StudyNurse

心房細動はなぜ怖い?左心耳の血栓が脳に飛ぶメカニズムを徹底解説

看護師国家試験 第115午後14 / 必修問題

国試問題にチャレンジ

115午後14

心房細動について正しいのはどれか。

  1. 1.心電図でP波を認める。
  2. 2.心房の興奮は規則的である。
  3. 3.心房内に血栓を形成しやすい。
  4. 4.房室結節の興奮伝導障害である。

対話形式の解説

博士博士
今日は国試頻出の心房細動について学ぶぞ。略してAF(atrial fibrillation)と呼ばれる、最もポピュラーな不整脈の一つじゃ。
サクラサクラ
心房細動って、心房が細かく震えるってイメージですけど、具体的にはどんな状態なんですか?
博士博士
良い質問じゃ。正常なら洞結節が1分間に60〜100回のリズムを刻むが、心房細動では心房内のあちこちで毎分400〜600回もの無秩序な電気的興奮が発生してしまうのじゃ。心房は協調した収縮ができず、まるで痙攣しているように震えるだけになる。
サクラサクラ
えっ、400〜600回!?そんなに速い興奮が全部心室に伝わったら大変なことになりませんか?
博士博士
その通り、もし全部伝わったら心臓は止まってしまう。じゃが幸い、房室結節が「ふるい」のように働いて興奮を間引きしてくれる。それでも心室への伝導は不規則になるから、脈は絶対不整となり「RR間隔が一定でない」のが特徴なのじゃ。
サクラサクラ
心電図ではどう見えるんですか?
博士博士
ポイントは3つ。1つ目、P波が消失する。洞結節からの規則的興奮が失われるからじゃ。2つ目、基線が細かく揺れる「f波(細動波)」がみられる。3つ目、QRSの間隔がバラバラ、つまり絶対不整じゃ。この3点セットを覚えれば心房細動の心電図は見抜けるぞ。
サクラサクラ
なるほど。じゃあ今回の問題で「心房内に血栓を形成しやすい」が正解なのはどうしてですか?
博士博士
ここが心房細動の臨床的に最も重要なところじゃ。心房が有効に収縮しないと、心房内、特に左心房の「左心耳」という袋状の構造に血液がよどんで停滞する。すると血が固まりやすくなり、血栓ができるのじゃ。
サクラサクラ
血栓ができると、それが流れて行っちゃうんですか?
博士博士
その通り。左心耳でできた血栓が剥がれると、左心室から大動脈を経由して全身に飛んでいく。最も恐ろしいのが脳動脈に詰まる「心原性脳塞栓症」で、突然発症し梗塞範囲も広く、重い後遺症や死亡につながりやすい。野球の長嶋茂雄さんやサッカーのオシム監督の脳梗塞もこのタイプじゃと言われておる。
サクラサクラ
だから抗凝固療法が必要なんですね!
博士博士
その通り。塞栓症リスクをCHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアで評価し、リスクが高ければワルファリンやDOAC(直接経口抗凝固薬:ダビガトラン、リバーロキサバンなど)で予防する。ちなみにCHADS2は、うっ血性心不全(C)、高血圧(H)、75歳以上(A)、糖尿病(D)、脳卒中既往(S2)の頭文字じゃよ。
サクラサクラ
他の選択肢も整理したいです。「P波を認める」「興奮が規則的」「房室結節の伝導障害」はどうして違うんですか?
博士博士
順番に見ていこう。P波は前述のとおり消失するから誤り。心房の興奮は無秩序で不規則だから「規則的」も誤り。房室結節の伝導障害は房室ブロックのことで、これは別の不整脈じゃ。心房細動の本態はあくまで「心房の異常興奮」であって、伝導路の障害ではないのじゃ。
サクラサクラ
治療は抗凝固以外にもあるんですか?
博士博士
あるぞ。心拍数を抑える「レートコントロール(β遮断薬・Ca拮抗薬・ジギタリスなど)」と、洞調律に戻そうとする「リズムコントロール(抗不整脈薬・カテーテルアブレーション・電気的除細動)」じゃ。最近はカテーテルアブレーションで肺静脈を隔離する治療が普及してきており、根治を目指せるケースも増えておる。
サクラサクラ
看護師として観察するポイントは何ですか?
博士博士
脈の不整・動悸・息切れ・易疲労感などの自覚症状の確認に加え、抗凝固薬を内服中の患者では出血傾向の観察が極めて重要じゃ。歯肉出血、鼻出血、皮下出血、血尿、黒色便などのサインを見逃さないこと。また転倒は頭蓋内出血の引き金になるから、転倒予防の指導も忘れずにのう。
サクラサクラ
心房細動って単なる不整脈じゃなくて、脳梗塞予防や生活全体に関わる大きなテーマなんですね。看護の役割もよく理解できました!

