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CABG術後の合併症管理

成人看護学 / 循環器系

解説

CABG(冠動脈バイパス術)とは、狭窄や閉塞した冠動脈に対して、内胸動脈や大伏在静脈などの自己血管をグラフト(バイパス血管)として用い、虚血部位への血流を再建する開心術です。今回はCABG術後に起こりやすい合併症と、その観察・看護のポイントについて解説します。

CABGの概要と適応

CABGはCoronary Artery Bypass Graftingの略で、薬物療法や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)では十分な治療効果が得られない多枝病変、左主幹部病変、糖尿病合併例などが主な適応となります。一般的には人工心肺を用いて心停止下で行いますが、心拍動下で行うオフポンプCABGも普及しています。グラフトには長期開存率の高い内胸動脈が第一選択として用いられます。

術後ICU管理の概観

CABG術後は集中治療室(ICU)で全身管理を行います。人工呼吸管理、循環動態のモニタリング、心嚢ドレーン・縦隔ドレーンの管理、疼痛コントロール、出血や不整脈の監視が中心となります。術後数時間から数日は循環動態が不安定になりやすく、早期発見・早期対応が予後を左右します。

主要合併症の全体像

術後早期に注意すべき合併症には、心原性肺水腫、低心拍出量症候群(LOS)、心タンポナーデ、不整脈(特に術後心房細動)、出血、無気肺、感染、急性腎障害などがあります。いずれも循環・呼吸・腎機能のバイタルサインを連続的に観察し、わずかな変化を見逃さないことが重要です。

心原性肺水腫

心原性肺水腫は、手術侵襲や心筋の虚血再灌流障害、術中の大量輸液などにより左室機能が一過性に低下し、肺毛細血管圧が上昇して肺胞や間質に水分が貯留する病態です。所見としては、両肺野のびまん性透過性低下(胸部X線)、聴診上の湿性ラ音、中心静脈圧(CVP)の上昇、左室駆出率(LVEF)の低下、漿液性で泡沫状の気道分泌物などがみられます。治療は酸素化の改善、利尿薬、強心薬の投与であり、重症例ではNPPVや人工呼吸管理が必要となります。

心タンポナーデ

心タンポナーデは、心嚢内に血液や滲出液が貯留して心臓が外側から圧迫され、拡張期の充満障害により心拍出量が著しく低下する病態です。古典的所見としてBeckの三徴(①血圧低下、②心音減弱、③頸静脈怒張=中心静脈圧上昇)が知られ、加えて吸気時に収縮期血圧が10mmHg以上低下する奇脈、脈圧の狭小化、頻脈、呼吸困難などがみられます。

開心術後の特徴として、心嚢・縦隔ドレーンからの排液が急激に減少したり、血性排液が突然止まったりした場合は、ドレーン閉塞による心嚢内貯留が疑われ、極めて危険なサインです。看護師はドレーンのミルキングによる開存維持、排液の性状・量の経時的観察、バイタルサインの連続監視を行い、異常時には速やかに医師へ報告し、心エコーによる迅速診断につなげます。治療は心嚢穿刺や再開胸ドレナージです。

不整脈(術後心房細動)

術後心房細動はCABG後の20〜40%に発症し、術後3日前後にピークを迎えます。心拍出量低下や血栓塞栓症のリスクを高めるため、心電図モニタリングを継続し、抗不整脈薬や抗凝固療法による管理が行われます。

早期離床の意義と中止基準

早期離床は無気肺・深部静脈血栓症・廃用症候群の予防に有効ですが、心臓血管外科術後では循環動態に配慮した中止基準が設けられています。安静時心拍数120/分以上、新規の心房細動や心室頻拍などの不整脈出現、収縮期血圧の30mmHg以上の変動または90mmHg未満、SpO2 90%未満、尿量0.5mL/kg/時未満の乏尿持続、強い胸痛や呼吸困難、意識レベル低下のいずれかがみられた場合は、離床を中止し医師に報告します。

心臓リハビリテーションの3段階

心臓リハビリテーションは、入院中に行う急性期、退院後3〜6か月にかけて行う回復期、その後生涯にわたって継続する維持期の三段階で構成されます。運動療法に加え、生活指導や心理的支援、再発予防のための包括的プログラムとして実施されます。

退院前の生活指導(入浴指導)

入浴は心臓に負担をかけやすいため、具体的な指導が欠かせません。湯温は38〜40℃のぬるめにし、みぞおち程度までの半身浴で水圧の影響を抑えます。入浴時間は10分以内とし、入浴前後には水分補給を行います。脱衣所と浴室の温度差を小さくしてヒートショックを予防し、動悸・息切れ・胸痛が出現したらすぐに出浴します。

また、入浴は食後1時間以上空けることが大切です。食後は消化のため腸管に血流が集中して体血圧が低下しやすく、そこに入浴の温熱作用や水圧が加わると循環動態が大きく揺らぎ、心負荷の増大や起立性低血圧、めまい・失神を招きやすくなるためです。

まとめ

CABG術後は心原性肺水腫や心タンポナーデなど、循環動態を大きく崩す合併症が起こり得ます。Beckの三徴やドレーン排液の変化などの早期発見の視点を持ち、早期離床の中止基準を踏まえた段階的なリハビリテーションと、入浴をはじめとする退院後の生活指導までを一貫して支えることが、看護師に求められます。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    CABGは狭窄や閉塞した冠動脈に対して、内胸動脈やなどをグラフトとして用い、血流を再建する開心術である。

  2. 2.

    心原性肺水腫では、聴診上が聴取され、中心静脈圧(CVP)の上昇や左室駆出率()の低下がみられる。

  3. 3.

    心タンポナーデの古典的三徴であるは、①血圧低下、②、③頸静脈怒張からなる。

  4. 4.

    心タンポナーデでは、吸気時に収縮期血圧が10mmHg以上低下するがみられることがある。

  5. 5.

    開心術後に心嚢・縦隔ドレーンからの血性排液が急激に減少した場合、ドレーン閉塞によるを疑う必要がある。

  6. 6.

    CABG後の心房細動は全体の20〜40%に発症し、術後日前後にピークを迎える。

  7. 7.

    心臓血管外科術後の早期離床中止基準として、安静時心拍数/分以上、SpO2%未満、尿量mL/kg/時未満の乏尿持続などがある。

  8. 8.

    心臓リハビリテーションは、入院中の急性期、退院後3〜6か月の、その後生涯続くの三段階で行われる。

  9. 9.

    退院後の入浴指導では、湯温は℃のぬるめとし、みぞおち程度ので10分以内、食後時間以上空けることを指導する。

  10. 10.

    脱衣所と浴室の温度差を小さくすることは、急激な血圧変動によるの予防につながる。

CABG術後の合併症管理」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。