シックハウスとじん肺
健康支援と社会保障制度 / 労働法規と職業衛生
解説
室内空気汚染と粉じん吸入による健康障害は、生活環境と職業環境の両面から看護師が理解しておくべき重要な健康問題です。今回はシックハウス症候群とじん肺について解説します。
室内空気汚染と健康影響
住宅の高気密化や新建材の普及により、室内空気の質が居住者の健康に大きな影響を与えるようになりました。室内空気を汚染する主な要因には、建材から揮発する化学物質、カビ、ダニ、たばこ煙、燃焼器具から発生する二酸化窒素や一酸化炭素、防虫剤、芳香剤などがあります。なお大気汚染領域の区別として、水質汚濁では有機水銀、土壌汚染ではカドミウムが代表的ですが、室内空気汚染ではホルムアルデヒドが代表物質となります。
シックハウス症候群
定義と原因物質
シックハウス症候群とは、新築や改築した住宅の建材・内装材・家具などから揮発する化学物質やカビ・ダニなどにより室内空気が汚染され、居住者に頭痛、めまい、目やのどの刺激感、倦怠感、皮膚炎、気道症状などの健康障害を引き起こす疾患群をいいます。代表的な原因物質はホルムアルデヒドで、合板、接着剤、壁紙、断熱材などから揮発します。そのほかトルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、防虫剤に含まれるパラジクロロベンゼン、可塑剤のフタル酸エステル類などの**揮発性有機化合物(VOC)**も原因となります。
規制と対策
厚生労働省は13物質について室内濃度指針値を定めており、ホルムアルデヒドは0.08ppm(0.1mg/㎥)以下とされています。2003年の建築基準法改正では、ホルムアルデヒドを発散する建材の使用制限、24時間換気システムなどの機械換気設備の設置義務化、シロアリ駆除剤クロルピリホスの使用禁止が定められました。建材についてはF☆☆☆☆等級の低VOC建材の使用が推奨されています。
化学物質過敏症との区別
化学物質過敏症(MCS)は、ごく微量の化学物質曝露でも多彩な症状を呈する病態で、シックハウス症候群と関連はあるものの別概念として区別されます。看護では症状の聞き取りの際に、転居、新築、リフォームの有無を確認することが重要です。
じん肺
定義と病態
じん肺とは、鉱物性の粉じんを長期間吸入することにより、肺胞や細気管支に粉じんが沈着し、肺組織が線維化して呼吸機能が低下する代表的な職業病です。
分類と原因物質
原因物質により、遊離珪酸の吸入による珪肺(採石、鉱山、トンネル工事)、アスベスト吸入による石綿肺、石炭粉じんによる炭坑夫肺、金属粉じんによる溶接工肺などに分類されます。
アスベストと関連疾患
アスベストは天然産の繊維状けい酸塩鉱物で、断熱材やブレーキなどに使用されてきました。肺に沈着すると石綿肺だけでなく、肺がんや悪性胸膜中皮腫の原因となります。日本では2006年以降原則として製造・使用が禁止されましたが、過去に使用された建材の解体現場における曝露管理が現在の重要課題です。
法規制と合併症
じん肺法では定期健康診断の実施とじん肺管理区分の制定が定められ、石綿障害予防規則によりアスベストの曝露防止対策が規定されています。じん肺の合併症には続発性気管支炎、結核、気胸、肺がん、肺性心があります。
まとめ
シックハウス症候群は住環境中の化学物質による健康障害で、ホルムアルデヒドが代表的な原因物質であり、建築基準法の改正により24時間換気が義務化されています。じん肺は粉じん吸入による職業性肺疾患で、珪肺、石綿肺などに分類され、アスベストは肺がんや悪性胸膜中皮腫の原因となるため、じん肺法や石綿障害予防規則による管理が行われています。生活歴・職業歴の聴取が看護アセスメントの鍵となります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
シックハウス症候群の代表的な原因物質はであり、合板や接着剤、壁紙などから揮発する。
- 2.
厚生労働省が定める室内のホルムアルデヒド濃度指針値はppm以下である。
- 3.
2003年の建築基準法改正により、住宅にはシステムなどの機械換気設備の設置が義務化された。
- 4.
微量の化学物質曝露でも多彩な症状を呈する病態で、シックハウス症候群とは区別される疾患を(MCS)という。
- 5.
じん肺は鉱物性の粉じんを長期間吸入することで、肺組織がし呼吸機能が低下する職業病である。
- 6.
遊離珪酸の吸入を原因とするじん肺をといい、採石や鉱山、トンネル工事で発生しやすい。
- 7.
アスベスト曝露が原因となる悪性腫瘍として、肺がんとが知られている。
- 8.
粉じん作業従事者の健康管理を目的に、定期健診とじん肺管理区分を定めた法律はである。
- 9.
2003年の建築基準法改正では、シロアリ駆除剤として用いられていたの使用が禁止された。
