気道閉塞と異物除去
看護の統合と実践 / 救命救急・急変・その他
解説
今回は気道閉塞と異物除去について解説します。
気道閉塞(窒息)とは
気道閉塞とは、食物や異物が気道に詰まり、空気の通り道がふさがれる状態をいいます。原因となる食物には餅・肉塊・パン・こんにゃくゼリーなどがあり、嚥下機能が低下した高齢者や、何でも口に入れてしまう乳幼児で多くみられます。 気道が完全に閉塞すると換気がまったくできず、数分のうちに意識消失から心停止へと進行するため、その場で迅速に対応する必要があります。
チョークサイン
気道閉塞を起こした傷病者がみせる特徴的な仕草がチョークサインです。両手で自分の喉を押さえる動作で、「窒息している」という万国共通のサインとされます。咳ができない、声が出せない、苦悶様の表情、チアノーゼなども重要な所見です。
意識のある成人の異物除去
意識があり咳もできない傷病者に対しては、JRC蘇生ガイドラインに沿って異物除去を行います。まず背部叩打法を試み、効果がなければ**腹部突き上げ法(ハイムリック法)**へ移行します。
背部叩打法
傷病者をやや前傾させ、肩甲骨の間を手のひらの付け根(手掌基部)で力強く連続して叩く方法です。
腹部突き上げ法(ハイムリック法)
ハイムリック法(Heimlich法)は、傷病者の背後に立って両腕を腹部にまわし、片方の握りこぶしを剣状突起と臍の間の上腹部に当て、もう一方の手で握り、素早く後上方へ突き上げる手技です。 この突き上げにより横隔膜が押し上げられ、胸腔内圧が急上昇します。肺に残っていた空気が一気に押し出されることで、咳と同じ要領で異物を吹き飛ばす仕組みです。
ハイムリック法の禁忌と代替
ハイムリック法は腹部を強く圧迫するため、適応できない対象があります。妊婦と高度肥満者には腹部突き上げ法は行わず、胸部突き上げ法で代用します。また1歳未満の乳児にも腹部突き上げ法は禁忌で、背部叩打と胸部突き上げの併用で異物除去を行います。
意識消失時の対応
異物除去の途中で傷病者が反応を失った場合は、ただちに心肺蘇生へ切り替え、胸骨圧迫を開始します。胸骨圧迫30回ごとに口腔内を確認し、異物が見えれば取り除きますが、見えない異物に対する盲目的な指による掻爬(指拭法)は、異物を奥へ押し込む危険があるため禁忌です。
BLSにおける各手技の目的
一次救命処置(BLS)の各手技は目的が異なるため、混同しないように整理しておく必要があります。胸骨圧迫は循環の維持、人工呼吸は換気、頭部後屈顎先挙上は気道確保、そしてハイムリック法は気道異物の除去を目的とする手技です。国試では「窒息時に行う処置」としてハイムリック法が問われやすいので、目的の違いを正確に押さえましょう。
まとめ
気道閉塞は数分で心停止に至る緊急事態であり、チョークサインを認めたら直ちに対応します。意識のある成人には背部叩打法を先行し、効果がなければハイムリック法へ移行します。ハイムリック法は剣状突起と臍の間に握りこぶしを当て、後上方へ突き上げて横隔膜を介し肺の空気で異物を排出させる手技です。妊婦・高度肥満者・乳児には禁忌で、それぞれ胸部突き上げ法や背部叩打との併用に切り替えます。反応がなくなれば速やかに胸骨圧迫主体の心肺蘇生へ移行することが重要です。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
気道閉塞を起こした傷病者が両手で喉を押さえる仕草をという。
- 2.
意識のある成人の気道異物除去では、まずを行い、効果がなければ腹部突き上げ法に移行する。
- 3.
腹部突き上げ法は別名と呼ばれ、横隔膜を押し上げて肺内の空気で異物を排出させる手技である。
- 4.
ハイムリック法では、握りこぶしを剣状突起との間の上腹部に当て、素早く後上方へ突き上げる。
- 5.
妊婦や高度肥満者に対してはハイムリック法は禁忌であり、代わりにを行う。
- 6.
1歳未満の乳児の気道異物除去では、背部叩打とを併用する。
- 7.
気道異物による窒息で意識を失った場合は、ただちに胸骨圧迫を中心とするへ移行する。
- 8.
一次救命処置において、気道異物の除去を目的とする手技はであり、胸骨圧迫の目的である循環維持とは区別される。
