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血糖管理の指標と測定

成人看護学 / 内分泌・代謝

解説

血糖管理とは、糖尿病をはじめとする耐糖能異常をもつ患者において、血液中のブドウ糖(血糖)濃度を適切な範囲に保つよう調整することです。今回は血糖管理の指標と測定について解説します。

糖尿病と血糖管理の必要性

糖尿病とは、インスリンの作用不足によって慢性的な高血糖をきたす代謝疾患です。高血糖が持続すると、網膜症、腎症、神経障害といった細小血管合併症や、心筋梗塞、脳梗塞などの大血管障害を引き起こします。これらを防ぐためには、日々の血糖値だけでなく、長期的な血糖の平均値を把握し、適切なコントロール状態を維持することが不可欠です。そのため、看護師は血糖管理に用いる複数の指標と、その測定方法を理解しておく必要があります。

血糖管理の主な指標

HbA1c(ヘモグロビンA1c)

HbA1cは、赤血球内のヘモグロビンにブドウ糖が非酵素的に結合してできた糖化蛋白の割合を示す指標です。赤血球の寿命は約120日であるため、HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖を反映します。食事や運動の直前直後の影響を受けにくく、長期的な血糖コントロールの評価に最も用いられます。

日本糖尿病学会の糖尿病診断基準では、①空腹時血糖126mg/dL以上、②75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値200mg/dL以上、③随時血糖200mg/dL以上、④HbA1c(NGSP値)6.5%以上、のいずれかを満たし、別日または同日に複数項目を確認することで糖尿病と診断します。

グリコアルブミンと自己血糖

グリコアルブミンは血清アルブミンとブドウ糖が結合した糖化蛋白で、過去約2週間の平均血糖を反映します。HbA1cより短期の変動を把握でき、妊娠中や血糖変動が激しい例で有用です。自己血糖値は瞬間の値を示し、即時の判断に用いられます。

HbA1cが実際と乖離する病態

HbA1cは赤血球寿命に依存するため、赤血球の代謝が変動すると見かけの値が真の血糖と乖離します。赤血球新生が亢進し若い赤血球が増える状態、すなわち溶血性貧血、出血後、妊娠後期、エリスロポエチン投与後などでは、糖化を受けていない新生赤血球が多くなるため偽低値を示します。一方、赤血球寿命が延長する鉄欠乏性貧血や脾摘後では、糖化が進んだ古い赤血球が多く残るため偽高値となります。これらの病態をもつ患者ではグリコアルブミンなど他の指標との併用が望まれます。

自己血糖測定(SMBG)

SMBG(Self Monitoring of Blood Glucose)とは、患者自身が指先などから少量の毛細血管血を採取し、簡易測定器で血糖値を測定する方法です。インスリン療法を行う糖尿病患者で特に重要で、低血糖や高血糖を即時に把握し、インスリン量や食事内容の調整に役立てます。

手順としては、まず流水と石けんで手洗いを行い、アルコール綿で穿刺部位を消毒し十分に乾燥させます。穿刺は神経が少なく痛みの少ない指の側面で行い、十分な血液をセンサーに吸引させて測定し、結果を記録します。なお、CGM(持続血糖モニター)やFGMは間質液中のグルコースを測定するため、急激な血糖変動時には実血糖値と20〜30分のタイムラグが生じる点に注意が必要です。

低血糖の症状と対応

低血糖は一般に血糖70mg/dL未満を指します。症状は段階的に現れ、まず血糖が約70mg/dL以下になるとカテコラミン分泌による自律神経症状(冷汗、動悸、頻脈、手指振戦、顔面蒼白、強い空腹感、不安感)が出現します。さらに50mg/dL以下になると脳のブドウ糖不足による中枢神経症状(頭痛、集中力低下、眠気、異常行動、痙攣、意識障害)が現れ、30mg/dL以下では昏睡に至ります。

対応として、意識があればブドウ糖10〜20gを経口摂取させます。α-グルコシダーゼ阻害薬を服用中の患者では二糖類の分解が遅れるため、必ずブドウ糖そのものを与える必要があります。意識がない場合は50%ブドウ糖20mLの静脈内注射、またはグルカゴンの筋肉内注射を行います。β遮断薬服用例や長期糖尿病例では自律神経症状を欠く無自覚性低血糖に注意します。

1型糖尿病とシックデイ

1型糖尿病は自己免疫機序により膵β細胞が破壊され、インスリン分泌が絶対的に欠乏する疾患で、小児・若年発症が多くみられます。治療は基礎インスリンと追加インスリンを組み合わせる強化インスリン療法が基本です。

感染症などで体調を崩した日(シックデイ)には食事摂取が低下しても肝臓からの糖放出やストレスホルモンの影響で高血糖になりやすいため、インスリンを自己判断で中止せず、水分・糖分の補給と頻回の血糖測定を行い、早めに医療機関を受診することが原則です。

まとめ

血糖管理の指標にはHbA1c、グリコアルブミン、自己血糖があり、それぞれ反映する期間が異なります。HbA1cは赤血球代謝の影響を受けるため偽低値・偽高値を生じる病態を理解しておくことが重要です。SMBGの正しい手技を指導し、低血糖の段階的症状と緊急時の対応、シックデイルールを患者に伝えることが、看護師に求められる血糖管理の基本となります。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    HbA1cは過去( )か月の平均血糖を反映する。

  2. 2.

    糖尿病診断基準のHbA1c値は( )%以上である。

  3. 3.

    鉄欠乏性貧血ではHbA1cは偽( )値となる。

  4. 4.

    溶血性貧血ではHbA1cは偽( )値となる。

  5. 5.

    過去約2週間の平均血糖を反映する指標は(       )である。

  6. 6.

    SMBGで穿刺するのは痛みが少ない指の( )である。

  7. 7.

    低血糖は一般に血糖( )mg/dL未満をいう。

  8. 8.

    低血糖で意識がない場合は( )%ブドウ糖20mLを静注する。

  9. 9.

    α-GI服用中の低血糖時には必ず(    )を経口投与する。

  10. 10.

    シックデイでもインスリンは自己判断で(    )。

血糖管理の指標と測定」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。