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術前準備と術前指導

成人看護学 / 周術期・救急

解説

今回は術前準備と術前指導について解説します。手術は患者にとって身体的にも精神的にも大きな侵襲となるため、術前から合併症を予防し、円滑に術後経過をたどれるように準備を整えることが重要です。看護師は患者の全身状態を整え、術後合併症のリスクを最小化するための指導と援助を行います。

術前の全身状態の整備

術前準備の目的は、手術侵襲に耐えうる全身状態を整え、術後合併症を予防することにあります。既往疾患の評価と是正、感染源の除去、栄養状態の改善、呼吸・循環機能の評価などが含まれます。患者の不安に対しては、感情を受容したうえで根拠に基づく情報提供を行い、患者自身が納得して手術に臨めるよう意思決定を支援します。

糖尿病患者の血糖コントロール

糖尿病患者では高血糖状態が白血球の貪食能低下、コラーゲン合成障害、微小循環障害を引き起こし、創感染縫合不全、創治癒遅延の原因となります。そのため周術期の血糖管理は極めて重要です。術前は空腹時血糖を100〜140mg/dL程度、HbA1cを7%未満に保つことが目標とされます。コントロールにはインスリン皮下注射による厳格な管理が行われ、経口血糖降下薬は手術前日または当日に中止し、スライディングスケールや持続インスリン静注へ切り替えます。

術後呼吸器合併症の予防

全身麻酔下の手術では筋弛緩薬を使用するため自発呼吸が停止し、人工呼吸器による呼吸管理が必要となります。気道確保のために気管内挿管が行われ、術後には嗄声や咽頭違和感が残ることがあります。術前オリエンテーションでこれらを説明することで、患者の不安軽減につながります。

開胸・開腹手術では創部痛と横隔膜機能の低下により呼吸が浅くなり、気道分泌物が貯留して無気肺や肺炎が起こりやすくなります。とくに無気肺は術後48時間以内に発生しやすい代表的な呼吸器合併症です。頸部操作を伴う食道再建術などの侵襲の大きい手術では、無気肺・肺炎に加え縫合不全のリスクも高まります。

呼吸訓練と口腔ケア

術後呼吸器合併症を予防するため、術前から呼吸訓練を行います。インセンティブスパイロメトリーを用いた深呼吸訓練、腹式呼吸、排痰を促すハフィング法の練習を指導します。鼻から吸って口から吐く呼吸が正しい方法であり、口から吸って鼻から吐く方法は誤りです。あわせて禁煙、含嗽、口腔ケアを徹底し、術後感染源となる気道・口腔内の細菌を減らします。

術後は頭高位の保持、十分な鎮痛、早期離床を組み合わせて呼吸器合併症を予防します。SpO2の低下や副雑音の聴取など、異常の早期発見も看護師の重要な役割です。

まとめ

術前準備と術前指導は、手術侵襲を最小限にし、術後合併症を予防するうえで欠かせない看護援助です。糖尿病患者ではインスリンによる厳格な血糖管理を行い、創感染や縫合不全を防ぎます。全身麻酔と開胸・開腹術後には無気肺や肺炎が起こりやすいため、術前から禁煙、口腔ケア、呼吸訓練、排痰練習を指導し、術後は早期離床と鎮痛により合併症を予防します。患者の不安に寄り添い、根拠を示した説明を行うことで、安心して手術に臨める環境を整えることが重要です。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    糖尿病患者で高血糖状態が続くと、白血球の【 】能が低下し創感染のリスクが高まる。

  2. 2.

    糖尿病患者の術前血糖管理では、HbA1cを【 】%未満に保つことが目標とされる。

  3. 3.

    術前の経口血糖降下薬は手術前日または当日に中止し、【 】皮下注射による厳格管理に切り替える。

  4. 4.

    全身麻酔下では筋弛緩薬の使用により自発呼吸が停止するため、気道確保の目的で【 】内挿管が行われる。

  5. 5.

    術後48時間以内に発生しやすく、気道分泌物の貯留と肺胞虚脱により生じる呼吸器合併症を【 】という。

  6. 6.

    術前から行う深呼吸訓練に用いられる器具で、吸気量を視覚的に確認できるものを【 】スパイロメトリーという。

  7. 7.

    術後の排痰を促す呼吸法で、強制呼出により気道分泌物を排出する方法を【 】法という。

  8. 8.

    術前指導では気道の感染源を減らすために【 】を徹底し、喫煙者には禁煙を指導する。

術前準備と術前指導」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。