感染性因子と細菌感染
疾病の成り立ちと回復の促進 / 病因・病態
解説
感染性因子(病原体)とは、ヒトに感染して疾患を引き起こす微小な生物や粒子の総称です。今回は感染性因子の分類と、代表的な細菌感染症である急性扁桃炎について解説します。
感染性因子の4分類
感染性因子は、その構造と性質によって細菌、真菌、ウイルス、プリオンの4つに大別されます。それぞれ細胞構造や増殖様式が異なるため、有効な薬剤や消毒方法も大きく変わってきます。
細菌
細菌は核膜を持たない原核生物で、ペプチドグリカンからなる細胞壁と細胞膜を有しています。自己増殖が可能で、適切な環境があれば宿主細胞の外でも増えることができます。細菌に対する抗菌薬は、この細胞壁合成やタンパク質合成を阻害することで効果を発揮します。
真菌
真菌は核膜で囲まれた核を持つ真核生物で、細胞壁の主成分はβ-グルカンです。細菌とは細胞壁の構造が根本的に異なるため、細菌用の抗菌薬は真菌には無効です。治療には、エルゴステロール合成を阻害するアゾール系、β-グルカン合成を阻害するエキノキャンディン系、そして細胞膜に結合して穴をあけるポリエン系(アムホテリシンBなど)が用いられます。
ウイルス
ウイルスはDNAまたはRNAの核酸とそれを包むタンパク質のカプシドのみで構成され、細胞構造を持ちません。自力では増殖できず、宿主細胞内に侵入してその機構を利用することでのみ増殖します。
プリオン
プリオンは核酸を持たず、異常タンパク質のみからなる感染性因子です。通常の滅菌法では不活化が困難で、134℃で1時間以上のオートクレーブや強アルカリ処理が必要となります。
急性扁桃炎
急性扁桃炎は口蓋扁桃に起こる急性の炎症で、原因はウイルス性と細菌性に分けられます。ウイルス性ではアデノウイルス、EBウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルスなどが原因となります。細菌性で最も重要なのがA群β溶血性連鎖球菌(GAS、化膿レンサ球菌)で、特に学童から若年成人に多くみられます。他に黄色ブドウ球菌や肺炎球菌も原因となります。
診断と治療
診断にはGASの迅速抗原検査が広く用いられます。臨床的にはCentor criteria(発熱、咽頭滲出物、前頸部リンパ節腫脹、咳嗽がないこと)が参考になります。治療はペニシリン系抗菌薬を10日間内服することが基本です。
合併症
GAS扁桃炎では、リウマチ熱や急性糸球体腎炎といった続発症のほか、猩紅熱や扁桃周囲膿瘍を起こすことがあります。扁桃周囲膿瘍では開口障害、含み声、片側に強い痛みが現れ、切開排膿が必要です。
まとめ
感染性因子は細菌、真菌、ウイルス、プリオンの4つに分類され、それぞれ細胞構造や有効な薬剤が異なります。細菌と真菌は細胞壁の成分が異なるため、抗菌薬は真菌には無効である点に注意が必要です。急性扁桃炎の細菌性原因としてはA群β溶血性連鎖球菌が最も重要で、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの続発症を防ぐためにペニシリン系の十分な投与が行われます。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
細菌は核膜を持たない生物であり、細胞壁の主成分はである。
- 2.
真菌は核膜で囲まれた核を持つ真核生物で、細胞壁にはβ-を含む。
- 3.
ウイルスは核酸とと呼ばれるタンパク質の殻からなり、宿主細胞内でのみ増殖する。
- 4.
は核酸を持たず異常タンパク質のみからなる感染性因子で、通常の滅菌では不活化が困難である。
- 5.
真菌治療薬のうち、エルゴステロール合成を阻害するのは系である。
- 6.
細菌性急性扁桃炎の原因菌として最も重要なのはである。
- 7.
GAS扁桃炎の続発症として、心臓弁膜症の原因となると、血尿や浮腫をきたす急性がある。
- 8.
急性扁桃炎の細菌性を示唆するCentor criteriaの項目には、発熱、咽頭滲出物、前頸部リンパ節腫脹、がないことが含まれる。
- 9.
GAS扁桃炎の治療には系抗菌薬を10日間投与する。
- 10.
扁桃周囲膿瘍では開口障害、含み声、片側性の強い痛みがみられ、治療としてが行われる。
