7. 7.

    災害後に多忙となった親に対し、子どもの安心感と愛着の再確認を促すために助言すべき関わりは、抱っこや添い寝などのを意識的に行うことである。

  8. 8.

    ストレス反応が1か月以上持続しPTSDが疑われる場合に紹介を検討する、災害時の精神医療専門チームをという。

災害後の小児心理ケア」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。