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在宅HPN・胃瘻管理

地域・在宅看護論 / 在宅医療機器管理

解説

在宅HPN・胃瘻管理とは、経口摂取が困難な療養者に対して、自宅で中心静脈栄養や経管栄養を継続するための支援全般を指します。今回は在宅中心静脈栄養法〈HPN〉と胃瘻管理について解説します。

在宅中心静脈栄養法〈HPN〉

**在宅中心静脈栄養法〈HPN:Home Parenteral Nutrition〉**とは、消化管が利用できない、あるいは経腸栄養だけでは栄養維持が困難な患者に対して、自宅で中心静脈から高カロリー輸液を投与する方法です。短腸症候群や進行がん、慢性的な消化管機能不全のある療養者で導入されます。中心静脈とは上大静脈や下大静脈など心臓に近い太い静脈のことで、ここに輸液することで高浸透圧の栄養液を希釈しながら全身に送ることができます。

HPNで用いるカテーテルの種類

HPNで使用されるカテーテルには、体外に露出するヒックマンカテーテルやブロビアックカテーテル、肘の静脈から挿入するPICC(末梢挿入式中心静脈カテーテル)、そして皮下に完全に埋め込む**CVポート(皮下埋込み式ポート)**があります。CVポートは直径2〜3cm程度の小型リザーバー本体を前胸部などの皮下に埋め込み、カテーテル先端を中心静脈に留置する完全体内留置型のデバイスです。使用時にはヒューバー針と呼ばれる専用の非コアリング針を皮膚越しに穿刺して薬液を注入し、使用後に抜針すれば体外に露出する構造物がなくなります。このため創部保護シートなしで入浴やシャワー浴が可能で、QOLを高く維持できる点が大きな利点です。ヒューバー針は針先が特殊な形状をしており、ポートのシリコン隔壁を穿刺してもコア(シリコン片)を削り取らないように設計されています。通常の注射針を用いると隔壁が損傷するため、必ずヒューバー針を使用します。

HPNの輸液供給と在宅支援

HPNで使用する高カロリー輸液は、医師の処方箋に基づいて保険薬局の薬剤師が無菌調剤することができ、在宅医療を支える重要な仕組みとなっています。患者や家族がすべてを自己管理するのではなく、訪問看護師、訪問薬剤師、在宅医が連携して支援します。看護のポイントは、カテーテル刺入部や穿刺部の清潔保持と感染予防の手技指導、輸液終了後のヘパリンロックなどによるカテーテル閉塞対策、そして誤抜去・事故抜去の防止です。CVポートは長期間(数年単位)留置でき、通常は1週間に1回程度の穿刺針交換で運用します。合併症としてポート感染、カテーテル閉塞、カテーテル断裂を起こすピンチオフ症候群、血栓形成などがあり、発熱や刺入部の発赤・腫脹を認めた際は速やかに受診するよう指導します。

胃瘻〈PEG〉の管理

**胃瘻〈PEG:Percutaneous Endoscopic Gastrostomy〉**とは、内視鏡下に腹壁から胃内へ直接カテーテルを留置し、栄養剤や薬剤を投与するための経路です。脳血管障害後の嚥下障害や神経難病など、経口摂取が困難で長期の経管栄養が必要な患者に造設されます。

胃瘻カテーテルの種類

胃瘻カテーテルは「胃内固定」と「体外固定」の組み合わせで4種類に分類されます。胃内固定はバルーン型(生理食塩水で膨らませる)かバンパー型(柔らかい円盤状)、体外固定はチューブ型(外に長いチューブが出る)かボタン型(皮膚面でフラット)の組み合わせです。在宅では交換が容易なバルーン・ボタン型が多く用いられます。

