救急医療体制
健康支援と社会保障制度 / 医療法と医療提供体制
解説
今回は日本の救急医療体制について解説します。救急医療体制とは、突然の病気やけがで緊急に医療を必要とする人に対して、症状の重さに応じて適切な医療機関で迅速に治療を受けられるように整備された仕組みのことです。日本では患者の重症度に応じて医療機関の役割を分担する三段階の階層構造がとられており、これに広域搬送体制が加わって全体が成り立っています。なお、救急医療体制は健康増進計画ではなく、医療法に基づき都道府県が策定する医療計画に位置付けられており、5事業(救急医療・災害医療・へき地医療・周産期医療・小児医療)の一つとして整備されています。
救急医療体制の三段階
日本の救急医療体制は、患者の重症度に応じて初期(一次)救急医療・第二次救急医療・第三次救急医療の3つの段階に区分されています。軽症の患者から重篤な患者まで、それぞれに適した医療機関で対応できるように役割分担されているのが特徴で、限られた医療資源を効率的に活用するための仕組みです。
初期(一次)救急医療体制
初期救急医療体制は、入院や手術を必要としない比較的軽症の患者に対し、外来診療で対応する体制です。主に休日夜間急患センターや在宅当番医制がこれを担います。休日夜間急患センターは市町村などが設置し、休日や夜間に医師・看護師が常駐して外来診療を行う施設です。在宅当番医制は地区医師会などが当番制で休日や夜間の診療にあたる仕組みで、地域のかかりつけ医が交代で軽症患者を診察します。
第二次救急医療体制
第二次救急医療体制は、入院や手術を必要とする中等症の救急患者に対して24時間体制で対応する仕組みです。代表的なのが病院群輪番制で、地域内の複数の病院があらかじめ当番を決めて交代で救急患者を受け入れます。これにより一つの病院に負担が集中するのを防ぎ、24時間の受け入れ体制を維持できます。もう一つの方式が共同利用型病院方式で、病院の一部を地域の開業医が共同で利用して救急医療を提供します。
第三次救急医療体制
第三次救急医療体制は、重症・重篤で生命の危機にある患者を24時間体制で受け入れる最も高度な救急医療です。中心となる施設が救命救急センターであり、心筋梗塞・脳卒中・重症外傷・重症熱傷など、二次救急では対応困難な患者を受け入れます。さらに広範囲熱傷・指肢切断・急性中毒など特に高度な治療を要する患者に対応する高度救命救急センターも整備されています。
プレホスピタルケアと救急医療情報センター
救急医療体制を支える重要な要素として、プレホスピタルケア(病院前救護)があります。プレホスピタルケアとは、患者が病院に到着する前に現場や搬送途中で行われる救命処置のことをいい、救急隊員や救急救命士による処置だけでなく、一般市民によるAED(自動体外式除細動器)の使用や心肺蘇生法の実施も含まれます。一次救命処置(BLS)の普及により、心停止傷病者の救命率向上に大きく寄与しています。 また、救急患者を適切な医療機関へ迅速に搬送するため、救急医療情報センターが都道府県を整備主体として設置されています。救急医療情報センターは、地域内の医療機関の受入れ可能状況や診療科目、空床情報などをリアルタイムに集約・提供し、救急隊や医療機関の照会に応じて適切な搬送先を案内する役割を担います。
広域救急搬送体制
三段階の救急医療体制を補完するものとして、広域救急搬送体制があります。これは離島やへき地など医療資源の乏しい地域から、専門的治療が可能な医療機関へ患者を迅速に搬送するための仕組みで、ドクターヘリ事業が代表例です。ドクターヘリには医師と看護師が同乗し、現場や搬送中から医療行為を開始できるため、救命率の向上と後遺症の軽減につながります。
看護師の役割
救急医療の現場では、限られた時間と資源の中で多数の患者に対応するため、緊急度・重症度に基づいて治療の優先順位を判断するトリアージが重要です。看護師はトリアージの実施、急変時の初期対応、家族への精神的支援、消防機関や他施設との連携など多岐にわたる役割を担います。救急医療体制の階層構造を理解しておくことで、患者の状態に応じた転院搬送の判断や地域連携にも適切に関わることができます。
まとめ
日本の救急医療体制は、軽症患者を外来で診る初期(一次)救急、入院・手術を要する患者を受け入れる第二次救急、重篤患者に対応する第三次救急という三段階の階層構造で構成されています。初期は休日夜間急患センターや在宅当番医制、第二次は病院群輪番制や共同利用型病院方式、第三次は救命救急センターが担い、これに広域搬送のドクターヘリが加わります。さらに、医療計画に位置付けられた仕組みとして、プレホスピタルケアや都道府県が整備する救急医療情報センターが救急医療体制全体を支えています。各段階を担う施設名と内容の組合せは国試で頻出ですので、確実に整理しておきましょう。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
日本の救急医療体制は、患者の重症度に応じて初期(一次)・第二次・の三段階に区分されている。
- 2.
外来診療で対応可能な軽症の救急患者を診る体制をといい、休日夜間急患センターや在宅当番医制が代表である。
- 3.
入院や手術を要する中等症の救急患者を24時間体制で受け入れる第二次救急医療体制の代表的な仕組みをという。
- 4.
病院の一部を地域の開業医が共同で利用して救急医療を提供する第二次救急の方式をという。
- 5.
重症・重篤で生命の危機にある患者を24時間体制で受け入れる第三次救急医療の中心施設はである。
- 6.
広範囲熱傷・指肢切断・急性中毒など特に高度な治療を要する患者に対応する施設をという。
- 7.
離島やへき地から専門医療機関への迅速な搬送を担い、医師と看護師が同乗する広域救急搬送の代表例はである。
- 8.
救急現場で多数の患者に対し、緊急度・重症度に基づき治療の優先順位を判断することをという。
- 9.
患者が病院に到着する前に現場や搬送中に行われる救命処置で、一般市民によるAED使用も含まれるものを(病院前救護)という。
- 10.
地域内の医療機関の受入れ状況などを集約し、救急搬送先の案内を行う救急医療情報センターの整備主体はである。
- 11.
救急医療体制は健康増進計画ではなく、医療法に基づき都道府県が策定するに位置付けられている。
