薬物相互作用とTDM
疾病の成り立ちと回復の促進 / 腫瘍・薬理・その他
解説
今回は薬物相互作用と治療薬物モニタリング(TDM)について解説します。薬物相互作用とは、複数の薬物や食品、飲料を併用することで薬の効果が増強あるいは減弱する現象をいい、副作用や治療失敗の原因となります。看護師は服薬指導や観察を通じて、これらを未然に防ぐ役割を担います。
薬物と食品・飲料の相互作用
代表的な相互作用として、グレープフルーツジュースは小腸の代謝酵素CYP3A4を阻害するため、カルシウム拮抗薬(降圧薬)、スタチン系脂質異常症薬、シクロスポリンなどの免疫抑制薬の血中濃度を上昇させ、副作用を強めます。一方、セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)はCYP3A4を誘導するため、ジゴキシンや経口避妊薬などの薬効を減弱させます。抗凝固薬のワルファリンは、ビタミンKを多く含む納豆・青汁・クロレラの摂取で効果が減弱するため、摂取制限が必要です。
飲料や食品との具体的な注意点
テトラサイクリン系・ニューキノロン系抗菌薬、ビスホスホネート、鉄剤は、牛乳・乳製品や制酸剤に含まれるカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄などの多価金属イオンとキレートを形成して難溶性となり、吸収が阻害されます。服用は食事や乳製品から2〜3時間ずらします。MAO阻害薬とチーズ・赤ワインなどのチラミン含有食品の併用は高血圧クリーゼを起こします。テオフィリンとカフェイン、抗ヒスタミン薬とアルコールの併用は中枢への作用が増強され、眠気やふらつきが強まります。
TDM(治療薬物モニタリング)
TDMとは、治療域と中毒域が近接し血中濃度の個人差が大きい薬物について、血中濃度を測定し投与量を調整することで有効性と安全性を両立させる手法です。対象薬物には、強心薬のジゴキシン(治療域0.5〜1.5ng/mL、中毒で不整脈・悪心・黄視などの視覚異常)、気分安定薬の炭酸リチウム(治療域0.4〜1.0mEq/L、1.5mEq/L超で振戦・意識障害)、テオフィリン、抗てんかん薬のフェニトインやバルプロ酸、アミノグリコシド系のゲンタマイシンやバンコマイシン、免疫抑制薬のシクロスポリンやタクロリムス、メトトレキサート大量療法などがあります。
採血のタイミングと看護
多くの薬物では次回投与直前の最低血中濃度であるトラフ値で評価します。バンコマイシンは近年AUC/MICガイドによる管理が推奨されています。看護師は採血時刻と最終投与時刻を必ず記録し、定常状態に達してから測定することが大切です。
まとめ
薬物相互作用は食品や他剤との組み合わせで薬効が変化する現象で、CYP3A4阻害・誘導、ビタミンK拮抗、キレート形成、中枢抑制増強などが国試頻出です。TDMはジゴキシン、リチウム、テオフィリン、抗てんかん薬、アミノグリコシド系、免疫抑制薬が対象で、トラフ値での評価が基本となります。看護師は服薬状況、食事内容、採血時刻を正確に把握し、安全な薬物療法を支えることが求められます。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
グレープフルーツジュースは小腸の代謝酵素であるを阻害し、カルシウム拮抗薬などの血中濃度を上昇させる。
- 2.
ワルファリン服用中は、納豆や青汁などに含まれるの摂取で薬効が減弱する。
- 3.
MAO阻害薬とチーズや赤ワインなどの含有食品の併用は、高血圧クリーゼを引き起こす。
- 4.
テトラサイクリン系抗菌薬や鉄剤は、牛乳中のカルシウムなどの多価金属イオンとを形成し吸収が阻害される。
- 5.
CYP3A4を誘導して薬効を減弱させるハーブを(セイヨウオトギリソウ)という。
- 6.
治療域と中毒域が近接した薬物の血中濃度を測定し投与量を調整する手法を(治療薬物モニタリング)という。
- 7.
強心薬のは中毒で不整脈や視覚異常を起こすためTDMの対象である。
- 8.
炭酸リチウムの治療域は0.4〜1.0mEq/Lで、1.5mEq/Lを超えるとや意識障害が出現する。
- 9.
TDMでは多くの場合、次回投与直前の最低血中濃度である値で評価する。
- 10.
アミノグリコシド系抗菌薬のは近年AUC/MICガイドによる管理が推奨されている。
