せん妄の発症と対応
老年看護学 / 高齢者の精神・心理・看取り
解説
せん妄とは、身体疾患や薬剤、環境変化などを誘因として急性に発症する意識障害です。注意力や認知機能が変動し、幻視などの知覚異常、興奮や傾眠、見当識障害がみられます。高齢者では入院による環境変化が大きな誘発因子となり、特に入院初日や手術後の夜間に発症しやすい点が特徴です。
せん妄の特徴と三徴
せん妄の三徴は、軽度から中等度の意識障害、集中力や転導性の障害である注意障害、そして急性発症と日内変動性です。夜間に増悪しやすく、日中は比較的落ち着いているのに夕方から夜にかけて混乱が強まる「夕暮れ症候群」のような経過をたどります。一過性かつ可逆性であり、原因が除去されれば数日から数週間で改善することが、不可逆性に進行する認知症との大きな違いです。
3つのサブタイプ
興奮・不穏・暴言・徘徊を呈する過活動型、傾眠・無関心・活動低下を示し見逃されやすい低活動型、両者が混在する混合型に分類されます。低活動型は「おとなしい」と判断されがちで、看護師による早期発見が重要です。
3因子モデル
発症には3つの因子が関与します。準備因子は高齢、認知症、脳器質疾患、感覚障害などの素因です。直接因子は感染、脱水、電解質異常、低酸素、手術、薬剤(ベンゾジアゼピン系、抗コリン薬、オピオイド、ステロイド)など発症の引き金となるものです。促進因子には環境変化、入院、身体拘束、不眠、痛み、ストレスなどがあります。
アセスメントと対応
スクリーニングにはCAM(Confusion Assessment Method)が用いられ、ICUではCAM-ICUが標準です。
非薬物的介入が第一選択
見当識を促す声かけ(日付・場所・人)、時計やカレンダーの設置、眼鏡や補聴器など視聴覚補助具の活用、日中の覚醒促進と夜間の良好な睡眠、家族との面会、不要な身体抑制を避けること、疼痛コントロール、脱水・電解質補正、酸素化、十分な栄養確保が基本です。
薬物療法
ハロペリドール、リスペリドン、クエチアピンなどの抗精神病薬が用いられます。ベンゾジアゼピン系は原則避ける(せん妄を悪化させる)必要があり、アルコール離脱せん妄のみ例外です。
認知症との鑑別と家族への説明
せん妄は急性発症・日内変動・可逆性・注意障害が中核で夜間増悪する一方、認知症は緩徐進行・変動なし・不可逆性・記憶障害が中核です。「しっかりした人だったのに急におかしくなった」という家族の訴えには、せん妄の可逆性と環境調整の重要性を丁寧に説明しましょう。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
せん妄は身体疾患や薬剤、環境変化を誘因としてに発症する意識障害である。
- 2.
せん妄は一過性で性であり、これが認知症との大きな違いである。
- 3.
せん妄のサブタイプのうち、傾眠や活動低下を示し見逃されやすいのは型である。
- 4.
せん妄の3因子のうち、高齢や認知症などの素因は因子に分類される。
- 5.
せん妄を誘発しやすい薬剤として、系、抗コリン薬、オピオイド、ステロイドがある。
- 6.
せん妄のスクリーニングにはが用いられ、ICUではCAM-ICUが使用される。
- 7.
せん妄の三徴は意識障害、注意障害、急性発症・性である。
- 8.
せん妄の治療では非薬物的介入が第一選択で、薬物療法では(ハロペリドールなど)が用いられる。
- 9.
せん妄はに増悪しやすく、特に入院初日や手術後に発症しやすい。
- 10.
認知症との鑑別では、記憶障害が中核となるのは認知症で、せん妄の中核症状は障害である。