POINT

心房細動の病態生理(無秩序な心房興奮・P波消失・不規則RR間隔)と、それに伴う左心房内血栓形成リスクを理解しているかを問う問題。塞栓症予防としての抗凝固療法の必要性につながる基礎知識である。

解答・解説

正解は3です

問題文:心房細動について正しいのはどれか。

解説:正解は 3 です。心房細動(atrial fibrillation:AF)は、心房内で1分間に400〜600回もの無秩序な電気的興奮が発生し、心房全体が協調した収縮を失う上室性不整脈である。心房が有効に収縮しないため、特に左心房の左心耳に血液が滞留しやすく、血栓(凝血塊)が形成されやすい。この血栓が剥がれて全身に飛ぶと心原性脳塞栓症(cardioembolic stroke)などの重篤な塞栓症を引き起こすため、抗凝固療法による塞栓予防が治療の柱となる。

選択肢考察

  1. ×1.  心電図でP波を認める。

    心房細動では洞結節からの規則的な興奮が失われ、心房が無秩序に興奮するため、正常洞調律で見られる明瞭なP波は消失する。代わりに基線が細かく揺れる「f波(細動波)」が認められ、RR間隔も絶対不整となるのが心電図上の特徴である。

  2. ×2.  心房の興奮は規則的である。

    心房細動の本態は、肺静脈起源などの異所性興奮や多発性リエントリーによって心房が毎分400〜600回もの不規則かつ無秩序な興奮を起こすことである。心房は痙攣様に震えるだけで一定リズムの収縮を行わない。

  3. 3.  心房内に血栓を形成しやすい。

    心房が有効に収縮しないため、特に左心耳で血流が著しく停滞し血栓が形成されやすい。形成された血栓が遊離すると脳動脈に詰まって心原性脳塞栓症を起こす危険があり、CHADS2やCHA2DS2-VAScスコアを用いてリスク評価を行い、ワルファリンや直接経口抗凝固薬(DOAC)による抗凝固療法を導入する。

  4. ×4.  房室結節の興奮伝導障害である。

    房室結節の伝導障害は房室ブロック(I度・II度・III度)に該当し、心房細動とは別の病態である。心房細動では心房から無秩序に押し寄せる興奮の一部が房室結節でフィルタリングされて心室に伝わるため、結果として心室応答(脈拍)も絶対不整となる。

心房細動は加齢・高血圧・心不全・弁膜症・甲状腺機能亢進症・飲酒などが誘因となり、加齢とともに有病率が高くなる代表的な不整脈である。治療は大きく分けて「抗凝固療法(塞栓予防)」「レートコントロール(心拍数調節:β遮断薬・Ca拮抗薬・ジギタリス)」「リズムコントロール(洞調律維持:抗不整脈薬・カテーテルアブレーション・電気的除細動)」の3本柱で構成される。塞栓症リスクの層別化にはCHADS2スコア(うっ血性心不全・高血圧・75歳以上・糖尿病・脳卒中既往)やCHA2DS2-VAScスコアが用いられ、点数が高いほど抗凝固療法の適応が強くなる。看護師は脈拍の不整・動悸・易疲労感の観察に加え、抗凝固薬服用中の出血傾向(歯肉出血・皮下出血・血尿・黒色便)の早期発見が重要である。

心房細動の病態生理(無秩序な心房興奮・P波消失・不規則RR間隔)と、それに伴う左心房内血栓形成リスクを理解しているかを問う問題。塞栓症予防としての抗凝固療法の必要性につながる基礎知識である。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。