完全房室ブロックの病態
成人看護学 / 循環器系
解説
今回は完全房室ブロックの病態について解説します。
刺激伝導系の基礎
心臓は規則的に拍動するために、電気刺激を心房から心室へ順序よく伝える仕組みを持っています。これを刺激伝導系といいます。電気刺激は右心房にある洞房結節から発生し、心房を収縮させたあと、心房と心室の境にある房室結節に集まります。その後、ヒス束、左脚・右脚、プルキンエ線維を経て心室全体に伝わり、心室が収縮します。洞房結節は1分間に約60〜80回の電気刺激を出すペースメーカーであり、ここから始まる規則的なリズムを洞調律といいます。
房室ブロックの分類
房室ブロックとは、心房から心室への電気刺激の伝導が房室結節やヒス束のレベルで障害される状態を指します。障害の程度によりⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度に分類されます。Ⅰ度は伝導が遅れるだけでP波の後に必ずQRS波が続きます。Ⅱ度は一部の刺激が心室まで届かず、P波の後にQRS波が脱落することがあります。Ⅲ度は心房からの刺激が心室にまったく伝わらない状態で、これを完全房室ブロックと呼びます。
完全房室ブロックの心電図所見
完全房室ブロックでは、心房と心室がそれぞれ独立して興奮するため、心電図上でP波とQRS波がまったく無関係に出現します。これを房室解離といいます。心房は洞房結節からの刺激で正常な頻度で興奮しますが、心室は房室結節以下にある下位中枢からの補充収縮(補充調律)に頼ることになります。補充調律は遅く、心拍数は通常40回/分以下の高度な徐脈となります。
症状とアダムス・ストークス発作
心拍数が極端に低下すると心拍出量が減少し、全身の組織への血流が不足します。特に脳は虚血に弱いため、めまい、ふらつき、失神、痙攣などの症状が出現します。これらの脳虚血症状をアダムス・ストークス発作といいます。長時間続けば突然死に至るため、重大な不整脈として扱われます。労作時には酸素需要が増えるため、息切れや動悸も生じやすくなります。
治療
完全房室ブロックは恒久的ペースメーカー植込みの絶対適応です。ペースメーカーは電気刺激を心臓に与えて心拍数を維持する装置で、徐脈による症状を予防します。薬物では一時的にアトロピンやイソプロテレノールが使われますが、根本治療ではありません。
まとめ
完全房室ブロックは、心房から心室への電気刺激がまったく伝わらないⅢ度の房室ブロックです。心電図ではP波とQRS波が無関係に出現し、高度な徐脈により心拍出量が低下します。脳虚血によるアダムス・ストークス発作を起こしやすく、恒久的ペースメーカー植込みが治療の中心となります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
心臓の電気刺激を最初に発生させ、洞調律の起点となる部位をという。
- 2.
心房から心室への電気刺激の伝導が完全に途絶え、P波とQRS波が無関係に出現する状態を(Ⅲ度房室ブロック)という。
- 3.
完全房室ブロックでは心室が下位中枢からの補充調律に頼るため、心拍数が通常40回/分以下となる高度なを呈する。
- 4.
完全房室ブロックの心電図では、心房と心室が独立して興奮するため、P波とがまったく無関係に出現する。
- 5.
完全房室ブロックで心拍出量が急激に低下し、脳虚血によりめまいや失神、痙攣を起こす発作をという。
- 6.
完全房室ブロックに対する根本的な治療として、恒久的な植込みが絶対適応となる。
- 7.
房室ブロックのうち、伝導が遅れるだけでP波の後に必ずQRS波が続くものを房室ブロックという。
