ジギタリスの副作用
成人看護学 / 循環器系
解説
ジギタリスとは、植物ジギタリスから得られる強心配糖体であり、心不全や不整脈に古くから用いられてきた薬剤の総称です。今回はジギタリスの副作用、特にジギタリス中毒について解説します。
ジギタリス製剤の概要
代表的な薬剤はジゴキシン(digoxin)で、内服薬や注射薬として臨床で広く使われています。ジギタリスは心臓に対して二つの大きな作用をもち、心不全や頻脈性不整脈の治療に欠かせない薬ですが、有効血中濃度と中毒域が非常に近いため、副作用に細心の注意が必要です。
作用機序
ジギタリスは心筋細胞膜にあるNa-K ATPaseを阻害します。その結果、細胞内のナトリウムが上昇し、Na/Ca交換が抑えられて細胞内カルシウム濃度が高まることで心筋の収縮力が増します。これを陽性変力作用(強心作用)といいます。
もう一つの作用として、迷走神経刺激と房室結節の伝導抑制があり、心拍数を減少させます(陰性変時・陰性変伝導作用)。この働きを利用して、頻脈性心房細動のレートコントロールにも用いられます。
適応
主な適応は慢性心不全と頻脈性心房細動です。治療域の血中濃度は0.5〜1.5 ng/mLと狭く、わずかな上昇でも中毒症状を起こす危険があります。
ジギタリス中毒の症状
心症状
徐脈、房室ブロック、心室性期外収縮、二段脈などが現れます。重症化すると心室頻拍や心室細動に至ることもあります。心電図では盆状ST低下が「ジギタリス効果」として知られますが、これは中毒の指標ではなく、ブロックや期外収縮が中毒を示します。
心外症状
消化器症状として食欲不振、悪心、嘔吐がしばしばみられます。神経症状では頭痛、めまい、精神症状が、また特徴的な症状として視覚異常(黄視・緑視・複視)が現れます。これらは中毒の早期発見に重要なサインです。
中毒を起こしやすい因子
最も重要なのは低カリウム血症です。ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬の併用で生じやすく、ジギタリス感受性を高めます。低マグネシウム血症、高カルシウム血症、腎機能低下(ジゴキシンは腎排泄)、高齢、甲状腺機能低下症も増悪因子となります。
看護のポイント
服用前には必ず脈拍を測定し、1分間60回未満や著しい不整があれば投与せず医師に報告します。悪心・視覚異常・脈の乱れなど中毒症状の早期発見に努め、利尿薬併用時はカリウム値をモニタリングし、低K血症予防のためカリウム含有食品の摂取を指導します。
重症中毒の治療
血中ジゴキシン濃度を測定し、致死的不整脈などを伴う重症例では抗ジゴキシン抗体Fab製剤を投与します。
まとめ
ジギタリスは強心作用と房室伝導抑制をもつ有用な薬ですが、治療域が狭く中毒を起こしやすい薬剤です。低カリウム血症や腎機能低下が中毒の引き金となり、消化器症状や視覚異常、徐脈・不整脈などが特徴的な症状として現れます。服用前の脈拍確認と血中カリウムの管理が看護上の鍵となります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
ジギタリス製剤の代表薬はである。
- 2.
ジギタリスは心筋細胞のを阻害し、細胞内カルシウム濃度を上昇させて心筋収縮力を高める。
- 3.
ジギタリスの主な適応は慢性心不全と頻脈性のレートコントロールである。
- 4.
ジギタリス中毒を起こしやすい電解質異常として最も重要なのはである。
- 5.
ジギタリス中毒の特徴的な視覚異常として、黄視・・複視がみられる。
- 6.
ジギタリス中毒の心症状として、徐脈、房室ブロック、心室性期外収縮、などがある。
- 7.
ジゴキシンは主にから排泄されるため、腎機能低下時には中毒を起こしやすい。
- 8.
ジギタリス服用前には脈拍を測定し、1分間回未満の場合は投与せず医師に相談する。
- 9.
重症のジギタリス中毒に対しては、抗ジゴキシン抗体製剤を投与する。