胃瘻栄養注入時の指導

家族指導の要点は、注入前の胃内残渣の確認、上体を30〜45度挙上した体位で注入すること、注入後30分から1時間程度の座位保持による逆流防止、瘻孔周囲のスキンケア、そして合併症の早期発見です。注入後には白湯(約20〜30mL)でフラッシュすることで、チューブ内腔に残った栄養剤を洗い流し、細菌繁殖や凝固による閉塞を防ぎます。市販の経腸栄養剤だけでなく、家族と同じ食事をミキサーにかけてペースト状にしたミキサー食も注入可能で、家庭の味を共有でき、自然な食材の栄養を摂れる利点があります。粘度が高い場合はカテーテル閉塞を防ぐため注入速度や粘度を調整します。注入速度は成人で200〜400mL/時程度が目安です。

胃瘻の合併症

重要な合併症として、体外固定が強すぎる場合に胃内固定具が胃壁に埋没してしまうバンパー埋没症候群があります。固定が緩すぎると瘻孔からの漏れや皮膚炎の原因となります。誤抜去時には瘻孔が数時間で閉鎖し始めるため、すぐに医療機関を受診するよう指導します。

ALS患者における経口摂取と胃瘻の併用

筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉は運動ニューロンが選択的に変性する進行性の神経難病で、進行に伴い球麻痺による嚥下障害をきたします。球麻痺の「球」は延髄を指し、延髄の運動神経核(舌咽神経・迷走神経・舌下神経)の障害により舌・咽頭・喉頭の運動が障害されます。胃瘻による経管栄養を導入した後も、QOL維持の観点から可能な範囲で経口摂取を続けることが重要です。

誤嚥を防ぐ基本姿勢は頸部前屈位(顎を引いた姿勢)です。この姿勢では嚥下時に喉頭蓋が喉頭口を覆いやすく、食塊の気道侵入が物理的に防がれます。逆に顎を上げる姿勢では喉頭口が開いて誤嚥しやすくなります。リクライニング角度30〜60度、とろみ調整、一口量を少なくする、交互嚥下、食後の口腔ケアと座位保持が安全な経口摂取の基本セットです。半固形化栄養剤は短時間で注入できるため、長時間の体位制限を避けられ、褥瘡予防にも寄与します。進行に伴い非侵襲的人工呼吸〈NPPV〉や気管切開下陽圧換気〈TPPV〉、コミュニケーション機器の導入など、意思決定支援を段階的に行う視点も大切です。

まとめ

在宅HPNでは、CVポートに代表される体内留置型デバイスが入浴可能でQOLが高く、高カロリー輸液は保険薬局で無菌調剤されます。胃瘻管理では、注入後の白湯フラッシュ、上体挙上、瘻孔周囲のスキンケア、バンパー埋没症候群などの合併症観察が家族指導の柱となります。ALSのように球麻痺を伴う在宅療養者では、胃瘻併用下でも頸部前屈位での経口摂取を安全に続ける支援が看護師の重要な役割となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    在宅中心静脈栄養法は略してと呼ばれ、自宅で中心静脈から高カロリー輸液を投与する方法である。

  2. 2.

    HPNで用いる高カロリー輸液は、医師の処方箋に基づいての薬剤師が無菌調剤することができる。

  3. 3.

    皮下埋込み式ポート(CVポート)は完全体内留置型であり、使用時には専用のを皮膚越しに穿刺して薬液を注入する。

  4. 4.

    CVポートは抜針後に体外に露出する構造物がないため、創部保護シートなしでやシャワー浴が可能である。

  5. 5.

    胃瘻からの注入後はチューブ閉塞を予防するため、約20〜30mLのでフラッシュを行う。

  6. 6.

    胃瘻栄養の注入時は逆流と誤嚥を防ぐため、上体を度挙上した体位とする。

  7. 7.

    胃瘻からは市販の経腸栄養剤だけでなく、家族と同じ食事をペースト状にしたも注入可能である。

  8. 8.

    胃瘻の体外固定が強すぎる場合に、胃内固定具が胃壁に埋没してしまう合併症をという。

  9. 9.

    ALSで延髄の運動神経核が障害され、舌・咽頭・喉頭の運動障害により嚥下障害・構音障害をきたす状態をという。

  10. 10.

    球麻痺を伴うALS患者の経口摂取では、誤嚥予防のためを基本姿勢とする。

在宅HPN・胃瘻管理」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。