不整脈の種類と緊急対応
成人看護学 / 循環器系
解説
不整脈とは、心臓の電気的興奮の発生や伝導に異常をきたし、脈の速さやリズムが乱れる状態をいいます。今回は不整脈の種類と緊急対応について解説します。看護学生にとって、致死性不整脈の波形を見分け、迅速に救命処置へつなげる判断は国家試験でも臨床でも必須の知識です。
致死性不整脈の種類
生命に直結する不整脈は、心室細動(VF)、無脈性心室頻拍(無脈性VT)、無脈性電気活動(PEA)、心静止(Asystole)の四つです。このうち電気ショック(除細動)の適応となるのは心室細動と無脈性心室頻拍のみで、これらをショッカブルリズムと呼びます。一方、PEAと心静止は除細動の適応がなく、質の高い心肺蘇生とアドレナリン投与を中心に対応します。
心室細動(VF)
心室細動は心室筋が無秩序に痙攣する状態で、有効な心拍出が消失し、数秒で意識消失と心停止に至る最も緊急性の高い不整脈です。心電図では基線が認識できない不規則な波形を示し、P波もQRS波も識別できません。除細動の成功率は発症から1分遅れるごとに約7〜10%低下するため、迅速な対応が予後を決定します。
心室頻拍(VT)
心室頻拍は心室内の異所性興奮が連続して生じる致死性不整脈で、心電図ではP波が確認できず、幅広い(0.12秒以上)QRS波が心拍数100〜250回/分で連続します。心室期外収縮が3連発以上続いた状態と定義され、30秒未満で自然停止する非持続性VTと、30秒以上または血行動態破綻を伴う持続性VTに分類されます。脈なしVTはVFと同様に除細動とCPRの適応で、脈ありVTではアミオダロンなどの抗不整脈薬や同期電気的除細動を行います。放置するとVFに移行し心停止に至る危険があります。
VF・無脈性VTへの緊急対応
VFや無脈性VTを認めた場合は、直ちに胸骨圧迫を開始することが最優先です。BLSアルゴリズムでは、まず反応の確認と応援要請、119番通報およびAEDの要請を行い、次に呼吸を10秒以内に確認します。呼吸がなければ胸骨圧迫を開始し、30回の圧迫と2回の人工呼吸を繰り返します。AEDが到着したら装着して解析を行い、除細動適応であれば通電し、ただちにCPRを再開します。薬物療法ではアドレナリンを投与し、難治例にはアミオダロンを併用します。心停止に対しては、CPR、電気的除細動、アドレナリン投与の三本柱が救命の鍵となります。
心房細動(Af)と脳塞栓症
心房細動は臨床で最も頻度が高い不整脈で、心房が350〜600回/分の頻度で無秩序に興奮する状態です。心電図ではP波が消失し、基線に細かい不規則な細動波(f波)が出現し、房室結節を介した伝導が不規則になるためR-R間隔は絶対不整となります。心房粗動は規則的な鋸歯状のF波が特徴で、鑑別が重要です。
心房細動では心房が有効に収縮できず、左心耳に血流のよどみが生じて血栓が形成されます。この血栓が遊離すると脳動脈を閉塞し、心原性脳塞栓症を引き起こします。心原性脳塞栓症は突然発症し広範囲の梗塞を生じることから「ノックアウト型脳梗塞」とも呼ばれ、予後不良です。脳梗塞リスクの評価にはCHADS2スコア(うっ血性心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病、脳卒中既往)やCHA2DS2-VAScスコアが用いられます。非弁膜症性心房細動ではDOAC(直接経口抗凝固薬)が第一選択で、従来はワルファリンが使用されていました。心拍数調節にはβ遮断薬、洞調律維持には電気的・薬理学的除細動やカテーテルアブレーションが行われます。心房細動でも血行動態が破綻した場合は緊急の電気的除細動の対象となるため、リズムだけでなく循環動態の評価が重要です。
まとめ
致死性不整脈にはVF、無脈性VT、PEA、心静止の四つがあり、除細動の適応はVFと無脈性VTのみです。最も緊急性の高い不整脈は心室細動で、発見したら直ちに胸骨圧迫を開始し、AEDによる除細動とアドレナリン投与を組み合わせて救命を図ります。心室頻拍は幅広QRS波が連発する波形が特徴で、VFへの移行に注意が必要です。心房細動は左心耳に血栓を形成し心原性脳塞栓症を引き起こすため、CHADS2スコアによるリスク評価と抗凝固療法が治療の柱となります。波形の特徴と緊急度を正しく理解し、迅速な対応につなげることが看護師に求められます。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
心室筋が無秩序に痙攣し、有効な心拍出が消失して数秒で心停止に至る最も緊急性の高い不整脈を(VF)という。
- 2.
致死性不整脈のうち電気的除細動の適応となるショッカブルリズムは、心室細動との2つである。
- 3.
心室頻拍の心電図では、P波が確認できず幅広い(秒以上)QRS波が心拍数100〜250回/分で連続する。
- 4.
心停止を発見した際の初期対応として、反応確認と応援要請・AED要請の後、直ちに開始すべき処置はである。
- 5.
VFや無脈性VTに対する薬物療法では、まずを投与し、難治例にはアミオダロンを併用する。
- 6.
心房細動の心電図所見では、P波が消失し基線に細かい不規則な(細動波)が出現し、R-R間隔は絶対不整となる。
- 7.
心房細動では左心耳に血栓が形成され、これが遊離して脳動脈を閉塞することでを引き起こす。
- 8.
非弁膜症性心房細動における脳梗塞予防の第一選択薬は(直接経口抗凝固薬)である。
- 9.
心房細動患者の脳梗塞リスク評価には、うっ血性心不全・高血圧・75歳以上・糖尿病・脳卒中既往からなるスコアが用いられる。
- 10.
除細動の適応がなく、CPRとアドレナリン投与を中心に対応する致死性不整脈には、心静止と(無脈性電気活動)がある。
