在宅糖尿病管理
地域・在宅看護論 / 在宅慢性疾患ケア
解説
在宅糖尿病管理とは、糖尿病をもつ療養者が自宅でインスリン自己注射・血糖測定・食事運動療法・フットケアなどを継続できるよう、本人と家族を支える医療と生活支援の総体をいいます。今回は在宅における糖尿病管理について解説します。
インスリン自己注射の基本
在宅で用いられるインスリン製剤は作用発現と持続時間によって分類されます。超速効型は注射後10〜20分で効き始めるため食直前に、速効型は30分ほどかかるため食事の約30分前に注射します。中間型・持効型は基礎分泌を補う目的で使用されます。臨床でよく用いられる混合型インスリンは、速効型または超速効型と中間型を一定比率で混合した製剤で、1日2回朝・夕食前に打つレジメンが代表的です。注射タイミングは製剤ごとに異なるため、必ず添付文書に従います。
注射部位は腹壁・大腿・上腕・殿部で、毎回2〜3cmずつずらしてリポハイパートロフィー(皮下硬結)を防ぎます。未開封のインスリンは2〜8℃で冷蔵保管し、使用中のものは室温で遮光保存します。
低血糖への備えと外出時の注意
インスリン使用者で最も注意すべき急性合併症は低血糖です。発汗・動悸・手指振戦などの自律神経症状に続き、意識障害へと進展します。意識があればブドウ糖10gまたは砂糖20g、ブドウ糖を含むジュースを摂取し、意識がなければグルカゴン注射や受診が必要です。外食時は配膳の遅れによって注射と食事の間隔が空きすぎ低血糖を生じやすいため、料理の提供時間を店員に確認し、注射できる清潔で落ち着いた場所を確保することが大切です。ブドウ糖やあめを常時携帯し、糖尿病連携手帳やIDカードを持つことも指導します。
フットケアの原則
糖尿病では末梢神経障害により痛覚が鈍くなり、末梢血管障害で創傷治癒が遅れるため、軽微な靴ずれが糖尿病性壊疽へと進行します。予防の基本は毎日の観察・清潔・保護・適切な靴の使用・早期受診です。足はよく泡立てた石けんで指の間まで丁寧に洗い、こすらず水気を拭き取ります。足浴の湯温は37〜40℃とし、知覚低下による熱傷を避けるため湯たんぽや電気毛布の直接使用、はだし歩行、深爪、たこの自己処理は避けます。創部があれば浸出液の色・においの変化を観察し、悪臭は嫌気性菌感染を示唆するため早期に受診します。
視力障害がある高齢者と家族支援
糖尿病性網膜症による視力障害がある療養者では、単位数の読み取りや針交換が困難となるため、家族とのダブルチェック、音声付きインスリンペンやプレフィルド製剤の活用が有効です。主介護者が一時的に不在となる場合は、医療処置の安全確保を最優先に訪問看護の回数を増やすことで、注射確認・血糖測定・フットケアを継続します。サービス担当者会議ではケアマネジャーを中心に本人の意向と医療ニーズを両立する支援計画を調整します。
まとめ
在宅糖尿病管理では、インスリンの種類に応じた注射タイミング、低血糖の予防と対処、フットケアによる足病変予防が三本柱となります。視力障害など複合的な障害をもつ高齢者では、家族を含めた観察体制と訪問看護の柔軟な活用が安全な在宅療養の鍵となります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
超速効型インスリンはに、速効型インスリンは食事の約分前に注射する。
- 2.
混合型インスリンは、速効型または超速効型とインスリンを一定比率で混合した製剤である。
- 3.
低血糖時に意識があれば、10g相当を経口摂取して対処する。
- 4.
糖尿病患者では障害により痛覚が鈍くなり、足の外傷に気づきにくい。
- 5.
糖尿病患者の足浴の湯温は℃が適切である。
- 6.
足の創部から出る浸出液の(臭い)の変化は、感染徴候として重要な観察点である。
- 7.
インスリン注射部位を毎回ずらすのは、皮下硬結であるを防ぐためである。
- 8.
主介護者が一時的に不在となる在宅糖尿病療養者で、インスリン手技の安全確保が必要な場合、優先度が高いのはの回数を増やすことである。
- 9.
糖尿病の三大合併症のうち、視力障害をきたすのは糖尿病性である。
