薬剤性転倒リスク(降圧薬)
成人看護学 / 薬理学(横断的)
解説
今回は薬剤性転倒リスク、特に降圧薬による転倒について解説します。
転倒と看護
転倒とは、本人の意図に反して地面や床などのより低い面に身体が接触してしまう現象をいいます。高齢者では転倒により大腿骨近位部骨折や頭部外傷を起こしやすく、寝たきりやADL低下、QOL低下、さらには生命予後の悪化に直結します。そのため、看護では転倒を未然に防ぐ視点が極めて重要となります。
転倒に関わる要因
転倒の要因は、内的要因・外的要因・薬剤要因の3つに大別されます。 内的要因は、加齢に伴う筋力低下、平衡感覚の低下、視力障害、認知機能低下、起立性低血圧、めまいなどの身体機能由来のものです。外的要因は段差、滑りやすい床、暗い照明、不適切な履物など環境由来のものを指します。そして薬剤要因とは、内服している薬剤の薬理作用そのものが転倒を引き起こすものをいいます。
転倒ハイリスク薬
国試で問われる代表的な転倒ハイリスク薬には次のものがあります。 降圧薬は血圧低下作用により起立性低血圧、めまい、ふらつき、立ちくらみを起こします。利尿薬は脱水・電解質異常・夜間頻尿を介して転倒を招きます。睡眠薬や抗不安薬、特にベンゾジアゼピン系は筋弛緩作用・過鎮静・健忘・ふらつきを起こします。抗精神病薬は錐体外路症状や起立性低血圧、過鎮静をきたし、抗うつ薬も起立性低血圧と過鎮静を起こします。抗パーキンソン病薬はジスキネジアやON-OFF現象、起立性低血圧を伴います。抗ヒスタミン薬は眠気や認知機能低下、血糖降下薬は低血糖によるふらつきを介して転倒リスクを高めます。
降圧薬による起立性低血圧
起立性低血圧とは、臥位や座位から立ち上がった際に収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下する状態をいいます。脳血流が一時的に低下し、立ちくらみやめまい、失神を生じて転倒に至ります。 降圧薬は末梢血管抵抗の低下や心拍出量の抑制などによって血圧を下げるため、起立時の血圧維持機構が追いつかず起立性低血圧をきたしやすくなります。特に内服開始時や増量時、そして高齢者でリスクが高くなります。これは加齢に伴い圧受容器反射や自律神経機能が低下し、体位変換時の血圧調整がうまく働かなくなるためです。
ポリファーマシーと減薬
ポリファーマシーとは多剤併用、特に害をもたらす多剤併用の状態をいいます。高齢者では複数の慢性疾患を抱え、6種類以上の薬剤を併用することも珍しくなく、薬剤相互作用や腎排泄遅延による作用増強で転倒リスクがさらに増します。そのため、医師・薬剤師と連携した減薬の検討が必要であり、日本老年医学会の高齢者の安全な薬物療法ガイドラインが参考にされます。
看護介入
降圧薬の導入時や増量時には、ベッドサイドで起立確認を行い、移動を介助します。臥床から起き上がる際や排尿後の立ち上がり時は血圧が下がりやすいため、ゆっくり動くよう声をかけ、見守りを行います。あわせてベッド周囲の環境整備、履物・照明の調整など外的要因への介入も組み合わせます。
まとめ
降圧薬は起立性低血圧を介して転倒を引き起こす代表的なハイリスク薬であり、高齢者では圧受容器反射の低下とポリファーマシーが重なって特に注意が必要です。内服開始時・増量時の起立確認、立ち上がり時の声かけと見守り、ガイドラインに基づく減薬検討が看護のポイントとなります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
転倒のリスクを高める代表的な薬剤のうち、血圧低下作用により起立性低血圧やふらつきを引き起こすのはである。
- 2.
臥位や座位から立位への体位変換時に収縮期血圧が20mmHg以上低下する状態をといい、降圧薬服用時に問題となる。
- 3.
降圧薬による起立性低血圧が高齢者で起こりやすい理由として、加齢に伴うの低下と自律神経機能の低下が挙げられる。
- 4.
降圧薬による転倒リスクは、特に内服に高まりやすい。
- 5.
筋弛緩作用や過鎮静、健忘によって転倒を引き起こす睡眠薬・抗不安薬の代表的な系統はである。
- 6.
脱水や電解質異常、夜間頻尿を介して転倒を引き起こす薬剤はである。
- 7.
複数の薬剤を併用することで有害事象や転倒リスクが増大する状態をといい、高齢者で特に問題となる。
- 8.
高齢者における薬剤性転倒リスクの評価や減薬を検討する際に参照される、日本老年医学会が作成したガイドラインはである。
- 9.
降圧薬を内服している高齢者では、ベッドから起き上がる前や後の立ち上がり時に血圧が下がりやすく、声かけと見守りが必要である。
