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被災者の心理的支援

看護の統合と実践 / 災害看護

解説

被災者の心理的支援とは、地震や水害などの災害により心身に強い衝撃を受けた人々に対し、その時期や反応に応じて適切なケアを提供する活動です。看護師は、被災者の心理反応を理解し、安心と回復を促す関わりを行うことが求められます。

災害時メンタルヘルスケアの時期区分

被災者への心理的支援は、災害発生からの経過時間によって支援の重点が異なります。一般に、急性期、亜急性期、慢性期の三つに区分して考えます。

急性期(発災から概ね1週間まで)

急性期は、生命と安全の確保が最優先となる時期です。被災者は強い恐怖や混乱の中にあり、専門的な精神療法よりも、まず身体的安全、休息、食事、睡眠といった基本的ニーズを満たすことが心の安定につながります。この時期に行われる心理的応急処置が**サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)**です。

亜急性期(1週間から1か月)

生活がやや落ち着き始める時期ですが、避難所生活の長期化に伴い、疲労やストレスが顕在化します。被災者の話に耳を傾け、喪失の体験を語り合える場をつくること、生活再建に必要な情報を提供することが中心となります。

慢性期(1か月以降)

生活再建が進む一方で、**心的外傷後ストレス障害(PTSD)**やうつ病などの遷延する精神症状が表面化する時期です。専門的な評価と治療が必要となり、**DPAT(災害派遣精神医療チーム)**などの専門チームによる継続的介入が重要となります。

サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)

PFAはWHOが提唱する、被災直後の心理的応急処置です。専門的な心理療法ではなく、誰もが行える支援活動として位置づけられています。

活動の三原則

PFAの活動原則は**見る(Look)・聞く(Listen)・つなぐ(Link)**の三つです。Lookは安全や緊急のニーズを観察すること、Listenは被災者の話に耳を傾けること、Linkは必要な支援や情報、サービスにつなぐことを意味します。

かつて被災直後に体験を強制的に語らせるデブリーフィングが行われていましたが、PTSDの発症リスクを高めることが明らかとなり、現在では推奨されていません。PFAはこのデブリーフィングとは明確に異なる支援法です。

被災者の心理反応とノーマライゼーション

災害という極限状況に置かれた被災者には、不眠、食欲不振、動悸、イライラ、涙もろさ、フラッシュバック、感情の麻痺といった多様な反応が現れます。これらは**「異常な事態に対する正常な反応」であり、看護師は被災者がこの反応を病的なものと捉えて自分を責めることのないよう、保証する関わりが必要です。これをノーマライゼーションといいます。あわせて、こうした反応の経過や対処法をわかりやすく伝える心理教育**も重要な支援となります。

症状の持続期間によって診断は区分されます。発症から1か月以内の強い症状は急性ストレス障害(ASD)、1か月以上持続する場合は**心的外傷後ストレス障害(PTSD)**と呼ばれます。

被災者の心理反応の経過

被災者の心理は時間経過とともに変化します。発災直後の現実感を失う茫然自失期、被災者同士の連帯感が高まり高揚した気分となるハネムーン期、援助の遅れや疲労から無力感や怒りが現れる幻滅期、現実を受け入れて生活を立て直していく再建期と推移します。看護師はこの経過を踏まえ、各段階に応じた関わりを行います。

要配慮者への注意と支援者のセルフケア

高齢者、子ども、障害のある人、外国人、妊産婦など、要配慮者は災害時に特に脆弱性が高まります。喪失感や孤立感が強くなりやすいため、語り合える場を提供したり、状況を理解しやすい言葉で説明したりと、個別性に応じた配慮が求められます。

また、支援にあたる看護師自身も強いストレスにさらされます。支援者のセルフケアやチーム内での支え合いも、継続的な支援を行ううえで欠かせない要素です。

まとめ

被災者の心理的支援は、急性期、亜急性期、慢性期と時期に応じて重点が変化します。急性期にはPFAに基づく見る・聞く・つなぐの実践、亜急性期には傾聴と心理教育、慢性期にはASDやPTSDへの専門的介入が中心となります。被災者の反応は異常事態に対する正常な反応であることを保証し、デブリーフィングではなく安心と信頼に基づく関わりを基本とすることが、看護師に求められる姿勢です。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    災害時メンタルヘルスケアにおいて、発災から概ね1週間までの時期をといい、1週間から1か月までを、1か月以降をと区分する。

  2. 2.

    WHOが提唱する被災直後の心理的応急処置を(PFA)といい、その活動三原則は見る()・聞く()・つなぐ()である。

  3. 3.

    被災直後に体験を強制的に語らせるは、PTSD発症リスクを高めるため現在では推奨されていない。

  4. 4.

    外傷的出来事に対する強い心理反応のうち、1か月以内のものを(ASD)、1か月以上持続するものを(PTSD)という。

  5. 5.

    不眠やフラッシュバックなどの被災者の反応は「異常な事態に対するな反応」であると保証する関わりをといい、反応や対処法を伝える支援をという。

  6. 6.

    被災者の心理経過は、茫然自失期→期→期→再建期と推移する。

  7. 7.

    災害発生時に被災地に派遣される、精神科医療と精神保健活動の専門チームを(災害派遣精神医療チーム)という。

  8. 8.

    亜急性期の避難所で高齢者に対しては、について語り合える場を提供することが心のケアとして適切である。

被災者の心理的支援」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。